第9話 凍てついた世界


「あと二人ね」

 いつものようにファミレスに集合をかけた凛子が新しく加わったメンバー・七海天音を含む五人に言った。

「何ですか、急に」

「私は皆のように霊の力を悪用せず、正義に活かしてくれる人間を七人集めたいのよ」

「なんで七人なんですか?」

 舞夜とマリアが単純な疑問を持つ。

 スーツの懐から凛子は地図を取り出した。

 それは新たに七つの市が登録された東京の地図である。

「今は七つの市に分かれているこの場所だが、実はこの場所は霊使いが最も多い場所なんだ」

 よく見ると地図には赤い丸印が点々とつけられている。

「これは私たちの研究所が見つけた霊使い達だ。それぞれ、ウチの研究所で働いている者もいれば、犯罪者として収容またはその場で死んだ者も含めてな」

「こんなにいたのに私は気付かなかったのか」

 舞夜は霊使いが多いという言葉に自分が普段生活している中にも紛れていたのかと考える。

 それで、なぜ七人かと言うと、各市に一人ずつ強力な霊を使う人間をおいておけば、外部から来る霊使いへの抑止力、または凛子がすぐに向かえない時に対処できる時間が早くなるからだと言う。

「でも、それじゃ私と夜ノ森は荒波で被ってますよ?」

「それについてだけど、恋歌。あなたの住んでる場所は?」

 問われて、彼女はマリアの通う学校のある清蘭せいらん市と舞夜の暮らす矢嶋やじま市の間にある岬川みさきかわ市に住んでいると答える。

「恋歌、あなたには岬川市を担当してほしい。放課後だけで構わないから。それと、できればそこで新しい霊使いを見つけるのもお願いしたい」

「ええ、急に言われてもなあ。まあ、一つ目のはできますけど、二つ目のがなあ」

 恋歌は具合が悪そうに頭をかく。

「でも、何で急に七人必要だなんて」

 舞夜の問いに凛子はここ最近の謎の霊使いによる襲撃を話した。

 それは舞夜と朱音を襲った他にマリアと初めて会った際の船橋という男もそうである。

「私がいつでも助けにいけるわけじゃない。だから、各自で対応できる力をつけてほしい」

 舞夜は矢嶋市、マリアは清蘭市、恋歌は岬川市、朱音は荒波あらなみ市、天音は美山みやま市、凛子が東王ひがしおう市と担当を決めることにした。

「じゃあ、今日は解散だ。いつも学校帰りにすまないな」

 凛子が代金を支払う間、皆は店の前に出る。

「で、恋歌。岬川の霊使いは見つかりそうなの?」

 大きく背中を伸ばしていた恋歌に舞夜が声をかける。

「言われてもねえ、あたし地元の友達とかいないしなあ」

 言ってから、ハッとしたように彼女は両手を使ってあたふたとする。

「ああ、あれよ! 私、高校が離れてから全然遊んでないだけよ!」

「何をそんなに慌ててんだ? 誰も聞いてないぞ」

 朱音が一言、バッサリと言い捨てた。

「う、うるさいわね! ただ、言ってみただけよ!」

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