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色海市の病院に舞夜達は駆け込んだ。
舞夜は着信履歴に真冬の番号があったため、折り返して電話をした。
すると、警察が電話に出たことで、彼女が大ケガをして病院に運ばれていることを知ったのだ。
「さっきここに運ばれた女の子! 久世真冬、いますよね!? 会わせてください!」
「今手術中です! こちらでお待ちください!」
受付の看護師に手術室の前まで連れて行かれた一行は、落ち着かない様子であった。
マリアはただ祈るように握り合わせた両手を額に当て泣いていた。
夜春も数時間前まで合っていた人物が危篤ということで、その顔から笑顔が消えていた。
「どうなってるのよ、舞夜! 今日あの子に会ってたんでしょう? 連絡もあったって!」
「私に言われてもわからないわよ! 夜春と二人で行ったけど、その時はおかしなことなんて何もなかった!」
激しく問い質す恋歌に舞夜も語気が強まる。
二人の間に凛子が割って入る。
「落ち着きなさい。まずはその占い師の女の子が助かるかの方が先決でしょう」
他の皆もただ黙って待つしかできなかった。
その時、手術室のランプが消えて扉が開いた。
中から担当医師と思しき男性が出てくる。
「皆さん、彼女のお知り合いの方ですか」
「ええ、そうです。容体は?」
凛子が一歩前へ出て彼と話す。
「出血が酷かったのですが、奇跡的に一命は取り留めました。ただ、意識が戻らず、体には大きなダメージが残っている状態です」
全員が一息ついたところで、奥から出て来たベッドに眠る真冬の姿を見て、胸が張り裂けそうな思いになった。
呼吸器をつけられ、何とか息をしている状態だ。
「マリア、真冬の傷を治して」
舞夜が耳打ちしたことで、彼女の頬にマリアが手を当てる。
しかし、それでも目を覚ますことはない。
「傷は完治しても、意識までは……。後は真冬さん次第としか」
病室へと運ばれていく彼女とすれ違いで今度は二人組のスーツを着た男性が歩いて来た。
「相川舞夜さんですね? 警視庁の者ですが、今回の事件のことでお話が」
他の皆は真冬の病室に行くこととなり、舞夜だけは二人の刑事と話をすることとなった。
場所を移動して、今は誰もいない病院の正面入り口に近い待合所に来た。
「被害者である久世真冬さんが発見された時、あなたに連絡を取ろうとしていた。失礼ですが、どういう関係で?」
「友人です。彼女は有名な占い師で、私も彼女に占ってもらう内に意気投合したので」
刑事は納得したようになるほど、と言って懐から何かを取り出した。
透明な袋に入れられたそれは、真冬が握っていたという血まみれのタロットカードであった。
カードの種類は”ワンドの8”。先ほど占ってもらった際に出ていたカード。
そのカードで舞夜は全てを理解した。
彼女を襲った人物は、間違いなく恋歌や朱音に力を与えたのと同一人物か、関係者だと。
「これも被害者の手に握られていたものです。鑑識に渡したところ、彼女と別にもう一つの指紋が見つかりました? 身元を今捜索中ですが、何か心当たりは?」
「彼女が占いで使ってたものです。それ以上のことは分かりません」
幾つかの質問に答えたところで、舞夜は解放され、真冬の病室へと向かった。
そこで待っていた全員に話をする。
「真冬は、私たちを襲ってくる敵にやられた。あの子の手には、あのタロットカードが握られていた」
「一体、何が狙いだって言うのよ! 真冬は私達の仲間じゃない! ただの友達なだけよ!」
「そこが問題じゃない。今は、誰が真冬をあんな目に合わせたかということだ」
興奮している恋歌を朱音が言葉で制止する。
「今日、彼女に会った時言ってた。謎の敵がもう攻めてくるって。これはその始まりで、真冬はその為に利用された」
その証拠に刑事の持っていたタロットカードには真冬とは別の指紋が付着している。
普通、殺すだけならわざわざ自分の証拠を残すようなことはしないだろう。
「犯人はわざと自分たちの存在を明かすつもりみたい。つまり、私達に勝負を挑んでも勝てるほどの自信がある。だから、これからはより一層用心しないと」
それ以上は誰も何も言わなかった。
舞夜が怒りに震えているのが分かったからだ。
自分たちに直接手を出すわけでもなく、関係のない人間が巻き込まれることの方が彼女の怒りを買うのに十分すぎるほどであった。
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