4―10

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 ――何とドライアードの集落に居たエルフの女性は、フェリアの母親だったのだ!


 母親のエルフが走ってきて、フェリアを抱きしめる。

 フェリアのほうは、その状況に戸惑っているようだ。

 フェリアの母親は、フェリアを抱きしめながら、嗚咽おえつらしている。


「っ……ぅフェリアぁ……」

「お母さん、どうして……?」


 しばら抱擁ほうようし合っていた二人だったが、やがてフェリアのほうから身体を離した。

 そのタイミングを見計らって、僕はフェリアに話しかける。


「フェリア、紹介してもらってもいいかな?」

「はい、ご主人様」

「ごっ、ごしゅじんさま?」


 フェリアの母親が驚いているようだ。


『そりゃ、百年振りくらいに再会した娘が知らない男の使い魔になっていたら驚くよなぁ……』


 隠し通すことなどできないだろうが、いきなりバレるのは、まだ心の準備ができていない僕を動揺させた。


「こちらが、わたくしの母『フェリス』ですわ」

「お母さん、こちらが、わたしのご主人様『ユーイチ様』です。失礼のないようにしてください」

「初めまして、ユーイチと言います。娘さん――フェリアは、僕の命の恩人なのです。その後もいろいろと良くしてくれまして、感謝してもしきれないくらいなんですよ……」

「あ、初めまして、フェリアの母のフェリスです。フェリア、ユーイチさんは、あなたの旦那様ということでいいのかしら?」

「いいえ、お母さん、ご主人様は、ご主人様よ。わたしは、ご主人様の使い魔にしていただいたの」

「なっ……!?」


『そりゃ、驚くよね……』


 また、フェリアは、僕に対してはわたくし、母親のフェリスに対してはわたしと一人称を変えている。元々は、「あたし」と言っていたはずだが、僕の使い魔になってからは、「わたくし」と言っているのだ。


「ユーイチ殿、お二人を親子水入らずにしてあげるべきではないか?」

「そうだね、僕を別の部屋に案内してくれるかな?」

「ここには、大きな浴場があるのだ。良ければ、お入りにならないか?」

「いいね。丁度お風呂に入りたい気分だったんだ」


 昨日は、入浴していないから、風呂が恋しい気分だった。


「フェリア、僕はお風呂に入ってくるから、お母さんとゆっくり話をしておいて」

「ご主人様、わたくしもお供いたしますわ」

「いや、これは命令だよ。逢うのは百年ぶりくらいなんでしょ? いくらでも話すことがあるはずだよ」

「……畏まりました」

「では、こちらへ……」


 今は甲冑を着ていない甲冑のドライアードに案内されて、僕は移動する。


「この建物は、集会所のような施設なの?」

「そうだな。それに近い。本来は、あなた方のような外から来られた方のための施設だったのだが……」

迎賓館げいひんかんってわけか……僕たちのように外から来る人ってどれくらい居るの?」

わたしが知る限り、フェリス様が最初の一人だ」

「あなたが知らない昔にはあった可能性もあると?」

「ふむ、その可能性はあるかもしれんな……しかし、あのトロールの巣を抜けて此処ここまで辿たどり着くのは至難の業……」

「そうなんだ……」

「ユーイチ殿は、苦労されなかったようだな」

「そんなことないよ。昨日は、囲まれて絶体絶命の状態から九死に一生を得たんだから」

「それで、今日は、殲滅せんめつされたのだったな?」

「うん、魔法や装備や戦術を見直したからね」

「たった、一日でトロールを殲滅することができるようになるなんて……」


 僕は、話題を変えてみた。


「あなたは甲冑を着ていた人だよね?」

「ああ、その通りだが、何か?」

「ドライアードはよく鎧を着るの? イメージと違うっていうか……」

「あの装備はフェリス様に戴いたものだ」

「そうなんだ……」

「トロールが出現した時に先頭に立って戦うための鎧なのだ」


 そういえば、あの槍は普通に戦うにしては長すぎる。トロールの間合いに対応しているのだろう。


「トロールとよく戦うの?」

「いや、滅多に戦うことはない。私の記憶では、フェリス様がトロールから逃げて来られたときが初めてだな」

「トロールと一対一で戦って勝てる?」

「……それは無理だろう」

「魔法を使っても?」

「うむ、だからユーイチ殿がどうやってトロールを倒したのか教えていただきたいくらいだ」

「そんな話で良ければいつでも聞いて」


 僕は、先ほどから聞きたかったことを質問する。


「どうしてあなたは、他のドライアードと口調が違うの? あなたたちは同一の存在なんだよね?」


 記憶が同期する同一の存在と言っているわりに、この甲冑のドライアードは、個性的すぎる。


「これは、フェリス様に戴いた本の影響なのだ」

「へぇ? どんな本?」

「主人公のサムライが活躍する物語だ」


『侍の口調って……「拙者」とか「ござる」じゃないのかなぁ……?』


 この世界にも侍が居るようだ。日本刀があるわけだから、驚きはしない。『エドの街』を作ったというマレビトの影響の可能性もあるし。浴衣ゆかた下駄げたなど日本文化は、いろいろと存在しているようだ。


「……なるほど」

「私だけではないぞっ! 他にも男と男が愛し合う本に影響を受けている者も居るくらいだ」


『BLかよ……』


 腐ったドライアードも居るようだ……。


「でも、そういった個性って記憶の同期が起きたときにはどうなるの?」

「何だ、そんな話まで知っていたのか……そうだな、ユーイチ殿が言う記憶の同期は、自我にまで影響を及ぼすものではない」

「それって、個があるってことじゃないの?」

「確かにそうとも言えるが、我々は元々同じ存在なのだ。死んだ時には記憶はなくなり、元の状態に戻るだろう……」


 つまり、クローンのように生まれたときは、全く同一の存在だったが、自身が経験したことで、それぞれに個性が生まれるってことだろうか……?


『じゃあ、記憶の同期はどういうものなのだろう? 自分が体験したように感じるのではなく、単なる知識として本を読んだような感覚で記憶されるとか?』


 そんなことを考えているうちに着いたようだ。


「ここが我ら『ドライアード』が誇る大浴場だ」

「案内、ありがと」

「ゆっくり入ってくれ……」


 僕は扉を開けて中に入る。


『まさか、混浴で誰か入ってるんじゃないだろうな?』


 期待半分、不安半分で中へ入ってみると人の気配はしなかった。


『装備8換装』


 脱衣所で裸になり、浴場の中に入る。プールみたいな広い浴場だった。

 床は大理石のような石を使っている。水で濡れていたら滑りそうだ。


【レビテート】


 念のため、少し体を浮かせておこう。


【エアプロテクション】


 お湯に入る前に身体に付着した埃などを吹き飛ばしておく。

 かけ湯をしようにも風呂桶ふろおけすら見あたらない。


 そして、湯船に入る。


「ふぅーっ」


『生き返る感じがする。この身体になっても入浴の楽しみを感じられるのは最高だな……』


 いつにも増して、入浴に幸福感を感じてしまう。

 おそらく、一人でゆっくり入っているからだろう。

 いつもは、フェリアと一緒に入っていたので、少しは緊張というか、余計なことに気を使っていて、全力で入浴を楽しんでいなかったのではないだろうか。


『所持金』


 何となく、今日の稼ぎをチェックしてみると。


―――――――――――――――――――――――――――――


 所持金 …………… 9347033.85ゴールド


―――――――――――――――――――――――――――――


 見たことないような数字が並んでいる。


『934万ゴールド!?』


 数千匹のトロールで、900万ゴールド以上稼げるようだ。


『何か凄い装備でも作ろうかなぁ……』


 とりあえず、僕とフェリアの装備を徹底的に見直したいところだ。


『う~ん、夢が膨らむなぁ……』


 トロールは、帰りにも殲滅しないといけないだろうし、もう一度、900万ゴールドが手に入るのだ。

 それどころか、定期的に狩りに来るのもいいだろう。一億ゴールドも夢じゃない。

 そんなことを考えていたら、入り口のほうがガヤガヤと騒がしい。


『入浴時間が変わるとかだろうか? そろそろ上がったほうがいいかな……』


「邪魔するぞ」


 入り口のほうから声がするので、見てみると何人ものドライアード達が裸で浴場の中へ入ってきた。


「あ、僕はそろそろ出るから……」

「お待ち下さいユーイチ殿。わたくしたちは、貴方様にご奉仕するために参ったのです」

「ごほうしって……」

「お客様をもてなすのは当然のこと」


 先頭に立って話しかけてきているのは、口調からしてあの甲冑をまとっていたドライアードだろう。

 ドライアードは、少なく見積もっても200人は居る。全員が全裸だが、全く同じ容姿なのでコピペして貼り付けたような異様な光景だ。


 ドライアード達も刻印を持っているためだろうか、頭髪以外――眉毛や睫毛まつげはある――の体毛が見あたらない。

 胸は想像していた通り、かなり大きい。見た感じフェリアより大きそうだ。フェリアのほうが長身なので、実際のサイズは比較してみないと分からないが。

 そういえば、ドライアードには男を誘惑して森の中に閉じこめるといった伝説があったんじゃないだろうか?


「待って! 別にそんなことしなくてもいいから……」

「遠慮はいりません」


 ドライアード達は、湯船に入って来て僕の周りを取り囲んだ。


「いや、遠慮してないから」

「ユーイチ殿は、我々に魅力を感じないとおっしゃるか?」

「魅力を感じるから困ってるんだよ!」

「ならば、良いではありませぬか。我々と楽しみましょうぞ」

「ごめん! 僕には好きな人が居るから!」

「そのようなことは関係ありませぬ。ユーイチ殿も男の子であろう? その若い欲望を我らにぶつけてくだされ」


僕の背後に居るドライアードが僕を羽交い締めにした。


「わっ、ちょっと!」


背中に当たる柔らかい感触に僕はドギマギする。

変な気分になってきたので、【戦闘モード】を一瞬発動して発情を抑える。


「ご主人様?」


 フェリアの声が聞こえた。しかし、ドライアードに囲まれている僕には姿が見えない。


「あらあら、あなたのご主人サマ、囲まれちゃってるわよ……」


 フェリスがドライアード達に揉みくちゃにされている僕を見てそう言った。

 母親のフェリスと一緒に浴場内に入ってきたようだ。


「フェリア、助けて!」

「ハッ! 畏まりました」


 フェリアが空中に浮かび上がって僕の上まで移動して目の前に降りた。


「ドライアード達よ! ご主人様への狼藉ろうぜきは許しませんよ!」

「待ってくれ、フェリア殿。我々は、ユーイチ殿にご奉仕するために参ったのだ」

「ご奉仕ですか? しかし、ご主人様は嫌がっておられるご様子……」

「フェリア殿からも何とか説得してもらえぬだろうか? 我々は、ユーイチ殿のような強いお方にご奉仕するのが使命」

「では、あなた方もご主人様の使い魔になりませんか?」

「使い魔とはどのような?」

わたくしのようにご主人様に仕える奴隷のような存在です」

「ユーイチ殿の側にはべらせていただけるのであれば、是非とも使い魔にしていただきたい」

「じゃあ、わたくしも使い魔にしてもらっちゃおうかしら……」


 フェリアの母親のフェリスが空中から僕の前に降り立った。

 エルフの彼女は、肩幅が狭く華奢きゃしゃな身体つきをしている。身長はフェリアのほうが少し高いものの、せているため、フェリスのほうが長身に見える。

 胸も小振りで手のひらに収まる程度のサイズだろう。こうして見ると、ドライアードよりもエルフのほうが妖精のイメージに近い。


「では、ご主人様。母の乳房を吸ってください」

「なっ、何を言ってるんだよ?」


 フェリアがわけの分からないことを言い出した。


「これは必要なことなのです。このまま、召喚魔法をかけても成功する確率は低いと思われます」

「おっぱいを吸ったら成功率が上がるの?」

「その通りです」

「意味が分からないんだけど……?」

「ご主人様に母乳を吸われた者は、ご主人様の奴隷になりたいと思うのです」

「それは、フェリアだけじゃ……?」

「さぁ、早く……」


 フェリアの迫力に押され僕は、目の前のフェリスを見る。目が合うとフェリスは、ニッコリと笑った。


「フフフ、ご主人サマ。わたくしも貴方様の使い魔にしてくださいませ」


 そう言って、乳房を差し出してきた。

 フェリアに比べてかなり小ぶりな乳房だった。

 流れ的に母乳を飲まないといけない雰囲気になっていた。恥ずかしかったけど、僕はフェリスの乳首に吸い付いた。


『美味しい……』


 フェリアの母乳とは少し違った味がする。脳が感じる美味しさではフェリアのほうが少し上だが、この母乳もいつまででも飲んでいたいと感じるものだった。


「フフフ……可愛いですわ……」


 フェリスが僕の頭を撫でている。5分ほどして、お代わりとばかりに反対側の乳房からも母乳を飲んだ。


『そろそろ、いいだろうか?』


 20分くらい経過した頃に僕は口を離した。

 フェリアのほうを向いて聞いてみる。


「これでいい?」

「ありがとうございます」


 何故か礼を言われた。


「お母さん、どう?」

「ええ、ご主人サマの奴隷になりたくてたまらない気分よ……」


『奴隷じゃなくて使い魔なんですが……』


「ご主人様、母に召喚魔法を掛けてあげてください」

「分かった」


『サモン2』


 僕は、フェリアの母親であるエルフのフェリスをターゲットにして召喚魔法を発動させた。

 次の瞬間、フェリスの体が白い光に包まれて消え去った。


『成功した!?』


「ご主人様、流石です」


『フェリス召喚』


 同じ場所にフェリスを召喚してみる。

 白い光の中からフェリスが現れた。


「ああっ……わたくし、ご主人サマの奴隷になったのね……」

「奴隷じゃなくて使い魔ですよ?」

「フフフ……同じことですわ……」


 ドライアードの一人がフェリスの右側に出てきた。


「次は、我々の番だな」


 そういって、乳房を僕のほうに差し出してくる。口調から甲冑のドライアードだということが分かる。

 大きな乳房だ。フェリアのほうが少し身長が高く体も大きいので絶対的なサイズはそれほど変わらないようだが、体に対する比率や少し垂れ気味な見た目でフェリアの胸よりも大きく感じる。

 僕は、自分ではそれほど女性の胸のサイズにこだわりはないと思っていた。水谷も服の上から見た感じではそれほど大きくなかった。しかし、目の前に差し出されると大きな胸のほうが狼狽うろたえてしまうというのが現実のようだ。

 ゴクリと生唾を飲んで乳房に吸い付く。やはり、フェリアともフェリスとも少し違った味で美味しさは、フェリスと同じくらいだろうか。フェリスとドライアードは同じくらいの強さなのかもしれない。

 それでも凄く美味しいので、僕は夢中になって吸い続けた。


「はぁあああっ……何だ、この気分は……」

「さぁ、あなたもご主人様の奴隷になりなさい……」

「ご主人サマの奴隷になると素晴らしい気分ですわよ」

「……御意……」


 ビクッと甲冑のドライアードの身体が跳ねた。

 僕は、母乳を飲むのを止めて、彼女の乳房から口を離した。


『サモン3』


 甲冑のドライアードは、白い光に包まれて消え去った。


『甲冑のドライアード召喚』


 そう念じると、先ほどのドライアードが召喚された。


「気分はどう?」


 僕は、惚けたように立っているドライアードに話しかけた。


「ハッ! 問題ありません、主殿あるじどの

「そ、そう……?」


 フェリアに続き、フェリス、甲冑のドライアードと使い魔が3人に増えた。しかし、ここにいる200人を超えるドライアード達を全て使い魔にするのは大変そうだ。MPが持たないので時間がかかるし、召喚魔法の刻印もそんなに刻んでいない。


「フェリア、この人数を使い魔にするのは難しいと思うんだけど?」

「はい、他の者たちは、先ほどご主人様の使い魔となったドライアードの使い魔としましょう」

「ドライアードは、召喚魔法が使えるの?」

「それは分かりませんが、ご主人様の使い魔となった後ならばすぐに習得できると思われます」

「トロールを利用するわけか」

「その通りです」


 トロールから得られる経験値なら、すぐに召喚魔法が使えるようになるだろう。

 フェリアが僕を羽交い締めにしているドライアードから引きはがすように抱き寄せた。


「何を……」

「さぁ、ご主人様。あちらに行って座りましょう」


 そう言って、僕を抱きかかえて、空中に舞い上がり、プールのような湯船の端まで移動する。

 そこで僕を降ろしてふちに腰を掛けるよううながした。

 僕が座るとフェリアは、僕の後ろに座って僕の身体を抱き寄せた。


「は、恥ずかしいよ……」


 僕は、両手で股間を隠しながらフェリアに訴えた。


「ふふっ、お気になさらず……。さぁ、ドライアード達よ! ご主人様の前にお並びなさい!」


 遠巻きに見ていたドライアード達が僕の前に移動してきた。


「では、ご主人様。この者たちの母乳を吸ってあげてください」


 それから約3日、僕はドライアードたちの母乳を吸い続けた――。


―――――――――――――――――――――――――――――

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