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「私は久世真冬くぜまふゆ。ここの占い師です」

「ま、まさかあなただったとは……今日はほんとツイてる!」

 一人テンションの上がる恋歌であったが、三人は色々と彼女の方が気になっている。

「頻繁に場所を移動してるって聞いてたけど、ここが家なの?」

「はい、ここは東王市の家なわけです」

「つまり、他の場所にも家を持っているってこと?」

「ええ。その日の気分で行きたい場所を決めます。まあ、大体のサイクルができるのでほとんどは決まった曜日にいますけど」

「占いの前に聞きたいんだが、どのぐらいかかるんだ?」

 舞夜、マリア、朱音が質問を終えたところで、真冬は目の前にある椅子と机のセットに座り、水晶玉を置いた。

「そうそう! 占いってどのぐらいかかるの? 安いコースと高いコースでやっぱり結果に差が出たりするの?」

「恋歌ってこんなに占い好きだった?」

「知らん、コイツとは学校では話さないしな」

 舞夜の問いに朱音は興味ないといった感じである。

 そこで真冬が切り出した。

「うちの占いは少し特殊でして、お金はいりません。ただ、私の出す課題をクリアしてもらえればそれでいいです」

「課題? どんなものですか?」

 マリアが聞くと、彼女は四人を順番に眺めてから、決まりましたとだけ言う。

「これから出す課題をクリアできたら、占います」

「分かりました! それで課題は!?」

「ひとつ、この課題は途中で止めることはできません。但し、皆さんが命を落とした場合は例外です」

 忠告のつもりで言った真冬の言葉が、全員に緊張を走らせる。

 先ほどまで気分が高揚していた恋歌も冷静に戻っていた。

「恋歌、何か嫌な予感がしてきた。もしかすると、敵かもしれない」

 舞夜は彼女の腕を引っ張り、耳打ちする。

「で、でも、まだ課題を聞いてないじゃない? それだけでも教えてもらえない?」

「課題を聞いて、やるかやらないかは決められます。では、先に課題を言いましょうか」

 真冬は小さな咳をして、ジッとまた四人を見た。

「最近話題となっている東王市にあるスイーツ店の“プリン”。これを十個買ってきてください」

 それを聞いて、四人はまた唖然とした。「プリン? なんだ、それでいいの?」

「はい。あーでも、急いでもらった方がいいです。その店、二十時には閉まるし、プリンも一日で作られるのには数に限りがあるでしょうから」

 マリアは端末で時間を確認する。

「今が十八時半、それってなんてお店なんですか?」

「それは自分で調べてください。その端末があるじゃないですか」

 言われた通りにマリアは東王市で人気の店を調べてみた。

 すると、ニュース記事が引っかかり、大体の目星はついた。

「ここからなら、徒歩で三十分。まだ間に合うよ。あとは十個あればそれで!」

「よし、行くわよ、皆!」

 勢いよくその場を後にした恋歌に続く朱音とマリア、しかし舞夜にだけ真冬が言う。

「気を付けてください。あなた達には今から数々の試練が訪れますから」

 やはりこの少女は何か怪しいと思ったが、先に行っている皆について行くため何も言い返さなかった。

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