第16話 最終章 1
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突如として現れた謎の少女を前に、残された恋歌と心、夜春は驚愕していた。
生身の人間の臓器を素手で取り出すなど、正気の沙汰ではない。
いや、この少女も霊使いに違いないことは分かっていたのだが、どうにも纏っている空気が今までの霊使い、あの黒川海莉にもない異様なものである。
いつまでも呆然としている訳にはいかず、恋歌だけは我に返り、すぐさまベル・スターの銃口を彼女に向けて撃った。
しかし、彼女の銃を握っていた手の肘から下が切り落とされていた。
悲鳴を上げる恋歌の耳元で、今目の前にいた少女が囁く。
「無駄よ。あなた達は全員死ぬ」
恋歌の胸には彼女の切られた手が突き刺さっていた。
どくどくと溢れ出てくる血が彼女の制服のシャツを赤く染めていく。
「れ、恋歌さん!」
「恋歌!」
心は大切な人を殺されたことに怒るよりも、恐怖でその場から逃げ出したい気持ちでいっぱいである。
ただ、周りの皆を残していくことはできない。
「あら、あなた凄く可愛い。あなただけ生かして、今日は一緒のベッドで寝ようかしら」
突如として理解のできない話を始めた彼女に向けて、心は四方から空気中の水分を固めて作った氷柱を突き刺す。
手応えがあった--ように見えたのは間違いであった。
金髪の少女の姿はそこになく、心の背後にある。
「残念だわ。あなたを殺すのは少し惜しい」
右手の指を槍のように尖らせて構える少女であったが、近くにいた夜春が瞬時に描いた固定機銃をその場で実体化させて、撃つ。
弾がなくなるまで轟音が響いて、砕けたコンクリートによる煙で周囲は何も見えない。
夜春がここまで感情的になることはあまりなかった。
目の前の惨事にどうすればいいのか分からなかったのだ。
「へえ、描いたものを実体化できるのね」
背後から聞こえた声に夜春は歯がガチガチと音がなるほどに口が震えていた。
「ねえ、私の仲間になるなら助けてあげましょうか? そこのあなたも」
夜春の背後から心にも声をかける。
「ふざけないで……あなたは朱音や恋歌を殺した……」
夜春は叫ぶでもなく静かにそう語った。
「残念ね。じゃあ、あなた達とのベッドインはなしということで」
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