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 二人は側にあった誰もいない公園のブランコにそれぞれ座って、話すことにした。

 七海天音ななみあまねは中学の時、朱音のクラスメイトで、朱音にとっては数少ない友人の一人であった。

 中学を卒業してからはお互いに忙しく、連絡を取り合うこともなくなっていた。

「てか、何でここにいるの? もしかしてライブ見に来てくれたの?」

 先ほどとは打って変わって笑みを浮かべて聞いてくる天音を見て、朱音は少しだけ安堵する。

「たまたま知り合いがチケット持ってて誘われたからね。あんたがいるとは思ってもみなかったけど」

「いてもおかしくないでしょ。ずっとこれやってるんだし」

 七海は演奏に使っていたギターを指差す。そういえば、中学時代も音楽室でよくギターを練習していたことを朱音は思い出した。

「なあ、天音。嫌なら答えなくてもいいけど、あんたのバンド、活動上手くいってないのか?」

 朱音は先ほどのことが気がかりで彼女の悩みぐらいでも聞ければと考えていた。

 余計な心配であったかと、天音の表情に陰りが見えたことで思う。

 しかし、それでも彼女は苦笑して、投げ出した両足の靴先をくっつけて、開いてを繰り返して話す。

「さっきの見られてたか。別に上手くいってないわけじゃないの。ただ、私とあの子達は目指してるものが違うんだって、今更分かった感じかな」

「オーディションっていうのは?」

「毎年、高校生バンドを対象にメジャーデビューをかけたオーディションがあるの。一昨年、去年と応募したんだけどどっちもダメで。でも、今年は本当に自分たちでも分かるぐらいに演奏技術も上がってきたし、本気でメジャーデビューを目指せるかなって思ってたんだ」

 しかし、天音達本人が思っているだけで、確実というわけではない。他のメンバーの親などからすれば、受験勉強に精を出してほしいと考えるのが普通だろう。

「私はこのギターで、いつか大勢の前で自分の歌と演奏を聴いてほしいと思ってる。でも、それもここで終わりかな」

「諦めんのか? ずっとやってきたんだろ?」

「そりゃ、夢だよ。叶えたい。でも、私だけのわがままで皆を付き合わせるぐらいなら、止めておいた方がいい」

 本心でないことは朱音にも分かっていた。

 しかし、いくら自分が言った所で解決はしないだろう。

「久しぶりに会えてよかったよ。来週は出ないけど、ライブには行くから、朱音も来てよ」

「まあ、時間があればな。今日のも結構悪いライブじゃなかったし」

 天音は微笑して、大きく手を振ってから公園を離れていった。

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