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「まぁったく、騒がしいから何してんのかと思えば……あたしの船で預かる以上、お互い仲良くしてほしいものね。あのお嬢ちゃんにもよぉく言ってきかせとくけど」
「ごめんなさい……」
紅さんに窘められて、わたしは素直に謝った。今は紅さんの自室で、棘縉さんに杖で殴られた頬を冷やす薬を塗ってもらっている。
「謝る相手は他にもいるでしょ。まぁ……以前嫌なことがあったんでしょうけど、それは言い訳にはならないしね」
紅さんには、棘縉さんの態度が自分の過去と重なったことを正直に話しておいてある。
「ほいさ、おーわりっ! さ、奴なら甲板にいると思うわ。行ってらっしゃい」
「……ありがとうございました」
お礼を言ってから、紅さんの部屋を出たわたしは甲板へ向かう。果たしてそこに、レンはいた。柵に手をやり、眼下の魔気の渦を見下ろしている。わたしは気まずさを振り払って、思い切ってレンに話しかけた。
「あの……レン、その……ごめん」
「………………」
「わたし、頭に血が上ると何しでかすかわかんないとこあって……」
「………………くっ」
「?」
「はははっ、全くだ。船から飛び降りたことといい、お前は突然度肝を抜くようなことをする」
「……怒って、ないの?」
「これしきのことで怒るほど、器が小さいつもりはない」
てっきり怒り心頭かと思っていたんだけど、意外にもレンは笑っていた。面白くて仕方ないといった様子だ。だけど、ふいに表情を真面目なものにすると、クルリとわたしのほうを向いてきた。
「だが、女が拳で語るのは歓迎しないな」
「なっ、だから男女差別は……」
「差別じゃない、区別だ。股を広げて座る女を良しとする者はいないだろう? それと同じだ」
「屁理屈……」
レンの展開する持論に、わたしは口の先を尖らせる。そんなわたしの様子にまたも笑うレンに、わたしはますます不機嫌な表情を深めたけれど、不思議と居心地の悪さは感じていなかった。その後もレンと一緒に甲板の柵に凭れていたわたしは、時々思い出し笑いをする彼に文句を言いつつ、他愛のない話を暫く続けた。
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