第3話
「祖父を知っているんですか?」
「そりゃあ、もちろん!『現代のアインシュタイン』こと修田院
「そうですよ、おじい様はエネルギー変換の効率化や、昨今の環境を考えてのエネルギー開発機関の発明など...恐らく次世代では広く普及する大発明をしているのですよ!」
「し、知らなかった....いつも目をつぶっても家中歩き回れるゴーグルとか、カラスが寄らなくなるアンテナとかしか作ってなかったのに....」
「もっとも、あまりに未来に行き過ぎた発明は闇に葬られるものさ。だって、商売上がったりのお偉いさんがでてくるだろう?一クン」
「兄貴のだと言いすぎな感じだけど、少なくとも表立ってデカでかとは言えない訳サ、一くん」
なんてこった、もっと爺ちゃんはその筋で有名って言っても町内会レベルだと...全然知らなかった。まさか、そんな人物が身内にいるとは...それにしても驚愕の連続で少し頭がこんがれがってきたぞ....?
「まーまー、ともかく気楽にしなよ~軽井兄弟は君を歓迎するぜー!」
「そうだよー、僕らだって後輩が新しくできて嬉しいのさー!」
「あら?私だって、新人さんは歓迎しますわ。ほら、私の胸に飛び込んできてもいいんですよ?ギュッとしてあげます、ギュッと」
おおおおおおう!?この人たちは自由過ぎないか?次から次へ話が飛んで....あわ!?胸に抱きつく!?俺が?しかも、それを歓迎する!?宇宙とは?胸とは?貧乳・巨乳の争いとはなんだ!?
「おうおう、先輩ら今更治らないのは分かりますが....ほら、情報過多で少し混乱してますよアイツ」
「お、おおおう。大丈夫だ、です。胸、歓迎...飛び込む__ええ、ああ、うん。...はい」
「まあ!!私の胸に飛び込むのね!!うれしいわ!仲良くしましょう!!」
「こらこら、ストップだよ~。あー、かなり混乱してるね。コレ....でも大丈夫よ!私に任せて!部長の名は伊達じゃない!!」
「お、来るか...見てろアレが俺らのトップだ...ってコレ本当にやべえな__何か催眠のお香でも付けてるんですか?レリア先輩__」
「んー.....?そんなこと______」
あまり、覚えてはいないが。混乱の中ショートした記憶の中。ボンヤリと煙がかって残っている。
部長の楽しそうな顔。弾けるスパーク。あがる煙、ハンダゴテの流れ。駆ける秒針、流れる時間___いつの間にかできたソレはまるでVRゲームのゴーグルのようで....
次に意識がはっきりした時は、よく分からない草原だった。
「___ここは、どこですか」
ただ、それしか言えなかった。夢?いやいや、圧倒的リアル!!と言えるだろう、吹く風、注ぐ日差し、暖かな太陽と草の香り。青く広い空、千切れては、流れる雲。どれをとっても現実のそれ。
『あーあー。聞こえる?こちら、部室よ~』
「え?どこですか?というかここは!?」
『えーと、そこは....わあ!?___『大鬼だ。部長と通信を代わった』
「大鬼くん、でここは一体?」
『呼び捨てで構わん。で、だ。そこはどこかと聞かれるとだな《仮想現実》って奴だ。近年流行りのVRってとこか?お前の混乱を解くのと、我が部の実力を楽しんでもらう為の措置だ。どうか、怒らないでくれ』
VR....?あのゲームの世界が体感できるって言うやつか?しかし、俺の知っている範囲だとここまでのリアリティは....
『すごいでしょ!これが開発部よ!君もこのくらいは出来るようになれる!あ、ちなみにゲームクリアすれば脱出可能よ!』
「部長!でもゲームクリアってどうすれば.....」
『ふふん、そう思ってね助っ人を既に送ったわ!大鬼くん、お願い!』
『あい、分かった。レリア先輩行きますよ』
『ええ!何故なら私はレリア・クロスホルム!誉れ高きクロスホルム家の可憐なる花だから!』
ほどなくして、全身タイツで腰にスカーフらしき物を巻いたレリア先輩が腕を組んでドヤ顔で頭から現れてきた。わかりやすく言うならキャッツアイの格好でガイナ立ちしながらドヤ顔しながら出てきた。
「私が来たからにはもう安心よ!!」
「はぁ、というかなんですかその格好は...」
「確かに動きにくいわね....着替えましょうか」
おもむろに服を脱ぎ出す、全身タイツってのは脱ぐにくそうだ....な?
「バカですか!?ってあれ?」
「どうかしました?」
俺はてっきりToLoveる的なお着替えシーンが待ってるのかと思ったが....瞬きした一瞬間に服装が変わっていた...なんだかお姫様みたいなひらひらの洋服になってた...
「いや、空目ですね。まだ頭が混乱しているようです....」
「なら、早速行きましょう。旅は道連れ世は情けですから!!」
そうして、俺らの旅は始まった_____
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何年経ったろうか?ゲーム内に放り込まれてから永い時間が経った....俺はレリア先輩__いや、今や妻と未だに旅を続けている。最初の一年で外部からの連絡は途絶えて、できなくなった。現実の体はどうなったかは分からない。だが、もう俺はこれでいいと思っている。俺らにとっての現実はもうココにあるのだ__
「貴方、大丈夫?」
「あぁ、少し黄昏てた....部長や皆はどうしているだろうか....」
「分からないわ。でも、もういいじゃない。私には貴方が、貴方には私がいるでしょ?ここはゲームだったけど、今はもう本当の世界。さ、次に向かいましょう?」
「___そうだな、うん?違和感が....チケット?」
「あら?ゴールチケット?____」
「なんだこれ_____」
俺の視界を光が染め上げる____
______________________________________
「クリアおめでとー!!」
次に光が晴れると、そこには『先ほど』の部活の面々だ。うーん、ここ少しの記憶がない....
「あらあら?私いつの間にクリアしたのかしら?」
「レリアを送った時にアインシュタインのポケットにチートアイテムを入れといたからね!触れば直ぐに起動してゴールって寸法よ!」
「なるほど...しかし、凄かった!受ける風、太陽の光!草の匂いまでも!全部、リアルの塊だった!!」
「でしょう、でしょう!スゴイでしょう!そういうわけで....是非、入部して!ね?」
「えぇ、この修田院___いえ、アインシュタインが!祖父の名前に負けぬ様にします!」
「やった!みんな聞いた!?」
「「聞いた聞いたー!!」」
「よろしく、だな。アインシュタイン」
「はい!先輩方もよろしくお願いします!」
そして、後ろからも声をかけられる。
「これからも、よろしくお願いしますね?一さん?」
「レリア先輩__?あれ?え、と...えぇ、よろしくお願いします」
どうしてだろう。どこか懐かしい感じがする...それに、どうしてこんなにもドキドキと胸が高鳴るのだろう....___まさか、な?はははは.....
「さ、今日はこれから歓迎会と行きましょう!私の家でパーティーよ!!」
「「やったー!お先ィー!!」」
「待ちなさい!ごめんレリア、大鬼くん!道案内してくれる!?私はあのバカ達より先にたどり着かないと!!」
軽井先輩と、部長はあっという間に行ってしまった...なんて、速さだ。陸上部よりか速いんじゃないか?
「悪い、俺は少し機材の調整をする。レリア先輩、すいませんがお願いします」
「ええ、よくってよ!さ、行きましょ?」
俺の手を取って引っ張る先輩。あれ?前にもこんなことがあったような___
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「さて、と___ん?ゲーム内経過時間?.....10年!?これは....?俺らは常時モニタリングしていたはず....ゲーム内ステータスは!」
大鬼は驚愕する。彼ら外組はゲームの進行を常時確認しながら、機械の調整を行っていた。その時間、およそクリアまでの30数分ほどだった。しかし、ゲーム内での10年という経過時間。一体どういうことだろうか?
きっと、バグであろうという希望を抱いきながら、ゲーム内のレリア・一両名のステータスを見る。
「これは....結婚?修田院レリア?年齢28才?一体これは___バグにしては、質が___!!....いや、これは封印だ。俺は何もみなかったそして、何もここには無かった。そうだ....」
彼は大人しくそのデータを消去し、部長宅へと向かった。
天才発明家の奇天烈ダイアリー アーカー・サタナー @akasatana50on
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