15. ーside 国彦ー オアズケ
れえの身体から力が抜けて
それどころか、長い幼馴染期間の中で一度も見た事ない表情で自分から俺を誘ったり
俺だけを求めて
身体を許して
誰も知らないれえを 俺だけが 独占してる
そんな怖くなる程の優越感と快楽で何度も身体を重ねた。
その間だけは驚くほど従順になって俺の全てを受け入れてしまうれえが
いっそ不憫なくらい愛おしい。
れえの身体が震える度流れ込んでくる感情が自分と同じもので、まるで本当に一つの身体を共有しているみたいな一体感を感じる。
れえの身体から出てしまうと、薄ら寒くてどこか所在なくて、俺はいつも事が終わってもしばらくはれえを抱き込んだままその体温や匂いを感じた。
当のれえも、最近は嫌がるどころか抱き込まれたまま、俺の胸元に額を押し付けたり、ぎゅっと抱きついて離れようとはしなくなった。
あまりに幸せで
れえも同じ気持ちなんだと、そう思っていた
そんな蜜月にも近い日常が続いた8月のある日
れえが突然、こんな事を言い始めた。
「しばらく、キスとか…それ以上しない」
屋上入口の軒下で並んで昼飯食べてる最中、そう言われなんでか聞いても
れえはかたくなに「なんでも」とだけ言って喋るのをやめてしまった。
れえ自身がそんなこと言ってる自分を恥ずかしく思ったのか、俺に見られないように顔を背けて、悟られまいと必死にパンを頬張ってる。
でも、耳まで真っ赤にしてんの見えてるし
こんなんされたらいじめたくなる
背けたそのれえの首元をわざと不意にぬぐってやると、れえはびくりと背を震わせて、おおよそ学校で聞いたことない声で小さく鳴いた。
ダイレクトにクる掠れた甘い声だ。
自分の声にはっとしたれえは、それでも気づかない振りして完全に背を向けて俺から少し距離をとるように、じりりと体を動かした。
真昼間の日陰は少ない。
俺はれえが遠ざかった分どころか、もうれえの耳元に口触れる位ぐっと身を乗り出した。俺が近づいたのを感じておびえるように固まったれえの様子をしばらく楽しんでたけど、
それから我慢できなくて後ろ髪に口をつけた。
「あつい。…近寄んな」
そうれえに冷たく突き放されても、無視して抱き込むように腹に腕をまわす。
れえをもっと混乱させてやりたかった。
「理由言え」
「ば…や、め」
「や?触られんのが嫌なの?」
俺に背を向けたままれえは二度小さく頷いた。
「なんで」
そういいながら、俺はもうれえをしっかり後ろから抱き込んで、その表情を覗きこんだ。
凶悪だ
頬上気して、息も荒いし
きらきら光る瞳が泣きそうなほど潤んで
しっとり汗ばんだ体から力抜けて、体重俺に預けて
ぜんぜん、やだっつう顔に見えない
むしろ…
「だめ、だ、がっこ」
当たり前みたいに近づけた唇をれえに強くさえぎられた。睨み付けるれえの表情すら劣情誘って、あーあ…俺はほんとに重症だ。
「・・・うん、でもお前今も、すげえいい顔してんのに、なんでしたくなくなったのれえ」
「したく、ないわけ、じゃ」
「じゃなんだよ。誰かになんか言われたか?」
「・・・」
「昨日、すきすきーくにひこっつってたのになんで」
「い、言ってない」
「言ってただろ」
「違う!」
「…違うの。あっそ。わかった。」
俺はれえから体を離した。
意図的に少し不機嫌な声で離れた。
背を向けてパンを頬張るとれえがどういう態度をとるか、もう俺にはわかっていたからだ。
「…くに」
背中でれえが呼んでるけど振り向いてやらない。
「…、ごめん」
「……」
「くに、国彦」
ああ たまんねえ
最近はこれが楽しくて俺もわざとこうゆうことしてしまうけど
れえは不意に俺を遠ざけては、遠ざかった俺に必死に自分から近寄ってくる。
近寄ってくるどころかさっきよりもっと、自分から距離を近づけて甘える。
この一連が、お決まりのパターン化していた。
「お前、それわざとしてるでしょ」
「?してない。やめろ、キス…しないて言った」
「…無理。なあ、かわいすぎだろれえ…すげえ好き」
「…、…んン」
がっちゃーん☆
派手な音がして屋上入口の扉が開いた。
聞きなれた声が屋上中に響く。
「やっぴっぴーーーー!!!!おふたりさん元気してるーーー!!??」
身を離す余裕もなくれえとふたりその声の主を呆然と眺めた。
「……」
「……川瀬」
「…あ…毎度ほんとごめんね。続けて続けて。」
「て、続けられるかーーー!!!」
「れーちゃんどしたのよ。イライラして。…生理?」
「…ッ」
「おい…川瀬」
やめて、ほんと今れえ繊細んなってるから
て目線で川瀬にメッってやってると、れえがこの展開に耐えきれず、おもむろに立ち上がると、勢いよく扉を開けそのまま階段を駆け下って行った。
「れーちゃんおこっちゃったね」
「そら怒るだろ」
「やっばいなあ」
「…なに」
「なんか俺のせいでヘンな事になってないといいなと思って」
「あ?」
「なんでもなーい」
「いや、明らかになんでもなくねーだろ」
「あ、やっぱなんかあった?」
「あった」
「ごめん。今朝れーちゃんに会って最近妙に可愛くなったなあて、やっぱいいエッチすると色っぽくなるもんなのって言ったの。そしたらめちゃくちゃ赤面してキレられてさ」
「……」
「それがあんまりかわいー反応で、俺イラッとしちゃって、あんまり突っ込まれてイッてたら背え延びなくなるよって言ったの。俺よりもっと女の子みたいにかわいーくなっちゃうんだよーって言ったら、なんか今度は顔青くして逃げてった」
それだ
あー、どうするか。
俺は残ったパンを口にほおりこんだ。
放課後、
このところ一緒に帰寮していた俺の元に「先に帰る」とれえからの連絡があり
俺が寮部屋に着いた頃には、もうれえは部屋着に着替えてゲームをしていた。
俺がシャワーを浴びていた間もずっとTV画面に夢中だ。
シャワーから出た俺が無遠慮にれえの隣に陣取る。
しばらく無言でゲーム画面を眺めていた。
「それ、一回上、登るんじゃねえの?」
「ん、あ、…そっか。ここ登れるんだった」
「あ、でもダメだ、一回ダッシュして…」
「ダッシュってどうやんの」
「貸してみ」
れえからコントローラを借りてゲームを進める。
ゲームに集中してたけど、隣にいたれえが少し逃れるように俺から距離をとったのがわかった。
警戒するようにぎゅっと膝をかかえている。
「れ…」
「触ったら絶交する」
いや絶交て、
ああ、こまった
ゲームにもう集中できなくなった
「川瀬が言ってた事なら気にすんな。からかっただけだ」
「・・・・・・」
「れーえ?」
「背、縮んでるし、声も変わんなくなったし、身体・・・変なんだも」
あ、声震えてる。泣きそうだ
「や、縮みやしねーだろ。変てなに?調子悪いのか?変じゃねえじゃん。なんでそう思うの」
「・・・・・・わかんね」
「れえ」
俺はもう、ゲームのクリアはあきらめて、コントローラから手を離した。
その手でれえを抱き込んだ。
「ッ!!」
「これくらいいいだろ、なんもしない」
「…、…」
腕の中でれえは抵抗せず、それでもどこかいつもよりそわそわと小さく身体を動かしていた。
鼓動が伝わってくる
俺自身も、どこか居心地の悪いような妙な心持ちが少し和らいだ気がした。
しばらくそうしてるうちに腕の中から小さく何か聞こえた気がして、俺はれえの口元に耳を近づけた。
「何」
「これ、…すき。くに、」
「………」
「ぎゅってすんの…きもちい…」
こうゆう時になんで甘えた声で俺を誘うの
子供みたいに身体を委ねんの
たまらなくて、耳元に口を付けた。
れえの身体が弾んだ。
「あ、…あ、ダメ、だって。イヤだ!!」
どんと胸を押されて突き離された。
「ヘンな、触り方すんな」
オッケーだと思ったら、ぜんぜん大丈夫じゃなかった
生殺し…って言葉知ってんのかな
ああ、触りてー…
触りたいどころか、なかせたい、よくして感じさせたい
どうしょうもなく項垂れてたら、れえの気配がすぐ近くまで寄ってきた。
目線を上げたら少し心配そうに俺を見ていた。
「おこった?」
「…怒んねえよ」
「…、…す…きだよ」
れえ自身もその想いをもてあましてるのが伝わってきた
れえの頬の涙を拭っても拭っても涙が溢れた。
「頭ん中、ぐるぐるしてる。どうしたらいか…わかんないんだ」
「れえなでて」
俺はそう言うと目つぶって、れえの方に額を向けた。
少し間が空いて戸惑ったように、れえの手のひらが俺の額を優しく撫でる。
そっと触れた手のひらが、優しくてあたたかい。
じんわりと伝わるその愛おしさに、
俺は、ぎゅっとれえの胴周りに腕をまわして、れえの胸に顔をうずめた。
「ああ…すげえイイ」
「くに…俺」
「うん、もうわかった。大丈夫だかられえ」
「…ン、」
本当は
言葉にならない想いを持て余しているのは俺も同じだった。
気持ちが溢れすぎて目に見える行動にばかり注視して、むしろ言葉に出来なかったのは俺の方だ。
だから何度も何度もれえと身体を繋げたし
その時だけは得も言われぬ安心感で心すら繋がれる気がした。
好きという言葉では、もう到底おさまらなくて
もどかしくて欲望に感情をいつもシフトさせていただけだ
それでも
れえの心で何が引っかかっているのか
そんなことはれえにしかわからない
無理強いしたら壊しそうで
俺は
れえをできるだけ優しく抱き込んだ。
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