5
さらに翌日。
昨日逃げたことが拍車をかけ、リーダー格の女子はさらに怒っている。
「おい、朽木! お前ふざけんなよ!」
いつものトイレで怒号が響く。
扉に叩きつけられたまま、腕を首元にキツく押し当てられる。
「く、苦しい……や、めて……」
「口答えすんのか! お前なんか今度こそ殺してやる!」
「ちょ、ちょっと、さすがにやばいよ!」
「止めた方がいいんじゃないのか」
取り巻きの女子達もさすがに動揺を隠しきれない。
「どうして……私に……こんな……やめてよ……やめて……!」
そう心が苦しみながら叫んだ瞬間、彼女を掴んでいた女子の全身が氷で覆われた。
「え?」
周囲は咄嗟のことに状況を掴めないでいた。
だが、次第に床、天井へと冷気が広まり、凍り始めていく。
取り巻きの女子達は悲鳴を上げてその場から逃げて行った。
「どうして……やめて……」
彼女は自分が何をしたのかも分からぬままにその場からよろよろと歩き始めた。
心がいじめのリーダーを凍らせてから三十分後。
恋歌と朱音は凛子に連れられて岬川高校に到着した。
午後の授業を出なくてもいいように凛子が上手く書類の手配をしておいたと言うのだ。
「ここから強い霊の気配がすると思ったら、当たりのようね。恋歌、あなたの助けた女の子がいるの?」
「絶対います。あの時、あの子に触れた時の感覚に似ている」
岬川高校の校舎は全てが氷に包まれている。辺りの気温は六月にもなるのに酷く低い。
「とりあえず、気を付けてほしいのは中にいる一般人達の保護。凍らされた体を破壊しないようにして。取り返しがつかなくなる」
恋歌と朱音はそれぞれ自分の霊を出現させる。
正門を閉ざす氷の門を朱音のマジック・ボマーが破壊する。
周辺に人の気配はなく、ただ逃げ惑った後も見られないのは、全てが氷で支配されているからだろう。
「心ちゃん、どこにいるの!」
恋歌が叫んでも反応はない。教室のある廊下を通ると、休み時間中であろう生徒達がそのまま凍っていた。
「恐ろしい力ね。ここまでの広範囲で何もかも凍らせるほどの力」
「ただ制御ができてないだけってのも言えるけどな」
朱音は凍りついた全てを見ながら呟いた。
その時、窓から外を眺めた恋歌はグラウンドに人影を見つけた。
「あ、あれ! あれです! 心ちゃん!」
グラウンドの中央で立ち尽くす姿を見つけて、三人は急いだ。
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