第3話 自分の葬式に出る
霊になって、しばらくたつと、少しずつ、地上にいた頃の記憶や意識は薄れてくる。
ただ、地上にいた頃よりも、むしろ安楽だ。しかも、魂はどこにでも行けるのだ。
でも、地上にいた頃のような、食欲、物欲、性欲、名誉欲みたいなものはなくなっていて、そのせいか、あれを見たいとか、あそこに行きたい、というのはあまりないのだ。
それでも、まだ、下界のころの意識も引きずっていたし、そもそもやることがない。
それで、自分の葬式に出てみることにした。
実家の近くの葬儀場で、自分の葬式をやっていた。
自分が生きていた頃は、自分が死んだら葬式にどれくらい人が来てくれるのだろうか、なんて想像することもあったが、今となっては、それほど興味はない。
葬儀場では、見慣れない親戚、大学の同級生など意外に沢山の人が来ていた。
大げさに悲しがる人がいる。えーっと、だれだっけ?たしか大学の同級生。それほど親しい奴じゃなかったよな。自分が人情家だってアピールしているのか。
そもそも、人が亡くなって、驚く人は多いが、本当に悲しむ人というのは少ない。
俺はそういうもんだと思うし、むしろ親しい人が亡くなって、悲しんでいる人に言ってあげたい。
「俺はここにいるから、そんなに悲しまないで。」
地上にいた頃の人間に対する興味は薄れているが、それでもどうしても気になる人がいた。
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