12.25「alice in rainyland」#17




座っている宿屋を見上げながら、父や母も放

っておくとこんなに大きくなるのだろうかと

考えた。私がいたところでは、大きいと言っ

ても7フィートにも満たない大人しかいなか

った。私の身長は5フィートを超えたところ

。チェシャは耳の分だけ私よりも背が高い。

私はあと数インチ伸びたらいいのだけれど。





風が宿屋の前の花を揺らした。チェシャが湖

の方から歩いてくる。何匹もの魚を抱えて。

雲が暗くなり始めると、次第に風が止み、靄

が立ち込めた。靄なんて珍しい、船出は靄が

晴れるまで待ったらどうだ。宿屋はそう言う

けれど、私には見慣れた景色だった。ただ靄

に霞む花々は、息を呑むほどに美しかった。




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