第一章1『やめろ、もう謝るな!』と叫んだ夜。

俺は妹のスマホを手に自分の個人情報が載ったサイトをただ眺めていた。

 スクロールすればするほど趣味や特技、更には自分があまり意識した事が無い仕草や癖、日課までもが記載されていた。



「お兄ちゃん……いい?」



 妹は俺のスマホを手にしていて『監禁手伝います。二名限定後一人無料』のサイトが画面に映っていた。

 よく見ると名前記入欄に『白崎奈々』と書かれている。



「何で俺の個人情報流出してんの?」


 ちょっと強めの口調になってたのかして妹は「うぅ……」と嘆息した。



「なあ、俺に何を求めてる」



 正直怖い、このサイトの文面が明らか日本人とは思えないんだ。使い方が違う単語や時折中国語の様な見た事のない漢字が書き記されている。



「えいっ……!」

「おいっ!!」



 妹が俺のスマホを勝手に操作し『送信』ボタンを押すと画面が一気に真っ黒になる。



「これ、情報とか売られ……」

「ごめんなさい……ごめんなさい、」



 今日だけで妹から謝られたのは何度目だろうか。

 つい一昨日までは妹の部屋に入ってただけで『この変態、出てって』『一生来ないで』などと俺を除け者にした挙句『ななの視界に入ったら許さない』とまで言われていた、そんな仲だったはずだ。


 俺は少なからず妹の事は嫌いではない。昔はよく遊んだり一緒に寝たりお風呂に入ったり登校したり、二人で居る時間が多かった。

 俺が中学に上がった頃妹は変わった。素っ気ない態度を取られたり、一緒にお風呂に入らなくなったり……次第に距離が生まれていたんだが。

 今、何故か同じ布団、それも同じ枕で横になっている。



「もう謝るなよ、そんな姿見たくない」



 俺の恐怖心は次第に妹への憂懼に移り変わっていた。俺の方を向いて横寝してる妹の頭に手をポンと優しく置いた。



「お兄ちゃん、ごめんなさい……」



 謝りながら唸るような嗚咽の声を漏らして身悶える。そんな妹は見たくない、ただそれだけは確実に言える事だ。

 だからといって何でも許せる様な心の広さを俺は保有していない。



「説明してくれ。」



 俺の言葉にピクンと僅かに跳ね上がった。

 そして、俺の腕を強く抱擁しながら、



「あ、あのね、なな、お兄ちゃんと離れたくなくて、それで、離れちゃうのが怖くて、それから……」


 だんだん掠れて高くなり咽頭が微かに鳴る様な声を出しながら、途切れ途切れの言葉を発している妹。


「……何でもないの、もう……大丈夫だから、」


 何が大丈夫だか分からないが、少なくとも俺は大丈夫ではない。



「なあ、俺のスマホに打ち込みに来て打ち終わったら言い訳しようとするのって牽強付会もいい所じゃないか」


「なに?牽強付会けんきょうふかい……?」


「道理にかなわない事を自分の都合のいいように強引に理屈をこじつけるみたいな意味な、今お前がしてる事だ」


「……」


「牽強付会と言うよりは我田引水……ま、何が言いたいって言うと正直に話してくれって言いたいんだ」


「お、おこるもん、絶対おこるもんっ!」



 おい、さっきの態度はどうしたんだよ!?

 逆ギレっすか?

 前みたいに険悪的ではないんだが理不尽すぎるだろ。



「怒らねえよ」


「ほんとに?ほんとに怒らない……?」


「めんどくせえ!俺は何でこうなってるのか知りたいだけなんだ!」


「今、おこったもん……」


「あー!!お前そんな面倒臭い奴だったか!?」


「そんなこと……」



 俺は妹が分からない。

 俺の事をあんなに嫌ってた妹が何故俺の枕を使ってるのか。考えれば考える程分からない。



「……お兄ちゃんなんて、だ、だいっ……」



 少なからず下の階で寝てる父と母に聞こえるぐらいのボリュームで、さっきの震えた様な声が嘘だったかのように話し始める。



「だいっきらい!」


「今さら言うか、それ」


「あほ!だいっきらいだもんっ!」



 と言いつつ俺の腕をガッシリ掴んでるんだが、もうこの際どうでもいいや。

 それよりも重要なのはサイトの件。



「そろそろ話してくれねえか?」


「おこるもん、なな、お兄ちゃんに優しくされたい」


「どっちだよ!嫌いなんだろ!?」


 俺がツッコミを軽く挟むと、


「この鈍感……」と妹は小さな声で呟いた。




 そんな会話が十分ほど続いて、漸く妹の口から説明が始まる。

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妹を監禁しながら妹に監禁されてる俺と妹の監禁生活♡ ねる @catmimi

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