11.6「alice in rainyland」#23



墜ちて、墜ちて、墜ちて。こんな場面を本で

読んだことがある。見たことがないものが虹

に映っていた。私が読んだ本には、虹に何か

が映るなんて書いてなかったけれど。あの四

角い機械はラジオだ。あの建物は天体観測所

。あの、雲に向かって昇っていく風船はなん

だろう。ひどく長い時間、墜ち続けている。





墜ちる船は次第に速度を落とし、静かに着水

した。滝は豪雨に変わった。もう虹は見えな

い。雲が重く暗い。チェシャはどこにもいな

かった。雨が弱まりまた風が吹いた。帆を張

り直すと、風が島につれていった。光を増し

た雲が、夕暮れの色を見せる。風の月。風曜

日。近づく港に静かな雨が降り注いでいる。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る