6―26

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『現在時刻』


 現在の時刻を確認してみると、【00:12】だった。


 ニンフ1が報告をするために待っているだろう。


『密談部屋6』


 僕は、ニンフ1の報告を聞くために『密談部屋』の扉を召喚した。場所は、『トイレ』の扉の右隣だ。しばらく、ここに固定で出しておくことにしよう。


『密談部屋7』


 ついでに、更に右隣にもニンフ2の『密談部屋』の扉を召喚しておく。

 こうしておくことで、急用があるときに向こうから連絡して来られるようになるだろう。


 フェリアたちは待機させ、『密談部屋6』の扉を開いて中へ入る。

 部屋の中に赤いくノ一スタイルのニンフ1が待っていた。


「あっ、旦那さまっ」

「遅れてごめん」

「ふふっ、全然待ってないわよ」


 ニンフ1は、心なしか嬉しそうだ。


「頭巾は、この部屋の中では取ったほうがいいんじゃない?」


 目出し帽のような頭巾は、会話をするときには少し鬱陶うっとうしいだろう。


「分かりました」


 そう言って、ニンフ1の身体が光って頭巾無しのくノ一姿となる。


「それで、ヤマモト・ジロウさんはどうだった?」

「はい、料亭から出てきたヤマモト・ジロウの後をつけて、言動を全て記憶しました」

「じゃあ、どんなことをしたのか重要と思われる部分だけでいいから教えて」

「ええ」


 そう言って、ニンフ1は、僕たちと別れた後のヤマモト・ジロウの行動を語ってくれた――。


―――――――――――――――――――――――――――――


 番頭のカメキチと一緒に料亭『涼香すずか』を出たジロウは、ヤマモト家の別宅へ向かった。本家には、兄イチロウの妻子が住んでいるため、ジロウは元々住んでいた別宅に住んでいるのだ。


「オイ、カメ!」

「なんどすか? 旦那さん?」

「あの小僧、目障りだな! 消してしまえぬか?」

「止めといたほうがええどすわ。なんでも難度Aの依頼を達成したっちゅうて『組合』でも話題になっとるそうでして」

「何だ? あんな小僧一人消せないのか? ヤマモト家の力はそんなもんか?」

「リスクが大きすぎますねん。それに相手は、まだ子供ですがな。あの子を消しても何のメリットもおまへんやろ。しかも、赤字の娼館を10万ゴールドで買うっちゅーてくれるお得意様でんがな」

「ワシャ、売るつもりはないぞ」

「えーっ!? こない美味しい話を断るつもりでっか?」

「あの娼館は、ワシの道楽でやっとるんじゃ! 少々赤字でも手放すつもりはないぞっ!」

「せやかて、こないな美味しい話は二度とおまへんで? 10万ゴールドもろて新しい娼館を作ったほうが安上がりでんがな」

「あほぅ、『春夢亭しゅんむてい』があるのに新しい娼館作っても競合して共倒れになるだけだろうが」

「分かりまへんで、新しい娼館のほうが良いってお客はんも多いですし」

「それこそリスクが高いわ。また、娼婦を集める金もいるんだぞ?」

「それは確かにおますな。せやけど、娼館を経営するより、娼館で遊んだほうが安上がりではおまへんか?」

「ワシは、客として遊ぶよりもワシの持ち物である娼婦を抱きたいんだよ」

「そこまで言われるなら仕方おまへんけど、勿体もったいない話でんな」


 二人は、別宅に入っていく。

【インビジブル】をかけたニンフたちも後に続く。


「それにしても、あの小僧もだが、スズキ家のレイコも腹立たしいな」

「口説いていはりましたやん」

「あの高慢こうまんちきなつらを泣き顔に変えてやりたいわ」

「あー、あれどすやろ? スズキ家の救出部隊でお得意さんが全滅しはって」

「そう、あのレイコがドジを踏んだせいで、金払いのいい客が12人も死んだからな」


 どうやら、スズキ家が送った精鋭部隊は、『春夢亭』の太客ふときゃくだったようだ。


「でも、それは逆恨みでっしゃろ」

「何を言う、オークに犯された分際ぶんざいでワシに被害を与えたのだから、ワシに補填ほてんすべきだろうが!」

「スズキ家まで敵に回すのはまずいでっせ」

「成り上がりの家ごとき、何を恐れる必要がある?」


 ジロウは、寝室へ行き、女中に命じる。


「『春夢亭』から娼婦を呼べ!」

「畏まりました。いつものように4人でよろしいですか?」

「トモコも呼んで5人で来させろ」

「分かりました」


 寝室から女中が出て行く。


 30分ほどして、『春夢亭』の女将トモコと4人の娼婦がやってきた。


「おまたせしたね。お前様」


 トモコが挨拶あいさつをする。


「酒を持ってこい!」

「はい、ただちに」


 女中が酒を取りに行く。


「今日は、機嫌が悪いですねぇ?」

「…………」

「どんなことが、あったんです?」

「ユーイチとかいう小僧が『春夢亭』を買いたいと言い出してな」

「一体、いくらで?」

「10万ゴールド払うと言いおった」

「そんな大金で? たしか、1万でヤマシタ家から買ったんでしたよね? それも性病を流行らせて……。まったくお前様は恐ろしい男さね」


 ――ジロウは、性病をどうやって流行らせたのだろうか?


「それで売るつもりはないというわけだね?」

「ああ、いくら金を積まれても売る気はない」

「そういえば、先日、若い坊やがウチの店に来てさ、四十路を超えた娼婦を3人身請けしていったよ」

「本当か?」

「ええ、こっちの言い値で払っていったよ」

「そいつの特徴は?」

「魔術師みたいな服装をしていたね」

「たぶん、そいつがユーイチだ」

「フフフ……あの坊や、よほど娼婦が気に入ったのかねぇ……店ごと買うなんて言い出すとは」

「笑い事じゃないぞ。その娼婦からどんな情報がれるやもしれん」

「もしかして、性病にかかった娼婦を消したときのことかい? 今さら証拠なんて残ってないから心配ないよ」

「買う前に店に来たということは視察に来たのだろう」

「そうかもね。その上で買うと言い出したのだから、店を気に入ったのだろうさ」

「あの偽善者ぶった面が気にくわない」

「そうかい? 気前の良い可愛い坊やだったじゃないか」

「お前、あの小僧と寝たのか?」

「今度、指名するようには言ったけどね」

「貴様っ!」

「フフフ……大人気ないよ。お前様」

「今後、あの小僧は出入り禁止にしろ」

「どうしてだい? 金を落としていくなら別にいいだろう?」

「……それもそうだな」

「たんまりみつがせればいいじゃないか」

「なるほど、そういう考えもあるか……。レイコのせいで得意客が死んだからな。その補填をしてくれるならそれでいい」

「ああ、レイジたちだね。いい男だったんだけどねぇ……。あたしのこともよく買ってくれたよ」

とりこにしていたのか?」

「どうだろうねぇ……。中にはあたしの手練てれんに参っていた子も居たよ」

「ほぅ……。では、あの小僧もその手練で虜にしてやれ」

「フフフ……あたしにまかせときな」


 そう言って、ジロウはトモコと4人の娼婦たちとまぐわい始めた――。


―――――――――――――――――――――――――――――


「……レイコが聞いたら激怒しそうな内容だったね」

「そうね……。旦那さま、あたしあんな場面を見せられてすっかり出来上がっちゃったんだけど?」

「戦闘モードで抑えられないの?」

「それは、勿体ないわ」

「仕方ないな……」


 僕は、ニンフ1の母乳を吸ってあげた――。


 ◇ ◇ ◇


 テーブルの上に全裸で横たわるニンフ1に言付ける。


「僕の『密談部屋』の扉は、『ロッジ』に置いたままにしておくから、何か問題が起きたら報告に来て。そのことをニンフ2にも言っておいて」

「わかりましたわぁ~っ」


『ロッジ』へ戻る前に『密談部屋6』の扉を一瞬だけ戻して自動清掃機能を発動した。


『装備2換装』


 僕は『装備2』に換装して、ニンフ1の『密談部屋6』から『ロッジ』へ戻った。


「レイコ」

「ハッ!」


 レイコが立ち上がって、近づいてきた。


「ニンフ1の報告によれば、ジロウは元から『春夢亭』を売るつもりは無かったみたい」

「そうなのですか?」

「うん、赤字でも道楽で経営しているから良いらしい。それにレイコのことを逆恨みしてるみたいだった」

「何故です?」

「スズキ家の送った救出部隊のメンバーが『春夢亭』の得意客だったみたい」

「なるほど……」

「あと、性病にかかった娼婦を消したと明言してたよ」

「あのクズがっ!」


 レイコは、怒っている。レイコを侮辱していたことは言わない方がいいだろう。


「『春夢亭』の女将を呼んで話をしていたようだけど、僕を骨抜きにして『春夢亭』にみつがせようとしているみたい」

「あの男は、クズな上に馬鹿だな。どちらが骨抜きになると思っているのか」

「まぁ、それは利用させてもらおう。娼婦たちを引き抜きやすくなるということだからね」


 僕は、レイコを席に帰した。

 次は、娼婦希望者を使い魔にするべきだ。


『娼婦希望者のおっぱいを吸って、使い魔にする必要があるな……』


 立場を利用したパワハラとも取れるので、あまり娼婦希望者たちにセクハラ紛いのことはしたくないが、そうしないと使い魔にならないだろう。使い魔にせずに働かせるということもできるが、やはり信用が置けないし、レベルも低いので、戦闘が起きた場合に死んでしまうかもしれない。街中に居れば、そういったトラブルは無いと思いたいが、ジロウのような人間も居るのだ。彼女たちの安全のためにも必要なことだと自分に言い聞かせる。

 勿論、彼女たちが嫌がるなら、何もしないが、娼婦を希望するくらいなので、僕に胸を吸われることを嫌がるはずはないと思う。少なからず僕に恩義を感じているようだし。

 パワハラと言えば、さっきの全裸にした状態で対話をしたのだって十分にパワハラだろう。


「じゃあ、全員こっちに来て」


 僕は、『ハーレム』の扉の前に移動する。

 すぐ後ろにフェリアとルート・ドライアードがついてきた。

 扉を開けて、中へ移動する。

 廊下を進み、大浴場の引き戸を開くとフェリアとルート・ドライアードが扉の左右に立った。


「フェリアたちも裸になって、中へ入って」

「ハッ!」

「御意!」


 フェリアとルート・ドライアードが全裸になって、中へ入った。

 見ると、全員が廊下で全裸になっていた。入り口の扉は閉まっている。

 僕は、『ハーレム』の扉を一瞬戻して、再召喚する。それにより、自動清掃機能が発動した。


『装備8換装』


 浴場に入り、裸になった。

 そのまま、湯船に入り、少し奥へ移動してから腰を下ろした。

 振り返ると、フェリアとルート・ドライアードが左右に立っている。二人は、僕が振り向いたので、僕の後ろへ移動した。

 湯船にフェリス、ルート・ニンフ、レイコ、イリーナ、カオリ、サユリ、ミナ、アズサ、サクラコ、ユリ、ショウコ、スミレ、アザミ、マドカ、アヤメ、イズミ、ユウコ、スズカ、タカコ、ユキ、ヨウコ、サヤカ、ランコ、サツキが次々と入ってくる。


「そうだ、フェリア。フェアリーとピクシーも召喚してあげて」

「畏まりました」


 僕の目の前の空間が白く光って、光の中から2体の妖精が出現した。


「ここは?」

「えー! ここどこ?」


 僕と目が合う。


「よっ」

「ユーイチ様」

「あーっ! ユーイチッ!」


 二人は、裸になって、僕の顔に抱きついてきた。


「ぶっ……」


 二人をつかんで引きはがす。


「二人ともお風呂につかって」

「「はぁーい」」


 僕の肩に掴まって二人はお湯に入った。

 フェアリーが右肩、ピクシーが左肩だ。

 見ると、全員が立ったままだった。


「みんな、座って」


 ――ザバーッ!


「きゃっ」

「わわっ」


 フェアリーとピクシーが使い魔たちが湯船に腰を下ろす音と波に驚いた。


 ――ザバザバザバザバ……


主殿あるじどの……」


 ユウコが立ち上がって、近づいてきた。

 僕の前で腰を下ろす。


「なんです?」

「その者たちは、妖精じゃな?」

「そうですよ。『妖精の国』に行ったときに使い魔にしました」

「『妖精の国』じゃと?」

「ええ、『エドの街』に来る前に行ってきたのです。フェリスとは、そこで出会いました」

「もしかして、ゾンビを富士のふもとまで誘導したエルフの英雄とは……」

「そうです。フェリスがその英雄ですよ。とてもそうは見えませんが……」

「ああ~ん、ご主人サマったら、酷いですわ」


『どう見ても喜んでる……』


「主殿は、一体何者なのじゃ?」

「実は、僕はマレビトなのです」

「なんじゃと?」

「別の世界から、この世界に吸い込まれて移動してきたのです」

「吸い込まれてじゃと?」

「ええ、突然白い光の穴が広がって、そこに吸い込まれました。そして死にかけていたところをフェリアに助けられたのです。フェリアは、フェリスの娘でハーフエルフです」

「なんと!?」

「最初は、ゾンビやコボルトやゴブリンを狩ってたんですが、強くなってきたので、オークを狩って、そのまま富士の麓のトロールに挑戦して敗退しました。翌日、再戦して殲滅し『妖精の国』へ行ったのです」

「トロールを殲滅したじゃと……? それに、その緑の髪のおなごや青い髪のおなごも、もしかして妖精なのかぇ?」

「ええ、ドライアードとニンフです」

「主殿がゾンビ襲撃のときにおったら、ゾンビ共を殲滅せんめつできたやもしれんな」

「ええ、わたくしが保証します。ご主人様なら、ゾンビの大群を軽く殲滅できたでしょう」

わたくしも保証いたしますわ。ご主人サマならゾンビの大群なんて軽く殲滅できますわ。トロールの大群も軽く殲滅しておられますもの」

「待った、今現在の戦力で語るのはどうかと。トロールにだって一度は負けてるわけだし。だいたい、僕の力じゃなくて、全てフェリアのおかげなんだから」

わたくしは手助けしたまでです。ご主人様の素質があってこそ」


 ――ザバッ


 スズカが立ち上がって、こっちへ来た。


「難しいお話は、その辺にして、そろそろ楽しみましょう? ねっ、ユーイチ様」


 スズカは、僕の腕を取りそう言った。

 僕は、スズカに誘われるまま、立ち上がり湯船の端へ移動した。


 そして、僕は彼女たちの乳房を吸った――。


―――――――――――――――――――――――――――――

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