6―14

6―14


 僕たちは、『ロッジ』に戻った――。


 僕は、寝間着用の『装備7』に換装していたが、着物を『ロッジ』に置いたままの娼婦たちは裸だった。

 出る前に『ハーレム』の扉を一瞬帰還させたので、自動清掃機能が発動して身体に水滴等はついていない。


「フェリア、彼女たちを『倉庫』に案内して、そこで寝かせてあげて」

「畏まりました」


 フェリアが『倉庫』の扉を召喚する。


「お待ち下さい」


 ケイコが僕に話し掛けてきた。


「何ですか?」

「ご主人様は、わたくしたちを使わないおつもりなのですか?」

「うん」

「やはり、わたくしたちのような歳を取った女には、ご興味がないのですね……」

「そういうわけじゃないけど、僕は誰ともしないから……」

「どうしてでございますか?」

「そう決めているだけ。するなら、フェリアと最初にしたいし……」

「ふふっ、わたくしでしたら、いつでも構いませんわ」

「僕がフェリアたちのあるじとして自信がつくまで待って」

「はい……。わたくしはご主人様の使い魔です。お好きなようにしてください」


 フェリアが3人の娼婦をうながして、『倉庫』の中へ連れていった。

 それを確認してから、僕はいつもの席に座って、テーブルに突っ伏す。


『朝の6時まで睡眠』


 僕は眠りについた――。


―――――――――――――――――――――――――――――


『現在時刻』


 目を覚まして時刻を確認してみると、【06:00】丁度だった。

 振り返るとフェリアとルート・ドライアードが背後の壁際に直立不動の甲冑姿で立っている。


「二人ともおはよう」

「おはようございます。ご主人様」

「おはようございます。主殿あるじどの

「フェリア、『倉庫』の扉を出して」

「ハッ!」


 僕は、『倉庫』の扉を開けて中に入った。

 女性が寝ている部屋に無断で入るのはどうかとも思ったが、彼女たちは僕の使い魔になりたいと言っていたので、これくらいで反発するようではやっていけないだろう。

 『倉庫』の中に入ると、毛布にくるまった3人が横になっている。


 ドアを開けた気配でミスズを起こしてしまったようだ。

 ミスズは、目を開けて眠たそうな目で僕のほうを見た。


「あ……。ご主人様……」

「おはよう」

「おっ、おはようございます!」

「ご主人さまぁ……」

「ふはぁ……」


 ミスズに続いて、ケイコとミチコも目覚めたようだ。

 3人が体を起こした。3人とも裸だった。3人の着物は『ロッジ』にあるので、フェリアが何か着る物を渡していない限りは当然だろう。


「そろそろ、起きる時間ですよ」

「「はいっ」」


 僕は、3人を『ロッジ』へいざなった。

『ロッジ』から『ハーレム』に移動する。彼女たちも朝風呂を浴びたいのではないだろうかと思ったのだ。

 大浴場の引き戸を開けて中に入る。


『装備8換装』


「あのぉ……。ご主人様、かわやは、どこかにありますか?」


 裸になって洗い場から湯船に移動しているときにミスズがもじもじしながら僕に聞いてきた。


「大きい方?」

「い、いえ……」

「じゃあ、その辺でしてください」

「ええっ!? そんなぁ……」

「自動清掃機能があるから、問題ないですよ」

「じゃあ、わたくしたちも一緒に行きましょう」

「ご主人様が見たいのでしたら、ここでしますけど?」


 ミチコが意外と大胆な発言をしてきた。


「もう、からかわないでよ」

「フフフ……。可愛いですわ」


 そう言って、3人は端の方へ行きしゃがんだ。


 ――ジョーッ、ジョロジョロジョロ……


 3人は、割と近くでし始めたので、大きな音が聞こえてくる。

 しばらくすると、音が止まり、3人は戻って来た。


「いいですか?」

「はい……」

「ええ……」

「……コクン」


 僕は、『ハーレム』の扉を帰還させた。

 娼婦たちの身体や床に付いていた水滴や体液が全て消え去る。


「あっ……」

「凄い……」

「…………」


 彼女たちは、驚いている。


「じゃあ、朝風呂を浴びてから戻ろう」

「「はい」」


 僕は、湯船に入り腰を下ろした。

 3人は、僕を囲むように座る。


「夢のようですわ……」

「ホント、こんな毎日が続けばいいのに……」

「うん……」


『拠点となる娼館に『ハーレム』と同じ設備を据え付けておいてもいいな……』


 彼女たちの言葉を聞きながらそんなことを考える。

 そうすれば、毎日好きなときにこうやって風呂に入ることができるだろう。


 10分くらいお湯に浸かってから僕は立ち上がった。

 3人の娼婦たちも続けて立ち上がる。

 湯船を出て、僕と3人の娼婦たちを乾かすため、洗い場で『ハーレム』の扉を召喚してから帰還させる。


『装備2換装』


 そして、魔術師装備に換装した。

 引き戸を開けて廊下に出ると、フェリアとルート・ドライアードが引き戸の両側に立っていた。

 昨夜も僕の近くで一晩中立っていた。ご苦労なことだ……。

 僕は、彼女たちの本来の姿を娼婦たちに見せなかった。人間離れした美貌を持った2人を見せると娼婦たちが委縮いしゅくしてしまった可能性がある。


『ハーレム』の扉を召喚して『ロッジ』へ戻った。

 僕は、いつものテーブルの席に戻り、3人の席に『女神の秘薬』を置いた。


「それを飲んで下さい」

「これはっ!?」

「よろしいのですか?」

「ああっ……」

「僕の使い魔になりたいのなら飲んで」

「「はいっ!」」


 彼女たちは、ゆっくりと容器を開けて、一滴たりとも零さないようにと慎重に飲み干した。


「それを飲んでから、半日後くらいに刻印を施すからね」


 夕方の6時過ぎくらいがいいだろう。


「じゃあ、服を着て下さい」

「「はい」」


 僕は、今のうちに食事をテーブルに出しておくことにした。


『野菜サラダ』『野菜サラダ』『野菜サラダ』『野菜サラダ』

『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』


 早朝だし、これくらいでいいだろう。


 服を着た娼婦たちが、テーブルに着いた。


「良かったら、朝食をどうぞ」

「「ありがとうございます」」


『野菜サラダ』と『コーンクリームスープ』を食べ終えたあと、娼婦たちに質問をする。


「この後、身請けをしたら、お姉さんたちは荷物をまとめるのかな?」

「はい、大した荷物はございませんが」


 ケイコが答えた。


「時間はかからない?」

「はい、10分もいただければ大丈夫かと」

「分かった」


 僕は、食べ終わった食器を片付けて、硬貨袋をベルトに括り付けた。


「『女神の秘薬』の空き瓶もテーブルの上に置いておいて、勝手に消えるから」

「「分かりました」」


 自動清掃機能により空き瓶はゴミと判定されて消え去るだろう。


「じゃあ、部屋を出よう」

「「はいっ」」


『ロッジ』の扉を召喚して外に出る。フェリアたちには、『ロッジ』の中に残っていてもらうことにした。


 ◇ ◇ ◇


 僕たちは、『春夢亭しゅんむてい』の二階の小部屋から廊下へ出て階段を下りた。


「おや、昨夜ゆうべはお楽しみだったかい?」

「ええ、気に入ったので身請けしようと思うのですが、3人でおいくらになりますか?」

「3人共買ってくれるのかい?」

「はい」

「じゃあ、一人100ゴールドでどうだい?」

「分かりました」


『トレード』


 500ゴールドを渡した。


「いいのかい?」

「どうぞ」

「坊やは、若いのに気前がいいねぇ……。次は、あたしを買ってみないかい?」

「女将さんも身体を売っているのですか?」

「特別な相手にはね」


 どうやら、女将のトモコは、この店の高級娼婦という位置づけのようだ。

 刻印を刻んだ女を望む客向けなのだろうか?


「では、機会があれば、よろしくお願いします」

「待ってるよ」


 ケイコが僕にことづけをする。


「ご主人様、わたくしたちは荷物を取って参りますので、少々お待ちになってくださいませ」

「じゃあ、表で待ってるよ」

「畏まりました」


 それを見た女将が口を挟む。


「もう、そんなにしつけてるのかい」

「また、彼女たちのような40代の女性が余れば身請けさせていただきますよ」

「坊やも好きだねぇ……」

「では、また」

「今度は、あたしを買っておくれよ」


 それには返事をせずに片手を挙げて外へ出た。

 外には、人の気配が無かった。

 一応、【レーダー】で周囲を確認してから『ロッジ』の扉を召喚して、フェリアとルート・ドライアードを外に出す。

『ロッジ』の扉を戻して、暫く3人で待っていると、『春夢亭』の中からケイコとミチコとミスズが出て来た。3人とも、大きな荷物を抱えている。


「お待たせしました。ご主人様」

「お待たせっ! ご主人様」

「ご主人さま……」


 僕は、『ロッジ』の扉を召喚して、3人を中へ入れた。


 そして、『ロッジ』の扉を『アイテムストレージ』に戻してから、『女鹿亭めじかてい』へ向かった――。


 ◇ ◇ ◇


『春夢亭』から歩いて10分と経たずに『女鹿亭』に着いた。


「フェリア、レイコを呼んできてくれ」

「ハッ!」


 フェリアが『女鹿亭』の中へ入っていく。

 女性冒険者専用の宿なので、男の僕は近づかない方が賢明だろう。


 すぐにフェリアが帰って来た。


「今、呼びに行ってもらいました」

「ありがとう」


 5分ほど待ったところで、レイコが出て来た。


主様ぬしさま、お待たせした」

「いや、大して待ってないから。それよりも、今日はこれからどうする?」

「夕方まで時間が空いてしまいますな」

「じゃあ、夕方まで不動産探しでもしようか?」

「不動産と言われると土地などを購入するということですか?」

「この街の土地は、購入するものなの? 『組合』から借りるのかと思っていたよ」

「『組合』は、土地を売って、その土地から税金を徴収するのです」

「なるほどねぇ……。とりあえず、拠点となる土地を探すのも悪くはないだろう」


『春夢亭』は、あまり拠点として向いてなさそうだった。

 魔法建築物を追加していけば、問題ないかもしれないが。


「『組合』は、10時からなので、まだ少し早いですな」

「では、10時にここに集合ということでいい?」

「畏まりました」


 レイコは、『女鹿亭』の中へ帰って行った。

 僕たちは、人気のない路地へ行き、適当な壁に『ロッジ』の扉を召喚して中へ入る。

 僕とフェリアとルート・ドライアードが中に入ったところで、『ロッジ』の扉を帰還させた。


「ご主人様?」


 ミスズが不思議そうに問いかけて来た。

 夕方まで来ないと思っていたのだろう。


「ああ、時間が空いたから、暫くここで待機するよ」


 僕は、いつもの席に反対向きに座った。


「フェリア」

「ハッ!」


 フェリアを呼んだ。

 彼女は、座っている僕の正面に立った。


 フェリアの装備を少し見直す。


【工房】→『装備作成』


 アダマンタイト鋼を使ったロングソードと鎖帷子を作成した。


 ・アダマンタイトのロングソード+50

 ・アダマンタイトの鎖帷子+50


 馬上からでも攻撃が届くロングソードのほうがいいだろう。


 続いて……


【工房】→『分解』


『アダマンタイトのヒーターシールド+20』を分解する。


【工房】→『装備作成』


 素材を追加した盾を作成した。


 ・アダマンタイトのヒーターシールド+50


『フェリアの装備2』


―――――――――――――――――――――――――――――


 右手武器:アダマンタイトのロングソード+50

 左手盾:アダマンタイトのヒーターシールド+50

 全身鎧:アダマンタイトのプレートメイル+50

 鎧下:アダマンタイトの鎖帷子+50

 背中:竜革のマント+5

 下着:魔布のボディスーツ+5

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『フェリアの装備8』


―――――――――――――――――――――――――――――


 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『フェリア装備2換装』


「フェリア、下がって。ルート・ドライアード、来て」

「ハッ!」

「御意!」


 次は、ルート・ドライアードの装備を見直す。


【工房】→『装備作成』


 ハルバードとプレートメイルと鎖帷子を作成した。


 ・アダマンタイトのハルバード+50

 ・アダマンタイトのプレートメイル+50

 ・アダマンタイトの鎖帷子+50


 ハルバードは、イリーナと同じものの上位互換で、プレートメイルと鎖帷子はフェリアに作ったものと全く同じものだ。

 パイクではなく、ハルバードにしたのは、イリーナの戦いを観て、こちらのほうが汎用性が高そうだと思ったのだ。以前と違い、レベルも上がっているので、パイクのような長槍じゃなくてもトロールを倒すことができるだろう。パイクは、長すぎて汎用性に欠けてしまう。


『ルート・ドライアードの装備1』


―――――――――――――――――――――――――――――


 両手武器:ミスリルのパイク+5

 全身鎧:アダマンタイトのプレートメイル+50

 鎧下:アダマンタイトの鎖帷子+50

 背中:竜革のマント+1

 下着:魔布のボディスーツ+1

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『ルート・ドライアードの装備2』


―――――――――――――――――――――――――――――


 両手武器:アダマンタイトのハルバード+50

 全身鎧:アダマンタイトのプレートメイル+50

 鎧下:アダマンタイトの鎖帷子+50

 背中:竜革のマント+1

 下着:魔布のボディスーツ+1

 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『ルート・ドライアードの装備8』


―――――――――――――――――――――――――――――


 指輪:回復の指輪


―――――――――――――――――――――――――――――


『ルート・ドライアードの装備2換装』


 フェリアは、あまり見た目が変わらなかったが、ルート・ドライアードは、かなり変化した。ミスリル装備からアダマンタイト装備へ変わったからだ。


「ルート・ドライアード、戻っていいよ」


 僕は、装備を変更し終えたルート・ドライアードを帰した――。


―――――――――――――――――――――――――――――

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る