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店を出てそれぞれ分かれて帰ろうとした時であった。

「ねえねえ、ちょっと皆に付き合ってほしい場所があるんだけど」

 恋歌が端末を片手に呼び止める。

「何、付き合ってほしい場所って」

 舞夜が訊くと、彼女は端末の画面を見せた。

 そこにはネットのニュース記事で大きく、『【噂】謎多き占いの館? 悩みを打ち明けて解決したという人が続出』とあった。

「これ、何か話題になってて、しかもこの東王市にあるらしいのよ。ちょっと行ってみない?」

「遊ぶのは構わないけど、気をつけなさいよ。今朝もニュースにあったでしょ?荒波高校の生徒がこの東王市で変死体として発見されたって」

 心臓を出された男子生徒と首の骨が折られた女子生徒の遺体が見つかったという話だ。

 勿論、同じ学校である恋歌と朱音は学校からの連絡で知っている。

 凛子だけは先に帰ったが、四人はその占いの館というのを探してみることにした。 

「何でも、この占いの館は場所がよく変わるって話なのよね。ただ、一度開いたら、一週間ぐらいはそこにいることもあるらしい」

「ちょっと、そんなんで本当に見つかるの? 大体、会って何を訊くつもり?」

「そりゃ、私たちにこの力を与えたのは誰かって話だろ。それと、敵は誰なのか」

「そんなこと、本当に分かるのかな」

 四人は一番最新の目撃情報があった場所へ向かってみた。

 しかし、そこはただの雑居ビルであった。恋歌の読んだ記事の通り、場所を移動してしまったのだろうか。

「ハズレみたいね。じゃ、もう帰る?」

「うーん、せっかく会えたら宝くじの当選番号でも占ってもらおうと思ったのに」

「さっきあたしの言ったことと全然関係ないじゃん」

 肩を落とした恋歌は俯いたまま一緒に歩き始めた。

 すると、誰かと肩をぶつけてしまう。

「あ、すみません。大丈夫ですか?」

 相手が落としたものを拾おうと下を見た恋歌は、それを手に取る。

 両手で持てるサイズのガラス玉。いや、それは水晶玉であった。

「どうも、ありがとうございます」

 ぶつかった相手は長い黒髪で顔が少し隠れている、舞夜達と同じ年の頃の少女であった。

「あ、いや割れてなくて良かった。ねえ、あなた占いとか好きなの? 水晶玉とか持ってるし」

「ええ、まあ。一応私も占いぐらいはできますから」

 その言葉に恋歌の目が踊っているのを残された三人は察していた。

 そして、次に言うであろう言葉も容易に想像がつく。

「ねえ、この占いの館って知ってる!?もし知ってたら、教えてほしいんだけど。知らなかったら、あなたに占ってほしい」

 無邪気な子どものような恋歌に対し、その少女は向けられた携帯端末の画面を見て、あー、と何か知っているような反応を見せた。

「知ってます、それ。良かったら案内しましょうか?」

「ほ、本当!? いやー、助かります!」

「まあ、ツイてたわね」

 四人は少女の後に続いて歩いて行く。

 彼女が行く場所は意外にも大きな通りで、人が行き交う場所であった。

 頻繁に場所を移動するような占いの館といのがこんな場所にあるのだろうかと疑問に思う舞夜達であったが、少女が足を止めた場所はやはり占いの館とは思えない小さな建物であった。

 左右を数階建てのビルに挟まれているその建物の扉を少女は躊躇なく開けて入る。

 と思えば、扉を抑えてこちらを振り向いた。

「どうぞ、ここがお探しされていた占いの館、私の家です」

 事も無げに言う彼女に対し、四人は驚きのあまり、呆然としていた。

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