第15話 「おぱんつ、くださいね」

■ところ ジーファー内処置室

■じかん 001日目 15:18 〜 15:37

■たいとる 「おぱんつ、くださいね」


 りらせは処置室の手術台の上に、患者用の手術着をまとって仰向けに寝かされていた。

 さよなら、私の制服。

 「この処置室、内部と外部はほぼ隔離されていて、スタビライザーによってセイギョされてんで、波が多い日も安心なんですねー」

 何が安心なのかはよく分からないが、ミレイは技術の説明をする時はやけに楽しそうだ。口にマスクをして、手術衣を着込み、頭に手術用の帽子をかぶり、全身薄い青色をしているが、それにしても手術帽の隙間からごっそり髪の毛出てるな。さすがに麦わら帽子は被っていないが、不安がゴロンゴロンと頭の中で転がる。

 「お隣のベッドをごらんクダさいねー」とミレイが言うが、お隣にはベッドがない。代わりにトラックが一台ある。「あれが今後リラセチャンの下半身になりマスのですね。カッコイイ!」いやよくないが。

 お隣には荷台のない白いトラックがあった。どうやって入れたのだろうか。トラックのほうも、突然女子高生なんて取り付けられて困るだろう。ならば彼(彼女?)もまた被害者と言える。これからよろしくね。

「型番はQ−8でいす。多く流通してるトラックなので、その辺たくさん走ってる子ですねぇ。エンジンはお下がりデスが、ガワは下ろし立てのおニューらしいのです」

 ニッコリしているように見える、よく見ればなかなかかわいいトラックかもしれない。

「レーザー核融合を用いたエンジンで走りマス。実験機ですが安定してるそうなのです。ホントはソーラーもつくはずだったのですが、諸事情により見送らレました」

「爆発したりしない?」

「そんときゃそんときです」

「そっか。

 私が気に入ったら、トラック、ピンクに塗ってよね」

「ええですよ。んじゃ、手術できたら、リラセチャンの路上ッコぐらしのおぱんつ、くださいね」

「ええですよ」

 無影灯がまぶしい。

「なんか言っときたいことあります?」

 特にないかな、と思ったが、言うことあった。忘れていた。

「名前、あなた、ミレイだっけ。右手、縫ってくれたよね。ありがと」

「んふ」

 ミレイはりらせの口に、蛇腹ジャバラのチューブがついた透明な樹脂製のマスクをかぶせる。

「ほいじゃ、じゅーまで数えまショねー」

「一、二、三、四、五……

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