11.10「alice in rainyland」#9
近づくと、乗っているのは男の子だとわかっ
た。私に気づいて、こちらを見て待っていた
。ボートに手をかけると引き上げてくれた。
灰色の耳、白い肌。雲を映したような色の髪
が微かな風に揺れた。風が出るなんて。ペリ
ドッドの右目。タンザナイトの左目。笑う口
元に猫の牙。でも顔つきは人のものだった。
ぴんと立てたしっぽの先が、少しこちらに向
いた。銀色と濃灰色の縞々のしっぽ。あの島
のことはよくわからないけれど、まだ修練を
している歳ではないだろうか。彼の手は私の
手より大きくて、同じ形をしていた。私が座
ると握っていた手を離した。濡れたブーツを
脱いだ。同じ形の裸足が並ぶ。彼も座った。
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