3

 舞夜と天音は色海の歩道を行く。先頭には夜春の姿があった。

 彼女の出した条件を満たす為、目的の場所というのに向かっていた。

「あーしからの条件は一つ。今絶賛製作中の作品があるんだけど、それを今日中に完成させたいの。あ、さっきの路上パフォーマンスは息抜きだったのね。それを手伝ってほしい」

 それで、今は彼女の作品というのを観に行くためにある場所へ向かっているのだ。

「あの彼女が時間のかかるって言うことは、相当な作品なんでしょうね」

「でも、私たち絵なんか描けないし。何の役に立つんだろ」

 十分ほど歩いたところで、これまた大きな広場についた。

「これが、今のあーしの作品よ」

 彼女の目の前にあるのは、聳え立つ壁。縦五メートル、横幅八メートルの巨大な壁であった。

 その四分の三はもう絵が描かれている。

「これを今日中に完成させたい。その為には二人の力が必要だと思ってね」

「私たち二人が? 何をすればいいの?」

 まずは舞夜に出された指示。

 ダンシングナイトの能力で夜春の行動をスピードアップすること。

 天音に出された指示。

 音楽があればより一層アイデアが乗るのも捗る。

「絵に関してはあーしが描くから大丈夫! 何とか今日中に完成できればそれでよし!」

「その前に教えて。何でこの絵を今日中に完成させなくちゃいけないのか」

 舞夜が理由を問うと、彼女の顔からゆっくりと笑みが消えた。

 しかし、教えてくれないわけではないようで、彼女は壁の反対側を指差した。そこにある建物の入り口には“色海総合病院”という文字が彫られていた。

「あそこの五階、真ん中の病室見える?」

 彼女の言う病室はカーテンが開いている。

「あそこの病室には今重い病で寝てる女の子がいるの。私があの子にあったのが今から二ヶ月前だった」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る