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 舞夜が階段を上っていく最中、上の階から轟音が聞こえてきた。

 何か凄く連続的な銃の音。

 一体、何があったのかと更に急いで上の階を目指す。

 その道中、何やら謎の大きなカプセルを見つけた。中には東王高校の制服を着た少年が眠っている。

「一体ここで何があったのよ」

 誰かに説明を求めたい気持ちでいっぱいの舞夜は先ほどの轟音の正体を確かめに行くべく、今は先を急いだ。


 現在出来ている最上階の近くまで差し掛かった時、階段を登りきった舞夜の目には信じがたい光景が飛び込んでくる。

 血を流して倒れる仲間の姿。

 荒波高校の制服を着た二人の見知らぬ女子もいるが、彼女達も倒れている。

「どういうこと、これは!」

 側に倒れている恋歌の体を揺さぶるが、反応はない。

 片腕が切断されて、更には体に切られたであろう彼女の手が突き刺さっている。

 その近くに倒れている朱音は心臓部分に穴が空いている。

 心、夜春、天音、マリア、凛子も皆がその場で血を流して動かなくなっている。

「ようやく来たのね」

 声が聞こえたのは奥の階段がある場所。東王高校の制服を着た金髪の少女立っている。

「お前が黒川海莉か!」

 彼女の手が真っ赤に染まっているのを見て、この惨事の犯人であることはすぐに分かった。

 舞夜の出した名前に対して彼女は声を出して笑う。

「相川舞夜、あなたを初めて見た時からこうなるんじゃないかと思ってたわ。私は姫島夜宵ひめじまやよい。海莉は私の恋人」

 初めて聞く名前に舞夜は黒川海莉が首謀ではないのかと問う。

 すると彼女は相変わらず笑うばかりであった。

「ええ、まあそんなところね。あなたも私が殺してあげる」

「なぜ、霊使いを殺す? 争わずにお互いを認知して、生きていけばそれでいいでしょう!」

 そうじゃない、と夜宵は首を横に振る。

「私は霊使いを殺したいんじゃない。人を殺したいの。そうしたら、あなた達のようにそれを邪魔してくるような存在がいるから、霊使いも殺す。それだけのことよ」

 それだけ、と簡単に言ってみせる彼女に舞夜は何も返す言葉がない。

 ただ、姫島夜宵は今まで出会ってきた人間の中で一番の危険人物であることが分かった。

 その時、小さく舞夜の名前を呼ぶ声が聞こえた。

 足元で倒れていたマリアが僅かに舞夜へ向けて手を差し出しているのを目の当たりにする。

「マリア! しっかりして! 必ず助けるから」

「舞夜……ケガしてるね……すぐに治すよ……」

 差し出されていた手を取ると、彼女がここに来る前に戦った諒花との傷が治癒されて更には疲労も取れた。

「舞夜……倒して、あの人を……」

 マリアの目が閉じられる。

 それから何度か彼女の名前を呼んでも、反応はなかった。

 舞夜はただ大声で泣き叫ぶ。

 涙を拭いて、立ち上がった彼女は最後の敵である姫島夜宵を指差す。

「姫島夜宵、あなたはこの相川舞夜が必ず、何があっても、死んでも倒す!」


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