第7話
いつものように私は自分の庭に行くと、すでにあの少女が椅子に座っていた。私がいつも座っている方の椅子だった。少女は私を見ると怯えたように素早く立ち上がり、直ぐに白い椅子へ移った。少女はその後私をものすごく怯えた目で見つめ続けた。
「別にいいんだよ」
私はそんな少女に言った。だが、そんな言葉に関係なく少女は怯え続けた。
ある日私が、遅い昼食にパンを食べていると、少女がいつものようにふらふらとやって
来た。私はパンを一つ少女に勧めてみた。何の変哲もないスーパーでよく見かける小さなバターロールだった。
少女はそれを受け取ると、あっという間に平らげてしまった。私はもう一つ渡した。それも少女はあっという間に平らげてしまった。私は袋ごと少女に渡した。少女はそれもあっという間に全部平らげてしまった。まるで空っぽの空間に、何か得体のしれない強い吸引力で吸い込まれていくような食べっぷりだった。
それから私は、買い物をする時、ふと少女の事を考えるようになった。私が絶対飲まないジュースを買い、お菓子も買うようになった。
何をするでもなく今日も少女は私の近くをうろうろしていた。椅子に座って私の仕事を眺めていたり、マイケルが来たらそれを撫でたり、時には森の方へ行って一人手にした木の枝を振り回したり、草をいじったり、虫を捕まえたり、少女は一人私の周囲で何かして遊んでいた。
なんとなく周囲に少女がいて、マイケルがいて、という感覚が日常になり始めていた。いなければいないでさして気にもならなかったが、いたらいたでそれはそれでやはり気にもならなくなっていた。
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