第7話 占いの館-フォーチュンタロット-

舞夜が学校で襲われた次の日の放課後、全員の学校から最も近いとされる東王市のファミレスに集合していた。

「学校にまで襲ってくるとは、何者かはいよいよ私達の存在を恐れて消しにかかっているということだな。何よりも恐れないといけないのは一般人が巻き込まれることだ。霊の存在が何かのきっかけでバレたとすればそれこそ大問題になる」

 凛子の言葉にマリアは固唾を飲んだ。「対策としては私がいつでも駆けつけられるよう巡回しておくのが一番かもしれないな」

 ペインキラーは治したモノのエネルギーを攻撃に利用するが、蓄積されていない意味がない。

「なら、凛子さんの活動範囲を限定すれば二人の所に敵が来てもすぐ行ける確率が上がんじゃない?」

 恋歌の言葉の意味を舞夜が問う。

「あたしと夜ノ森だけ同じ学校ですから。二人いれば、敵が来たとしても対処できるというわけですよ」

「お前と協力なんてごめんだがな。まあ、別に助けはいらないさ。二人いれば、少しは安心だ」

 朱音の言葉には前よりも棘が少なく感じる。ほんのわずかでも、全員に協力するという意思の芽生えがあるのかもしれない。

「私は一人でも問題ないですよ。それに返り討ちにしたばっかで私の所に攻めてくるほど敵も頭は悪くないと思うし」

「じゃあ、私はしばらくの間、喜里川さんの周囲にいるとしよう。何かあれば知らせてくれ」

 解散の合図と共に皆は席を立って店の入口へと向かった。会計は年長の凛子持ち(経費)である。

 舞夜だけが名前を呼ばれて振り返った。

「あなた、私に隠してることないわよね? 敵を返り討ちにした。本当にそれだけよね?」

 妙に慎重な面持ちで質問をする彼女。舞夜は少しだけ間を空けて考えていた。何故そんなにも慎重なのかを。

「そうですよ。私は敵を倒しただけです」 

 嘘ではない。まったくもって嘘という訳ではない。

「そうか、変なことを聞いてすまなかった。もし、何かあったらまた教えてくれ」「それは、私自身に? それとも敵についてですか?」

 凛子はまっすぐに彼女の目を見つめ、「どっちもだ」と答えた。

 舞夜はダンシングナイトの新たな力の目覚め、『2nd Wave』のことを言わなかった。

 自分の手の内を明かすということは、相手にやられる確率を上げてしまうから。それは味方と分かるものでも同じ。

 どこから相手の耳に入るかはわからないのだ。

 しかし、凛子は感じ取っていた。舞夜の纏う“空気”が異様な気配を帯びている。何か変化があったのではないかと。敵に回したくない相手は、この中では彼女が一番だからだ。

 今の内に彼女を知っておく必要があると。

 しかし、二人共相手の詮索をしないということにしてその場を後にした。

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