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ファミレスからの帰り道。恋歌は地元の岬川駅で降りた。
学校は不良の溜まり場で授業もうるさくて聞けたものでもない為、真面目に勉強をしても疲れることがない。
ふと、駅前広場の端の方に視線がいった。
地元にある岬川高校の制服を来た数名の女子がいる。
ただ、それだけでないことはその女子達が自分と同じく派手な見た目をしているという点にプラスして、一人おとなしそうな女子がいるからだ。
「何やら怪しい雰囲気がするわね」
恋歌は一人呟いて、さり気なく彼女達に近寄ってみることにした。
彼女が近寄ったからというわけではないだろうが、おとなしいように見える女子が派手な見た目をした女子達に押されるようにして人気のない場所に向かって行く。
本格的にマズいと言える気配を察した。
薄暗い路地の中へ入って行く彼女達を建物の陰から覗く。
「あたしさあ、面白いこと見つけちゃったんだよねえ。しかもお金にもなること」
「え、なになに?」
壁際に追いやられる女子は怯えているのが見える。
「こいつを脱がしてその辺のおっさんに売りつけるの。こんな奴でもJKってだけでアホな男は買うっしょ」
笑いと賛同の声が上がったところで、リーダー格と思しき女子が端末を取り出して、周りに彼女の服を脱がすよう指示をした。
無理やり押さえつけ、嫌がる声を上げる女子。
そろそろかと恋歌は路地の入口に立った。
「あんた達、その辺でやめときなよ」
彼女が声をかけたことにより、女子達の手が止まり、視線も一気に恋歌へと向けられた。
「誰? あんた」
「名乗るほどの者じゃありませーん。それよりもいいのかなあ、こんなとこで。今の会話とか全部動画に録っちゃった」
嬉々とした声で端末を取り出してみせる。
「おい、何だよお前! いますぐそいつを消せ!」
掴みかかってくる取り巻きの一人を恋歌は軽々と交わし、足を引っ掛けてこかした。
こけた女子の頭を軽く踏みつける。
「ちょっと、荒っぽいことは好きじゃないのよ。いいから、その子離してあげなよ」
表情は真剣そのものだった。
彼女の空気に気圧されてか他の取り巻きはリーダー格にどうするか問う。
「行くわよ」
渋々といった様子で彼女達は立ち去って行く。頭を踏まれていた女子も解放されてすぐに後を追って行った。
「あ、あの」
弱々しい声が聞こえて、そちらを見やると、乱れていた制服を整えているおとなしめの女子がいた。
片目が隠れる程に伸びたボブカットの黒髪に薄い灯りに照らされる綺麗な目。その瞬間、何とも愛くるしい彼女の姿に恋歌は思わず顔が赤くなる。
「た、助けていただいて……ありがとうございます」
「いいよいいよ。別にそんな大したことじゃ」
お礼をさせてほしいと言った彼女は通学鞄から携帯端末を取り出して、メッセージアプリのアドレスを交換してほしいと述べた。
少しだけ考えた後、こんな可愛らしい女子と巡り会う機会もないだろうと思い、恋歌はメッセージを交換した。
「私、
「私は鬼怒山恋歌。よろしくね、心ちゃん!」
可愛い彼女の手を取って力強く握る。
どうも恋歌とは真逆に見えるが、二人は似た者同士であるとこの後気がつくことになる。
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