第一章『妹が感じる愛』

プロローグ『ま、事の発端はテレビ見たことだったんだ』

寝付けない……。

 寝れないからスマホを弄ってネットサーフィンする事ってたまにあるよね。


 時刻は深夜一時を回っていた。まあ学校に行ってない俺にとって無理に寝ようとしなくて良い訳で、俺は電気を付けながら適当に調べていた。

 今日、夜の二十一時ぐらいに放送されていた『監禁生徒会』という映画について調べる事にした。

 映画の内容は学園の生徒全員を小さな檻に閉じ込めて衰弱死するのを生徒会が楽しむという内容だった。


 スマホに『監禁』まで打ち込むと検索予測に『監禁 やり方』『監禁 バレない』など出てきて、そっちの方が興味をそそられた。

 別に監禁をバレずやる方法など知った所でって話にだし、そもそもネットにそんな情報載ってる訳ないだろ。

 そう考えながら数十分調べていたが、やはりネタや漫画のワンシーンについて書かれたブログしか無かった。


 そろそろ飽きてきたなぁ、ゲームするか、それとも寝るか……と考えながら適当にスマホの画面をポチらせていると、



『監禁手伝います。二名限定無料』と書かれた如何にも胡散臭いサイトがあった。

 面白そうだったので俺はそのサイトに入っていく。

 サイトトップページが真っ黒で文字が緑や赤。病んでる人が作ったサイトなのかな?と思いつつ、 どうせ暇だからという理由でポチポチ進んでいった。



 ____




 二名限定無料で監禁させたい相手をバレずに出来ちゃいます。

 三人目以降は1500万円〜1億円程かかってきます。


(_______)ここに相手の名前をフルネーム、或いは普段呼んでいるアダ名を書いてね。


 それだけで構いません。

 痛い事や苦しい事は一切なく、純粋に監禁したい相手を監視するサービスになってます。



【送信】



 _______




 あ、これウイルス系のサイトか?と思った俺はサイトを閉じる事にした。

 閉じようとしたその時、文字が変わった。


『二名限定』が『二名限定、後一人』に変わったのだ。

 この手のサイトは何度か見た事がある。

 多分、一度サイトを閉じてからもう一回開けば二名限定に戻ってるはずだ。


 一度閉じて開いたが『二名限定、後一人』のままだった。

 これってマジなやつなんじゃね?と俺が考えていると、廊下を歩く足音が聞こえてきた。




 コンコン……




 こんな時間に俺の部屋がノックされた。

 お母さんかお父さん、或いは妹の誰かだろう。



「お兄ちゃん……こわい、の、部屋にいれて?」



 妹だ、まあ『お兄ちゃん』と呼んでる時点で……ってええええええええおおおおええ!!?!


 今なんて言った?いや、待ってくれ!何に待つんだ!?いや、俺の思考だ!ちがう!そうじゃないっっ!!



「お前今なんつった!?」



 夜中だと言うことは分かってるが声を出してしまった。決して大声ではないが夜中にしては大きすぎる声だ。



「は、はやく……お兄ちゃんにぎゅってされたい、こわいの……」



 怖い夢でも見たんだろうか?

 でも、妹が俺の部屋に来るなんて事有り得るのか?



「う、うむ、わかった。開いてるから入っていいよ」



 怖がってる妹を無視するわけにはいかないから、部屋の中へ入れた。

 もう深夜二時前だ、妹は明日学校がある。早く寝かしつけてやろう、そう思ってた。


 ガチャリ、という扉の開く音がした。

 妹が真っ白なモフモフパジャマを着て自分の枕を片手に部屋へ入ってくる。



 俯いて顔を見せないが曇った様な重い足取りで近付いて俺に若干怯えながら言った。



「ごめんなさい……お兄ちゃん」




 何に対して謝ってるんだ?こんな時間に押しかけた事か?

 妹の様子が明らかに可笑しいのは俺を『お兄ちゃん』と呼んでる所から感じた。



「何があったんだ?」



 俺がそう聞くと妹は初めて顔を上げた。目の下が真っ赤に腫れ上がっている。

 まさかだとは思うが、失恋とかしたのだろうか。などと考えていると妹は話を始めた。



「お兄ちゃん、監禁しちゃったの」

「は?」



 多分だが、俺の反応は至って正常だと思う。

 最近は目を合わせることすら減っていたあの妹からそんな言葉が出てきたんだ。

『お兄ちゃんを監禁した』とか『お兄ちゃん、○○くんを監禁した』という誰を監禁したという情報が抜けていた。



「あの……ぎゅぅ、して」

「うん?話が見えねえぞ」



 妹は俺が寝そべっているベッドに入ってきて俺の枕に頭を乗せた。

 狭すぎるし密着し過ぎている、これはダメだ……社会的に考えて高校生の兄と中学生の妹が同じ布団同じ枕で寝るなんて事は、可笑しい。



「親に見つかったら、やべえから出てく……」という俺の声を遮りながら妹のスマホを俺に見せてきた。



「これ、これ見て、ほしい……」



 スマホを除くと『監禁手伝います。二名限定後一人無料』と書かれたサイトの登録ページだった。


「ごめんなさい……」


 妹はもう一回謝ったが、俺の耳には入ってこなかった。その画面には『白崎涼(しらさきりょう)』つまり俺の名前が書いてあり、名前の下には生年月日、住所、メールアドレス、電話番号、出身地、学校名、血液型……等々俺の個人情報が記載されて最後には、



『午前五時に監禁実行します』




 と書かれていた。


 いくら何でもネットに個人情報が載っているので俺は鳥肌が立った。

 妹は俺の腕を掴んでいたが、振り払う余裕がない。



「お兄ちゃん、あのね、ななを監禁してほしい……お兄ちゃんと離れ離れになるのは、やなの……」



 妹が何のことを言ってるのか、ようやく理解出来た。

 つまりこれはーーあのサイトに俺の名前を記載した、という事だ。

 だけど名前を記載しただけで個人情報ダダ漏れになるってのが理解出来ないんだが。



「だからね、ななの名前いれてほしい……こわいの、だって、だって……知らない人と同じ部屋になるかもしれないから」



 はい、そうですかと言えるような物では無かったし簡単に理解出来る物でも無かったが、奈々は俺のスマホを手に操作を進めていた。



 俺はまだ気付かない。

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