story.3『転移』
…ていうかそもそも、だ。
「別の世界ってどこなんだ?この年で急に『別の世界に行こう☆』って言われて『ヤッタァ行く行くー❤︎』なんて言うやついねぇだろ。」
するとフィシャナは予想外、といった表情をしエルミアは"えー?"と残念そうに肩を下げる。
「あら…!楽しそうだと思いませんでしたの?異世界転移ですわよ?それも偶然じゃなく推薦の。」
「そぉやでぇ?うちらも別に好き勝手人あっちに連れてけるんちゃうんや。あんたは選ばれた特別な人間やねんで、喜びぃや!」
そりゃ俺なんかを特別な枠に入れようとしてくれてんだから有難いことなのかも知んねぇけどよ…
「で、でもよ…そうだよ、妹!俺の存在を残すってそんなの本当に出来んのかよ!?失敗しましたーなんてなったら俺は…。」
「うちが失敗なんかするか、アホ!」
怒られた。何故だ。
「…エルミアは指折りの魔導師ですの。その程度のことをミスするなんてありえませんわ。」
なるほど…てかそんな簡単なもんなのか…。
その後の説明によると…いや、その前にまずパラレルワールドを理解する必要がある。あいつらの解釈ではパラレルワールドはこの線(俺たちが今いる世界)と平行に進む別の線というイメージらしい。そのパラレルワールドにある俺の魂をコピーし、俺の肉体に貼り付ける…簡単に言うと
「(俺の魂だけ転移する)→(俺の肉体だけが残る)→(その肉体に俺が転移しなかった場合の俺の魂をコピペ)…ってイメージでいいのか?」
「うんうん、だいたい合ってるわ。」
エルミアが腕を組み頷く…機嫌はなおったみたいだな、プライドの高いやつはこれだから面倒だ。
「で、さっきも聞いたが曖昧に終わった別の世界ってどこっつー質問はどうなってんだ?」
…あれ、お二人さん?聞いてねぇよな?それどころか何か鞄から出してねぇか…?えっ何、何!?
「では仮転移始めますわよ?」
「おうっよろしくフィシャナー!」
「待てぇぇぇええええ!!!!」
こうして俺は仮転移を果たす。
青い空間をひたすら彷徨う。
外国の綺麗な海の底みたいな心洗われる色の空間をゆっくりと…傘をさしながら落下するような感覚。時折現れるフィシャナとエルミアは楽しそうに騒いでいるが俺は瞑想に近い状態だった。めっさ怖え。
「ひゃっほー!やっぱ転移の落下は楽しぃなぁ!」
「そうですわねっ!転移の上昇は吐き気がしますけれどこのためだと思えば耐えられると言うものですわー!」
両腕を上げくるくると回転しながら落ちて行く二人を何を思うこともなく眺めているとフィシャナがこちらを振り返った。
「…楽しくありませんの?ええと…あぁ、妹さんのことですわね。」
「っ…!」
図星だった。
咲夜が一人にならないかが心配なんじゃない。ただ、これからあいつが居ないということが漠然とした不安を俺の中に生んでいた。
俺たちの会話に気づきエルミアが近づいてきた。そして急に謝ってきた。
「ごめんな、センマ。」
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