第24話 「『ガバガ・マートめっちゃ光ってるけどなんで?』」
■ところ 国道85号線(鼬狐狸市内)
■じかん 004日目 12:58 〜 13:12
■たいとる 「『ガバガ・マートめっちゃ光ってるけどなんで?』」
現在コンビニ業界で国内最多店舗数を誇る『ガバガ・マート』はたった
「あー、そのあたりまででいいです」とりらせが言う。
ミレイが読み上げるガバガ・マートの解説をずっと聞いていて眠くなってきた。居眠り運転になってしまう。レーザー攻撃を受け、先導していた警官は退避しており、車が
「私さっきなんていったっけ」とりらせはミレイに問う。
「『ガバガ・マートめっちゃ光ってるけどなんで?』でいす」
「『光ってる』ってのは比喩じゃなくて、物理的に光ってるのを聞いたんだけど」
「あ、そですか」
「私さ、ヨモギ入りヨーグルトみたいな変な色のガバガマートの看板嫌いなんだけど、なんかさっきからいろいろな色に光ってるじゃない。普段からああいう感じに光らせてくれたらなって思うんだけど」
「きれイですねぇ」とミレイが呟く。ゴーグルをつけたまま美幌の主観を通し、街の中でガバガ・マートの光る様子を上空から見ている。さっきドローンが雲を散らした空からは
さっきから国道沿いにあるガバガ・マートの横を過ぎるたびに、看板の照明が虹色のグラデーションを波紋のようにめぐらせていた。この看板も機械制御されていたようで、さっきまでは美幌の主観映像を荒いドットで流していたが、空が晴れたあたりから、それはきらきらとイルミネーションのように光り始めていたのだった。
「ヘル子、
あんたの敗因は、私がネットワークに繋がっていたことで、
私の勝因は、あんたがネットワークから孤立していた事よ」
「勝因って、まだ勝ってもないのに、どっからくるのかしらその自信」
「勝つからよ」
「勝つも負けるも何も、あなたとあなたの家族を十分小馬鹿にさせてもらったし、私としてはもう既に勝ってるようなもんですから。あとはゆっくりとこの世界の果てからあなたの息子さんが爆発するのを見届けるだけなので」
「じゃあ言い直すわ。勝ち逃げさせないためにぶっとばすからよ」
「だからどうやって? 私があなたにぶっとばされるのは私がネットワークから孤立してるからって? 今だってこうやってあなたに通信してるし、私が部下にしていた指示も全部ネットワークと繋がっていないとできないわ」
「さっきあんたのアーキテクチャを
「人の体をスパゲティの怪物みたいに言ってくれるわね」
「
「で、何がいいたいのよ。美幌さん、あなた昔から要点述べるの下手過ぎるわ」
「あら、これでも人心掌握と企業のM&Aが
「で?」
「あんたの体は機械化されても、ネットワークに直結されてないから、外部からクラッキングされない」
「そうよ。あんたとはそこが違う」
「そ。私とあんたは、そこが違う」そう言うと、美幌は亀五郎のいるヘリポートに降り立ち、倒れた。
配信されていた美幌の主観視点はここでぷつりと切り替わる。切り替わった新たな視界には、美幌自身の倒れた体が写っている。
「ちょっと体借りるわよ、亀五郎」と、亀五郎が裏返ったまま言いながら、甲羅から金属製の補助肢が伸びて体を起こす。いや、亀五郎ではなくて、これは亀五郎に入った美幌だった。「おっけーおっけー、自分の体より動かしやすいわこれ」
そう言いながら、美幌in亀五郎は、手の先に付いた可動するジェットノズルを肘に動かす。
「何、あんた自分のペットに入る事できるの? 超ウケるんですけど」
「あ? ウケてる場合じゃないのよ、ヘル子。あんた
「おのろけ? 当てつけ? そんな性格してるから私に恨まれるのよ。映画なんて低俗なもん見ないわこの亀女」
「亀女じゃないわ、マダム・
「美幌さん、あ……」
この瞬間、ガバガ・マートの横を通っていたりらせは、そのキラキラしたイルミネーションが消えて真っ暗になるのを見た。
「……なた、ね」、と、倒れている美幌の体が呟く。「え? あれ?」と言いながら、美幌の体が起き上がる。「なにこれ、なんで。え?」自分の両の手のひらを見る。
「
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