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「標石(しるべいし)?」
新しい船員を迎え、ゴタゴタしていた船内が少し落ち着いた頃、わたしはレンに操舵室へと呼ばれていた。そこには聖石とはまた違う、それより少し大きめの綺麗な石が据えられていた。レンによると、それは標石と呼ばれているモノらしい。
「そうだ。この船の行き先を左右する、羅針盤のようなものだと思ってもらって良い。ここに、お前の中にある竜蹄の位置情報を記録してもらう。少し付き合ってもらえるか?」
「それは構わないけど。そんなことして、どうするの?」
「お前も讖箴も、理由はわからねど竜蹄に狙われている。だから竜蹄からはなるべく距離を取っておきたい。この標石に竜蹄のことを記憶させれば、今竜蹄船がどこにいるのかわかるようになる。そうなれば、こちらからは近づかないようにすることができる」
詳しい仕組みはわからないけど、わたしはなるほどと頷いておいた。この世界において、わたしの中身は聖気も魔気もない空っぽで、その分色々なものを吸収してしまうらしい。つまり、わたしの中には竜蹄側の標石の情報が入っているはずだということだった。けれどそれも、急いで行わないといつ消えてしまうかわからない。だから今のうちに、ということだそうだ。
そうこうしている間に、標石からは何やら赤い光線が向かってきた。わたしと標石を結ぶそれは、恐らく竜蹄の記録を探っている最中なのだろうけれど、わたしの中に不快感のようなものはない。大人しくじっと待っていると、ややあって赤い光はおぼろげになり、すぐに消えてしまっていた。
「予想通りだな。これで大丈夫だろう。協力、感謝する。ありがとう」
「いやいや、そこはわたしがお礼を言うところでしょ。なにせ狙われてるのはわたしらしいし。なんでか全然わかんないけど」
わたしはこの世界にとって異質な存在だ。だから狙われているというのは理屈が通る。だけどその異質な存在がレンたちのそばにあるということをどうして竜蹄側が知っているのか? それが謎だった。竜蹄と金糸雀は敵対しているから、いくらわたしのことを危険視しているといっても、詠花皇帝が竜蹄に情報を流したとは考えにくい。薄気味の悪さを覚えて、わたしは知らず知らずのうちに、自分の腕を擦っていた。
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