2018.11

11.5「alice in rainyland」#22



「あれは何かしら。ねえあれは何」

「あれの本は読んだことがないんだね」

「知らないわ。あれは何!」

風の向こうに、弧を描く七色の光が幾筋も浮かんでいた。風の音に混ざって大量の水が落ちる音が響く。七色の弧の下で、湖が途絶えていた。巨大な半径の滝は、遥かに霞むこの国の果てへ続いていた。





帆を畳もうとマストに登るチェシャ。強風で

上手くいかない。私は舵を全開に切る。間に

合わない。船ごと落ちて行く。滝はとても深

い。途中に光がいくつも浮かんでいる。あれ

は、虹だ。チェシャに伝えようとマストを見

下ろしたけれど、そこに彼の姿はなかった。

船はマストを下にして虹の中を落ち続けた。



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