5―12
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僕が戻ると丁字路の少し先に三人の裸の冒険者が立っていた――。
近くの壁に【ライト】が設置してある。三人の中に回復系魔術が使える術者が居るようだ。
「あなたが、ユーイチ殿だな?」
「ええ、そうです」
最初の牢屋に入っていた女性だ。確かレイコと呼ばれていた。
レイコは、全裸の身体を隠そうともせず、裸体を僕に見せつけるように堂々としている。僕は、あまり身体を見ないように目を逸らした。
彼女は、僕よりも少し背が高い。
先ほどは、髪を下ろしていたようだが、今は頭の後ろで縛ったポニーテールとなっている。髪留めのような装備もあるのだろうか?
「私がミナ達のパーティリーダー、スズキ・レイコだ」
「初めまして、ユーイチです」
僕は、疑問に思ったことを質問する。
「あの、どうして裸のままなのですか?」
「くっ……オークに装備を奪われてしまったのだ……」
「え? どうやってですか?」
他人の『アイテムストレージ』からアイテムを奪うことなんてできるのだろうか?
「脅されて、トレードさせられたのだ」
なるほど、命と引き換えに要求することはできるだろう。
しかし、『アイテムストレージ』に何が入っているかなど、いくらでも誤魔化すことができるはずだ……。
「それだと、誤魔化すことができるのでは?」
「うむ、しかし、装備していたものは見られてしまっているから誤魔化せん」
「他には、服を持っていなかったのですか?」
「必要ないので、持っていなかったのだ」
「なるほど……」
装備品は、マジックアイテムなので高価だ。そのため、普段着のようなものまで装備品として作成している冒険者は少ないのだろう。装備を解除して普通の服を着ることもあるのだろうけど、依頼を受けて旅に出ている間に普通の服を持ち歩くと荷物になる。装備は汚れないし、壊れたりもしない。数日の間なら、着心地が悪くても装備だけで過ごせばいいということだろう。
レイコは、姿勢を正して深く頭を下げた。
「この度はありがとうございました」
「いえいえ、ミナさんの依頼を受けただけですから……」
「しかし、あなた方が居なければ我々は助かりませんでした。報酬は上乗せさせて頂こう」
「ああ、それはいいですよ。あなた方も装備を失って大損害でしょうから」
レイコは顔を歪めた。図星のようだ。
「
あの金髪で大柄な女性が割り込んできた。
レイコは少し横に移動してその女性に譲った。
「拙者、フォミナ家の血縁でイリーナと申す。以後、お見知りおき下され」
「ユーイチといいます」
僕は軽く頭を下げた。
イリーナは、僕よりも10センチメートルくらい背が高い。そのため、目の前に大きなバストがあるので、目のやり場に困った。
「それにしても、こんな可愛い坊やが助けに来てくれるとは思わなかったでござるよ」
「イリーナ、失礼だぞ」
「これは、申し訳ない。悪気があったわけではござらん。ユーイチ殿は、見た目通りの歳ではないのでござろう?」
「まぁ……そうです……」
詮索されないよう誤魔化しておいた。設定通りなら、100歳を超えていることになるのだが、流石にそこまで大胆な嘘は吐きたくない。
イリーナが改めて頭を下げた。
「ユーイチ殿、
「いえ、仕事ですから、お気になさらず」
「そのようなわけには参りませぬ。オークに
「あ、ありがとう……気持ちだけ戴いておきます」
「やはり……オークに穢された女を抱くのは嫌でござるか?」
『ルート・ドライアードよりも侍チックな言い回しをする人だな……』
「いえ、そういうわけではありませんよ。何というか間に合ってますので……」
「なるほど、ユーイチ殿は、既に4人の女性を
「ええ、ですから他の人に手を出す余裕がないのです」
侍らせているわけでも手を出しているわけでもないが、ここは誤解したままで居てもらったほうがいいだろう。
「でもまぁ、一度くらいは手合わせ願いたい。拙者に魅力を感じるのなら前向きに検討してくだされ」
「はぁ……」
話を聞いていたレイコがイリーナの暴走を止めに入る。
「おい、イリーナ! 何を馬鹿なことを言っているのだ。ユーイチ殿が困っておられるだろう」
「そういう、お主はユーイチ殿に抱かれたくはないのか?」
「そ、それはっ……」
レイコが頬を染めた。
「すまなかったユーイチ殿、強い男に抱かれたいと思うのは、冒険者なら当然のことだが、イリーナはストレート過ぎるから気を悪くされたのではないか?」
「いえ、男としては嬉しいですよ、ただ、会ったばかりの女の人に言われるのは驚きましたけどね」
「そうか、嬉しいのか……」
僕は、フェリアに指示を出す。
「フェリア、この人たちを『倉庫』へ案内して」
「ハッ!」
すると、レイコが話しかけて来た。
「ユーイチ殿」
隣には、3番目に助けた小柄な少女が居る。少女は、胸と股間を手で隠していた。
「さぁ、アズサ……」
「……シミズ・アズサです……ありがとうございました……」
彼女は、頭を下げてボソボソと礼を言った。
『人と話すのが苦手なのか……いや、男と話すのが苦手なのかもしれないな……』
アズサは、人見知りをするタイプのようだ。
「ユーイチです。仕事ですから気にしないで……。さぁ、向こうの扉に入ってください」
三人が扉の向こうへ入っていった。扉が閉まった後、扉が消える。
フェリアが『倉庫』の扉を戻したようだ。
「ユーイチ、こっちよ」
ミナに先導されて、次のパーティメンバーが囚われている牢屋へ向かう。
丁字路から数えて左に4番目の牢屋だ。
牢屋の前で鉄格子の中を見ると、黒髪でセミロングの上品な印象の女性が全裸で囚われていた。身体はオークの体液まみれだ。
この騒ぎを聞きつけて、既に目覚めているようで、床の上で女性らしい横座りをして右手で胸を隠している。左手は、体を支えるためか床についていた。
「下がってて」
「ええ」
ミナを下がらせて、抜刀する。一閃しただけで鉄格子は白い光に包まれて消失した。
「凄い……ユーイチって剣の腕も凄いのね」
「武器がいいだけだよ」
一応、回復しておこう。
【グレーターヒール】
上品な印象の女性の裸体が一瞬、回復系魔術の光るエフェクトに包まれた。
「カオリさん!」
「ああ……ミナ……助けに来てくださったのね……」
カオリと呼ばれた女性は、ミナの手を借りて立ち上がった。
レイコやイリーナほどではないが、女性にしては背が高い。僕やフェリアと同じくらいにみえる。
チラリと見えたバストは、レイコと似たような美乳だった。
「こちらの方は……?」
「あたしの依頼を受けてくれたパーティのリーダーで、ユーイチよ」
「そうでしたか、イシカワ家のカオリと申します。どうぞよしなに……」
「ユーイチです。こちらこそ、よろしくお願いします」
僕は、背後のフェリアを見て指示を出す。
「フェリア、『倉庫』へご案内して」
「ハッ!」
フェリアは、『倉庫』の扉を出した。扉を開いて、カオリに中へ入るよう
僕は、カオリが『倉庫』の中へ入るのを確認してから、次の牢屋へ向かった。次で最後のはずだ。
最後の牢屋には、横座りで両手を後ろについた姿勢の女性が居た。例に漏れず女性は、全裸で体液まみれだった。髪型は、黒髪のポニーテールだ。
突き出された胸は、巨乳というほど大きくもなく、小ぶりというほど小さくもなかった。形は、レイコやカオリのようなお椀型の美乳ではなく、ミサイルの先端を彷彿するような形で、乳首が凄く大きく、乳輪もそれに見合ったサイズだった。乳首の色もレイコやカオリのようなチェリーピンクではなく、もっと朱い紅色で生々しく卑猥な印象だ。
僕は、刀を一閃して鉄格子を斬った。鉄格子は、白く光って消滅する。
念のため、女性を回復しておくことにした。
【グレーターヒール】
ポニーテールの女性の裸体が一瞬、回復系魔術の光るエフェクトに包まれた。
「サユリさん!」
ミナがポニーテールの女性に駆け寄った。
「ミナ、久しぶりね」
長くても十日ぶりくらいなので、久しぶりという挨拶には違和感を覚えたが、毎日一緒に居た人間に対して、しかも昼夜オークに犯され続けたであろう女性からすれば、そう感じても不思議ではないかもしれない。
サユリと呼ばれた女性は、ミナの手を借りて立ち上がった。
身長は、ミナよりも少し高いので、160センチメートルくらいだろうか。
ミナの頭上の【ライト】の光に照らされているというのに身体を隠そうともしなかった。
『少しは恥じらいを持ったほうがいいと思うんだけど……』
サユリは、僕のほうを見た。
「こちらは?」
「あたしが出した依頼を見て協力してくれたユーイチよ」
「へぇ、あなたが助けてくれたんだ? あたしは、ナカノ・サユリ。よろしくね」
「ユーイチと言います。『組合』で依頼を見て協力させていただきました」
「まぁ、謙虚なのね。ありがとう。こんな身体で良ければいつでも使ってね」
「あ、ありがとうございます。では、こちらへどうぞ」
サユリもイリーナと同類のようだ。冒険者は、妊娠しないから貞操観念が低いのかもしれない。
僕は振り返って、フェリアを見る。
「フェリア」
「ハッ!」
彼女は、『倉庫』の扉を召喚して、サユリを中へ促した。
サユリが中へ入ると扉を閉めてから、扉を帰還させた。
念のため、僕たちは、他の牢屋も見て回った。
牢屋の側の廊下は、少し先まで続いて左に曲がっていた。
廊下を曲がると同じように左側に牢屋が並んだ廊下が向こうまで続いている。
そのまま進んで行くと、廊下はまた左に曲がっていた。その先にも左側に牢屋が並んだ廊下が続く。
そのあと2回左に曲がったら、元の丁字路に戻ってきた。つまり、ここは外周を回れるのだ。
ちなみに、どの牢屋も空だった。
フェリスとルート・ニンフは、フェリアの『倉庫』内で村人の様子を見てもらっているので、ここに居るのは、僕、フェリア、ルート・ドライアード、ミナの4人だ。
「じゃあ、外に出ようか?」
「仰せのままに」
「御意のままに」
「行きましょ」
僕は歩きながら、ミナに話しかけた。
「ミナ、ここを出たところで、明日の朝まで一泊したほうがいいと思うんだけど、どうかな?」
「そうね、夜に移動するのは危険だと思うわ。朝ならオーク達は、まだ復活していないから、明るくなってから移動すればいいと思う」
「じゃあ、そうしよう」
「野宿するの?」
「フェリアの『倉庫』で眠ればいいと思うよ」
「なるほど、便利ね」
そして、僕たちは、『オークの神殿』から外へ出た――。
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