第9話 「重傷患者は、救う前に殴る」
■ところ 校門を少し過ぎた先 〜 国道72号線
■じかん 001日目 08:35 〜 08:42
■たいとる 「重傷患者は、救う前に殴る」
ウォッチの文字盤にナビの矢印だけがシンプルに表示される。目的地に近づくに従って矢印は細長いものから太く短く変化する。
ナビはりらせを国道
りらせはナビに沿って国道72号線に
遠くからヘリコプターのローター音がする。
視界内にある限りの、向かう信号オールグリーン。
不意に全ての信号が一斉に黄色に変わったと思ったら、仲良くそれらは全て黄色の点滅へと変わる。入学時にあった高校の交通教習授業で黄色の点滅信号は「注意して進行」と習ったことをりらせは思い出す。そして、信号の黄点滅と同時に、車道を走っていた自動車全てがパレードの練習や訓練でもしているのかのように一斉にハザードランプを点灯させ、速度を落とし、
止血すら完全にできていない右腕の先から鮮血を滴らせながら、りらせは車道の異変を眺め、走る。
見えている全ての自動車と信号機がカッチカッチ、パッチパッチとオレンジ色の灯火を点滅させる光景は
走り続けるしかないりらせは当然、走り続ける。ナビはただ国道72号線と同じ方向を向いているだけだ。一向に止まらない出血。意識すると余計に痛いし、何より気持ちが保てないので極力考えないようにする。しかし嫌でも痛みは感じられるし、ベタベタとした汗が噴き出し、ひんやりとした血液が全身を巡り、
歩道に少しずつ人が増えてくる。シェルターへの避難を
不愉快なサイレン音を威圧的に散らしながらヘリのローター音が大きくなってくる。なんか絶対近づいてきてるよね、この音。もしかして私を追ってね? やっぱそうだわ。
りらせは後ろを振り返る。とても大きな一機のヘリコプターが国道に沿ってりらせを追いかけてくる。少し
あ。と、
やばいやばい。これやばい。倒れるやつだ。
汗びしゃびしゃキャミソールでベタベタの不快感が、巨人が
保存状態の悪い白黒の映画のようにぼやけてすべての境界が曖昧になった世界に、ヘリコプターの
「うっわー、やばやばですねー!」りらせは意識の途切れる最後に何か、とんでもないセリフを聞いた。
「
焼き
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