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二ヶ月前。夜春は定期的に病院に足を運んでいる。
彼女は気丈に振る舞っているが、常備薬がないと体を万全に保てないのだ。
その薬をもらいに来た際のこと。
待合所で呼ばれるのを待っていた時。暇つぶしにといつも持ち歩くスケッチブックに絵を描いていた。
この時には、既に『ライブドローイング』は彼女の中に芽生えていたが、単に絵を描きたいだけの時はその力を使わない。頭の中に思い描いたキャラクターの絵を完成させた。
「わぁー、おねえちゃんおえかきじょうずー!」
いつの間にやら隣に座っていた小さな女の子が、夜春の絵を見て嬉々としている。
「あったりまえじゃん! あーし、絵だけは得意だかんね!」
「ねえ、もっとかいて! かいて!」
褒められればついついノッてしまうのが彼女である。
それから女の子出したお題に沿って絵を恐ろしいスピードで描き上げる様は、その女の子にとって憧れでしかなかっただろう。
「そーいや、ちびっ子ちゃん。あなたお名前は?」
「ひなこ! おねーさんは?」
「ひなこ、可愛いお名前ね。あーしは夜春。ヨルハでもいいよ」
何で名前が二つあるのかと気になっている様子であったが、彼女の呼びやすい方で呼んでもらうことになった。
それから病院に足を運ぶのは、薬の為だけでなく、ひなこのお見舞いとして回数が増えた。
その内、彼女の母親と会う機会があり、話をした。
「いつもあの子に絵を描いてくださって、ありがとうございます。いつも喜んで私に見せてくれるんです」
「いやー、あんなのでよければいくらでも描きますから」
「あの子、今度大きな手術をするんです。それが私も不安なんですけど」
突然の話に夜春はその手術がいつかを聞いて、ある決心をした。
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