第14話 「病める時も、健やかなる時も、死が二人を別つマデ」
■ところ ヘリの中(雫役離張付近) 〜 ジーファー甲板
■じかん 001日目 13:45 〜 15:18
■たいとる 「病める時も、健やかなる時も、死が二人を別つマデ」
りらせは改めて、決断を迫られていた。
ハヤセを救う事、そのために自分がどうなっても構わない。その決意は変わらないはずだが、でもやはり改めて尋ねられると、本当にそれでいいのかと不安もある。
ようやく
今日という日はあまりに他人に介入されすぎて、情報を詰められすぎて。「
りらせはここまでの経緯を、父や少女から聞いた事柄で補強しつつ自分の言葉で整理する。
まず始まりはパパとママと
経子は私たち家族へ向けた遠大な嫌がらせ計画を立て、実行する。
決行日であった今日早朝、ハヤセは経子の仲間に拉致され体に爆弾を埋め込まれ、私は両手にセンサと爆弾を埋め込まれ、鞄にナイフを入れられ、スマホとウォッチにも細工された。
私が目を覚ます前にハヤセは
朝起きて学校に向かう私の移動速度が時速
(それを教えてくれたのはカナリアという男。所属する組織も本名も不明だが、カナリアはどうやら味方。)
私の最初の停止で近所のガバガ・マートが爆発し、二度目はりらせの右手、三度目はハヤセが爆発する仕組みだった。
(話の流れでカナリアは「
ハヤセの爆弾が爆発しない条件は、私が移動し続ける事だが、それは「ハヤセを助ける条件」ではない。
途中で警察へ緊急通報するも、その時の通信はジャックされており、主犯である後藤経子へと繋がった。希望の糸を垂らすという目的のみで行われる、もったいぶった嫌がらせ。
その後、クソ四つ子による嫌がらせ。警官に追いかけられ、四つ子に捕まり、右手
パパからのコール。誘導に乗って
私はガラ空きの国道を走るが、途中で意識を失いかける。そこにパパと少女の乗ったヘリがギリで到着。私を
泣きっ面に蜂っ面にグーパン。未だ
目を覚ますとヘリで、パパに再会、少女と初対面。
そういやまだ彼女の名前知らない。
私に与えられている選択肢が、走り続けるために身体改造するか、人工衛星に乗り込むかの二択と知る。ホントにこの二択しかないのか? 甚だ疑問。
ひとまず
けれど、
私が乗り込むはずのロケットは無残に破壊。私が軌道上で地球を周回する作戦は
人工衛星に載せられたハヤセだが、精神状態はともかく、肉体的・物理的には一ヶ月以上そこで暮らせる準備はあるらしい。ハヤセを直接助けることができればいいのだが、ほしふりには当初提出された青写真になかった自衛武装を備えており、容易には近寄れない。ほしふりの制御を握っているのは経子。ほしふりの攻撃に耐え、ほしふりの制御を物理的に奪えるような道具、設備は現状では存在せず、準備できるにしても最低六カ月は見込まないといけない。かといって、
私は下半身トラック人間になる事を決めた。
結局メガフロートへは降り立たずに、私は身体改造をうけるべく、
ジーファーには高度な医療設備が整っており、病院船の役も
降り立つことのなかったメガフロートから去って一時間後、ヘリはカンザシ級強襲揚陸艦ジーファーにいた。
全長
ヘリはジーファーの飛行甲板に降り立ち、乗組員による艦内の案内もそこそこに、りらせは父親と少女と共にすぐに処置室前まで連れて行かれた。
「本当に構わないんだな、リラセ」と、りらせの父は何度目かの意思確認をする。
「うん」と、りらせも何度目かの肯定。
「執刀医は私でいす」と少女が言う。
「え? え、マジ?」
「それがマジなんだ」と父親。
「今からリラセチャンに行う
「ああ」
「おじサムの所属するグループにヨる研究成果である
「それって、私、人体実験の材料って事じゃないの」パパは研究のために娘の体を差し出すのかと思い、力が抜けそうになるが、半ばどうとでもなれともいう感じなので、もはや怒りも沸かない。
ん? いやちょっと待て、人間とトラックを接続する技術ってどういう意味だ。
超今更だけど、なんだよそれ。
「リラセチャン! 心配には及びまセン。これは実証済みの技術でいす!」
「
「みんな宇宙好き過ぎでしょ」と、りらせ。
「経子は一昨年打ち上げられた人工衛星そのものになっていることが分かった」
「は?」
「マントラックインタフェース技術を転用して、宇宙機に自身を繋げたらしい。身体部位のほぼ全てから思考機能の一部までを機械に
「つまり、ヘル子チャン自身が立派にマントラックインタフェースの貴重なサンプル、生き証人なワケでスねぇ」
「
「ま、トニカク、リラセチャンは安心して私に体を預けるとヨイ」
「パパはやってくれないの?」そもそも父親が医療技術や資格を持っているのかすら知らないが、尋ねてみる。
「僕は……、リラセ、君の、大事な、体を……体に、何か……」と、途中まで言うと、口をへの字に曲げたまま
「大丈夫だよ」と、りらせは左手で父親の手を握る。逆だけど、これでいい。私とパパはこれで構わない。
少女がごそごそと
「僕は君の手術について、既に同意済みだ。あとは、リラセ、君の意思による同意が必要になる」
「別に構わないわよ」何度となくいいよと言ってきたのだ、今更だ。
「でも契約書というのはちゃんと読まなきゃデスからねー」
「ハァ、ではリラセチャン、よく読んでサインお願いしマすね」
「読めっての? これ?」
「契約書ってそゆもんです」
「読むだけで一ヶ月かかるわよ」
「しゃーねですね。まぁ平時ではアリマセンから。私が分かりやすく読んであげましょ」
「お願い」
「
「そういう内容なの?」
「そでいす(そうです)」
「はぁ、誓いますよ。誓う誓う。めっちゃ誓うからとっととトラックにしちゃって」半ばヤケクソ、半ば心からの誓いだった。これで、ハヤセが生きられるのなら。
「でわわここにサインを」
ボードの署名欄に左手のリングをかざす。署名欄とリングが呼応して、リングの
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