5―13
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【ナイトサイト】を切ると、外は、もう真っ暗だった。
フェリアたちの頭上の【ライト】は、まだ持っている。あれから、2時間は経過していないようだ。設置した【ストーンウォール】は消えているので、1時間は経っているようだが。
『ロッジ』
『オークの神殿』の入り口から50メートルほどのところにある森の小道の近くまで進んでから、僕は『ロッジ』の扉を『アイテムストレージ』から召喚した。
フェリアの『倉庫』だけでは手狭かと思ったのだ。
「うわっ」
突然、暗闇の中に大きな扉が出現してミナが驚きの声を上げた。
「じゃあ、入って」
僕は、『ロッジ』の扉を開けて、三人を中へ
全員が『ロッジ』の中に入ったのを確認してから扉を閉め、扉を帰還させた僕は、フェリアに指示を出した。
「フェリア、入り口の反対側に『倉庫』の扉を出してくれ」
「畏まりました」
入り口の反対側の壁近くにフェリアの『倉庫』の扉が出現する。
僕は扉を開けて、『倉庫』の中に入った。
『倉庫』の左半分には、毛布が掛けられた村人達が寝ている。体の下にも毛布が敷かれているようだ。
フェリスとルート・ニンフが村人たちを監視するように見ている。
『倉庫』の右半分には、5人の冒険者たちが、全裸のまま床に座っている。『倉庫』の『保存箱』の効果で彼女たちの体は綺麗になっていた。
レイコは正座、イリーナは
「ご主人サマ」
フェリスが僕に声を掛けてきた。
「村人の様子はどう?」
「皆さん、眠っていますわ」
「『女神の秘薬』の効果時間がどれくらいか知ってる?」
「飲むと半日以内に回復すると言われていますわ」
「最大12時間というところかな……?」
「ええ、そうですわ」
「村人たちが目覚めて話ができそうなら、『ロッジ』に居るから呼んでくれ」
「はいですわ」
僕は、腰に付けていた『革製の硬貨袋』を外してフェリアに渡す。
「フェリア、これを『倉庫』で保管しておいて」
「畏まりました」
そして、冒険者たちのほうに向き直り、『ロッジ』に来ないか誘ってみる。ここで話をしてもいいのだが、眠っている村人たちを起こしてしまうかもしれない。
「レイコさん、こちらに来ませんか? 今後のことも相談したいので。あと、毛布か何か羽織っては? 良ければ、僕が出しますけど?」
「では、そちらにお邪魔させてもらおう。毛布は、結構だ。寒くもないし、オークに凌辱された我々には、この格好が相応しい」
その言葉にアズサとカオリは、微妙な顔をしていたが、他の二人は頷いている。
『どういう理屈なの……?』
「では、こちらへどうぞ」
僕は、『倉庫』から出た。
反対側の壁まで行って、後ろを向く。
扉の中から、ミナを先頭に6人の冒険者たちが出てくる。
僕は、右手で右側のテーブルに座るように促した。
ミナ、レイコ、イリーナが僕の前を横切り、右のテーブルに奥から腰を掛けた。
続いて、サユリ、アズサ、カオリの三人がテーブルの反対側に腰を掛ける。
入り口に立つ僕の位置からみると、手前側の席に左からイリーナ、レイコ、ミナが座り、反対側に左からカオリ、アズサ、サユリが座っている。
すると、レイコがミナを見ながら、こんなことを言い出した。
「一人だけ統制が取れていないメンバーが居るな」
「えっ?」
ミナが驚く。
「ふむ、確かにミナも裸になるべきでござろう」
「えっ、ちょっと待ってよ……あたしは装備持ってるし……」
「パーティメンバーというもの
「そ、そんなぁ……」
「さぁ、ミナも裸になりなさい」
イリーナとサユリがミナに裸になるよう強要している。
『からかって遊んでいるんだよね?』
「さぁ、ミナも脱げ」
「じょ、冗談ですよね?」
「いや、本気だ」
「……わ、分かったわよ。脱げばいいんでしょ、脱げばっ!」
次の瞬間、ミナが裸になった。すぐに小ぶりなおっぱいを両手で隠す。
僕は呆然と見ていたが、気を取り直して食事を勧めた。
「お腹が空いていませんか? よかったら、何か出しますけど?」
「それは有り難い、是非ともお願いする」
他のメンバーも期待に目を輝かせた。やはり、【冒険者の刻印】は【エルフの刻印】に比べて空腹を感じるようだ。
『イリーナ辺りを見ていると食欲だけではなく、性欲も強そうだけど……』
その辺りは、人間だった頃の
『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』『コーンクリームスープ』
それぞれの席に『コーンクリームスープ』を出した。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
「「いただきまーす!」」
彼女たちはスープを飲み始めた。冒険者とはいえ、元は良家の令嬢なのでスープを上品に飲んでいる。
『コーンクリームスープ』
そして、左側の自分の席にも『コーンクリームスープ』を出す。
僕もできるだけ上品に飲み干した。
見ると冒険者たちも既に食べ終わっていたので、食器を戻す。
この魔法の食器についてだが、戻したときに食べ残しや食器に付いた汚れはどうなるのかと言えば、綺麗に消え去る。普通に考えると、戻したときに付着物がテーブルの上に残りそうなものなのだが、周囲に保存箱のような効果が働き汚れを消し去ってから消えるようだ。これは、マジックアイテム全般がそうみたいだった。例えば、先ほどミナが装備を外して裸になったが、そのときに装備に付着していた泥などの汚れは、一緒に消えてしまう。もし、消えなければ、その泥が体を汚してしまうだろう。
使い魔を召喚魔法で帰還させるときも同じような現象が起きる。濡れた身体で帰還させると、身体に付いた水滴などは、その場に残らず光に包まれて一緒に消えてしまうのだ。
『牛ヒレ肉のステーキ』『牛ヒレ肉のステーキ』『牛ヒレ肉のステーキ』『牛ヒレ肉のステーキ』『牛ヒレ肉のステーキ』『牛ヒレ肉のステーキ』
『コーンクリームスープ』だけでは足りないだろうから、『牛ヒレ肉のステーキ』をそれぞれの席に出す。
「おお……」
「これは、美味しそうでござる」
「わぁ……」
「ゴクリ……」
「美味しそうですわね」
「ホント、美味しそう」
スープを飲んで更に食欲が刺激されたのか、ステーキを見てそれぞれ期待の声を上げる。
「どうぞ、お召し上がり下さい」
彼女たちは、夢中で食べ始めた。
一週間以上、食事を抜いた後、スープの後にステーキというのは凄い威力のようだ。
まぁ、オークの精液は飲んでいた可能性があるが……特にイリーナは、飲んでいた方に賭けてもいい。
『牛ヒレ肉のステーキ』
自分の分のステーキも出して、僕も『牛ヒレ肉のステーキ』を食べる。
『やっぱ、これ美味しいな……』
僕は、元の世界で100グラム当たり何万円もするような高級ステーキを食べたことがないので比較はできないが、今まで食べた肉料理の中でダントツにこの『牛ヒレ肉のステーキ』が美味しいと断言できる。
『こういう肉は、どうやって【商取引】の素材として流通させているのだろうか……?』
『エドの街』の近くには、『ムサシノ牧場』という大きな牧場があるらしいが、そこで生産された肉があったとしても、『アイテムストレージ』に入れられないため、【商取引】で販売することができないのだ。
そもそも、【工房】で作る装備と違い【料理】では、予め食材を用意しておく必要がない。僕が勝手にイメージした食材が使われて具現化しているのだ。そして、その材料費から料理の価格が決まっているようだ。
僕が食べ終えて、隣のテーブルを見ると、全員が既に完食していた。僕も早食いなほうだと自認しているが、僕より年下に見えるアズサまでもが、僕よりも早く完食しているとは思わなかった。冒険者としての
僕は、全員の食器を戻した。そしてデザートを配る。
『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』『いちごのショートケーキ』
『エスプレッソコーヒー』『エスプレッソコーヒー』『エスプレッソコーヒー』『エスプレッソコーヒー』『エスプレッソコーヒー』『エスプレッソコーヒー』『エスプレッソコーヒー』
『いちごのショートケーキ』と『エスプレッソコーヒー』を6人の前へ、そしてテーブルの端に僕の分の『エスプレッソコーヒー』を配った。
「じゃあ、デザートをどうぞ」
「これは……何という菓子だ?」
「ふむ、ケーキでござるな。『東の大陸』で見るとは思わなかったでござる」
やはり金髪のイリーナは、『中央大陸』の出身なのだろうか。ケーキのことも知っているようだ。レイコの反応を見る限り『エドの街』では、あまり洋菓子は普及していないのかもしれない。
「んーっ! これ美味しいっ!」
ミナが一口食べて絶賛している。
「美味しっ!」
「美味しいですわ」
「……美味しい……」
「いけるでござるな」
「うむ、美味い」
大好評だった。やはり女性は、こういった甘味が好きなのだろう。
僕は、一口コーヒーを
彼女たちが、ケーキを食べ終わるのを待ってから、僕はイリーナにコーヒーについて知っているか質問してみた。
「イリーナさん、この飲み物のことを知っていますか?」
「いや、
「そうですか、『中央大陸』でも見かけない飲み物なんですね……」
「少なくとも『中央大陸』の東側では見かけない飲み物でござる。
「なるほど……」
――もし、『中央大陸』がユーラシア大陸だとしたら、アフリカに近いヨーロッパのあたりに行けば存在するのかもしれない。
「うぁっ、ニガッ!」
ミナがコーヒーを飲んでそう言った。あまりお気に召さないようだ。
「ふむ、私は好きだな……苦みが良い」
レイコは気に入ったようだ。
他にもイリーナとカオリ、サユリは気に入ったようだ。
アズサは、顔を
「じゃあ、明日の予定を決めたいのですが、まず『シモツケ村』に寄って、保護した村人を返す……」
レイコのパーティメンバーは、皆、この案が気に入らないのか、険しい表情をしている。
「何か問題でも?」
「……いや、そうするしかないだろう……」
オークに
人間に強姦された場合よりも忌み嫌われる可能性が高いだろう。オークという怪物に犯されたというレッテルを貼られて生きていかないといけないのだ。
『本人達が正気に戻れば、どうしたいか聞いてみよう……』
そもそも、正気に戻るかどうかも怪しいのだ。しかし、彼女たちにも村に親戚などが居るのではないだろうか? 身寄りがない場合には、『エドの街』に連れていけばいいだろう。多少、生活の面倒をみてもいい。見捨てるのは、寝覚めが悪いからだ。
僕は、話を続けた。
「それから、『エドの街』に戻るということでいいでしょうか?」
「うむ、いいだろう」
「何処まで送ればいいですか?」
「とりあえずは、北門まででいい」
「裸で外に出るつもりなんですか?」
「んんっ……はぁああっ……」
レイコは、男前の喋り方をするが、かなりむっつりスケベに感じる。
「良かったら、僕が装備を作りましょうか?」
「ユーイチ殿は、【工房】のスキルを持っておられるのか?」
「ええ」
「では、金を払うので、我々の装備を作って
「分かりました」
こうして僕は、彼女たちの装備を作ることになった――。
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