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 朱音はライブハウスの裏手に回ってみる。

 そこは機材の搬入であったり、出演者が入る為の通路が設けられていた。

 本日の出演バンドが先ほどの観客と同じように出てきている最中である。 

 最後に出て来たのが先ほど、朱音と同じ中学であった少女がいるガールズバンドであった。

 壁から覗くようにして声をかけるタイミングを伺っていると、どうも穏やかではないような会話が聞こえてくる。

「何で!? 来週もここでライブあるんだよ!? 何で出ないの!?」

「いや、親がもうバンド活動は控えろって。私たち、今年受験じゃん? そろそろ勉強しないとまずいわけよ」

「それじゃ仕方ないよ。来週は休みってことにして、また落ち着いたら出るのでどう?」

「そんな……皆はこのバンドでやっていくんじゃないの? 私だけが張り切ってたってこと?」

 背中にかけていたギターを抱きかかえるように持ち替えたのはボーカルも務める彼女であった。

「いや、そんなつもりじゃないよ。ただ、私たちにもそれぞれ考えがあるの。だから、当分活動は休止して、進路が決まったらまたやろうよ?」

「今じゃないと意味がないの……。オーディション出られるのは今年が最後なんだよ?」

「それでも仕方ないよ。ごめんね、天音」

 三人は申し訳なさそうにその場を後にしたが、一人残された彼女だけは大粒の涙を目に浮かべていた。

 声をかけるにかけづらい状況になっていたが、考えた結果、朱音は出て行くことにした。

「ねえ、あんた。あたしのこと、覚えてる?」

 突然声をかけられたことに驚きつつも涙を袖で拭った彼女は、朱音の方を見た。

 朱音が薄く笑ってみせると、彼女は次第に気づいたかのように手を叩いた。

「あなた、朱音!? うわー、見た目が中学の時と全然違う!」

「そういうあんたも、全然違うじゃん。天音」

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