第13話 「おほお! トルクヘッドにテルシオ!」
■ところ ヘリの中 〜 ヘリの中(雫役離張付近)
■じかん 001日目 13:02 〜 13:45
■たいとる 「おほお! トルクヘッドにテルシオ!」
りらせはベッドから足を下ろし、立ち上がろうとするが、力が入らない。
「寝ていなさい、リラセ」と父親が言う。「僕たちには用意がある。君が次の決断をするまで、
「次の決断?」
「君が、宇宙船に乗り込み人工衛星とともに地球を周回するか、身体改造を経て車輪付き人間になって、地上を
「え!? マジでそれしかないのパパ!?」
「マジでそれしかないんだ」
それしかないのか。
唾を飲み込んで、りらせは言う。
「人工衛星に乗り込む」
ソーラー式や原子力式の、タンク少女やトラック女子高生にはなりたくない。
足に履帯が付いたアイドルや婦警はいないし、一般的に女子高生の下半身を稼働させる動力源が
「『履帯をはいたJK』、絵本にできそナのにね」と、少女は心底がっかりしたように言う。
画面を横一本、水平線が横切り、混じる事のない
「あそこに降りるの?」とりらせは父親に尋ねる。
「そうだ」
「私が止まったらハヤセが死んじゃうってのは、まだ有効なんだよね」
「残念ながら、そうだ。だからこそ移動し続けるために人工衛星に乗り込んでもらわないといけない」
「あそこに降りたら止まっちゃうことにならない?」メガフロートが移動をしているのは知っているが、それでも不安になってくる。仮想窓から見えるメガフロートは、動いているようには全く見えないのだ。
「大丈夫だよ。ちゃんと時速
りらせは特に返事もせずそのまま仮想窓を見続ける。飛行場にかなり近づき、
「あそこに止まっているのが
そのとき、室内にアラーム音が響き、ドア横の表示板の警告灯がともる。
「ちょっと失礼する」とりらせの父は言うと、背負いたくもないままずっと背負っていた少女をなんとか下ろして、部屋から出て行った。
少女は「なんデしょね」と呑気に呟く。
しかし、何かしらの危機は、このヘリだけに及んでいるわけではないことがすぐに知れた。
目前に迫ったメガフロートの方からも、ヘリのローター音に押されつつサイレンがかすかに聞こえる。管制塔の脇の地面が舞台の奈落のようにぱかりと開くと、中から素人目にもそれと分かる迎撃システムがせり出してきた。おもちゃのような砲塔が幾つか顔を出す。
「おほお!
などと少女は今日初めてのハイテンションでわめくと、それを肉眼で見るためか部屋から出て行ってしまった。
二度、大きな音がして、管制塔と白蝙蝠が炎上するのをりらせは見た。
一度めの大きな音。
低軌道上のほしふりの第二
耳に届いた二度目の大きな音。
第四チェインバから射出された落下鞘の仕業だった。トルクヘッドもテルシオも自身の仕事は諦めたようだ。大型の輸送双胴機、白蝙蝠は仲良く繋いだ翼の下に
上記は、すぐに部屋に戻ってきた少女がりらせに興奮気味に解説してくれたことだ。
これは一つの結論を
りらせが宇宙へ行く手段が断たれたということ、
すなわち、りらせは、身体改造を受け入れるしかなくなったということを示す。
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