アメコミの釵のツッコミに、ツッコミます!

 今回のお題はサイについての悩み・・・というより雑談です。マイナーな武器ですし、サイと聞いてピンとこない方も居ると思います。


 どんな物かと言うと、別名、南蛮十手と言われるように、十手の様に棒に付いた鉤状の鍔の部分で、武器を絡め取ったりする武器なのですが。その鉤が両側にあり、鍵の幅も十手より広くなっていて相手の腕を捉えたりの出来るフォークの様な形の武器です。


 琉球古武術で使われる武器ですが、アメリカン・コミックでは忍者の武器として扱われていたりして(昔のニンジャ映画の影響の様です)それなりに人気の武器なのですが、日本の作品ではあまり見ないですね。


 その釵を持ったアメコミキャラクターは、個性を出す為か持ち方が独特で、よく「持ち方が違うだろ」とツッコまれていまいます。ですがそのツッコミは琉球古武術の扱い方を基準にしたもので、日本以外の国の釵の扱い方は考慮されていない物が目だつ気がします。釵を持つアメコミキャラにはそもそも日本人でもニンジャですらない事も有りますし。その持ち方は実は間違ってはいないか、間違ってるけど元ネタは存在してたりする事が有ります。


 釵は日本(琉球)だけの武器ではなく、いくつかの似た武器が存在し、それぞれ扱い方は異なっています。中国には鉄尺(鐵尺)や筆架叉。インドネシアにはテキピtekpiがあります。


 その釵の仲間から中国とインドネシアの物を参考に、釵の持ち方に対するツッコミに、ツッコミを入れたいと思います。(色んな名前がありますが、ややこしいので釵で出来るだけ統一します)





 まず最初はコレ


ツッコミその1{釵は翼が横に広げる様に持つ}


 よくとは釵の横に飛び出た鉤の部分。琉球古武術ではこれを横にして、親指をその間に乗せて持つ、パリングダガーの様な持ち方をします。左右に鉤があるので相手の攻撃を左右どちらでもさばく事が出来、防御に向いてます。


 ですがアメコミキャラは釵を持つ時に、この翼を横ではなく縦に持ってる事があります(片方の翼が前に、もう片方は自分の方を向いている様な持ち方です)。この縦に持つのは琉球古武術ではよく間違った持ち方とされますが、インドネシアは横でも縦でも使い。中国の使い方だと縦に持つ事の方が多く、絶対に間違った持ち方と言う訳ではない様です。


 中国武術では縦持ちが目立つので、中国人キャラが琉球古武術の様に釵の翼を横にしてメインに使っていたら、むしろおかしな表現になるかと思います。(古武術の知識がある方からのツッコミ対策で、日本人が見るのを前提で琉球古武術に合わせて横に持たせるのも手ではありますが)


 縦に持つ時は親指を後ろの翼の下置いて持ったり(今売られている中国製の釵は柄が長い物が多いのですが、この持ち方を想定しているから?)。親指は立てずにグーの様にして持ったりもしてます


 古武術経験者の方はグーだと「それじゃ翼で相手の武器を捕らえても力が入らないのでは?」と疑問に思われるかと思いますが、中国の筆架叉などは木製の太い柄が付いていてしっかり握れるので力が入りますし、そうでない釵でもグー持ちでもしっかり握る事は出来ます。


 一例を言いますと。まずお手元の釵を親指を立てずに、縦に深く持ってみましょう(え、釵なんて無い? そう言う人は読むだけで我慢してください)、そうしたら人差し指の力を少し緩めて、前の翼を指の第二関節辺りに来る様にし、後ろの翼を人差し指と親指の付け根の間に沈める様に持つとグーでも力が入ります。深く握る分、受け止めた武器が近くに来るのでそこは留意しなければなりませんが。


 と言う訳で縦に持ていても間違いではありません。では次。


ツッコミその2{翼に人差し指をかけると危ない}


 これも琉球古武術では見ない持ち方ですね。理由は単純で、相手の武器をを受ける翼に人差し指を引っかけたら、攻撃を受けた時に指に相手の武器が直撃する危険があるからです。しかし中国、インドネシア双方にこの危ないとされる持ち方があります。


 別の武器だと、西洋の片手剣の棒鍔に人差し指を引っかけて使う持ち方がありますが、もってる中に剣が手の中で回ってしまうのを防ぐ為だそうです。(もちろん指が危険なので、後に棒鍔の前にフィンガーリングと言うパーツがくっ付きました)


 さて、釵でのこの持ち方をする利点ですが、物打ち(この場合、釵の真ん中の長い部分)で打つ際に翼が横のになってる持ち方より、縦になっていた方が翼の重量が乗り、効率よく打撃できるので打つだけなら有利なんです。さらに人差し指を絡める事により釵が手の中で回転するのを抑えてブレを軽減してさらに効率を上げられます。


 さらにブレを抑える事で釵の先をコントロールし易くなるので突きにも有効です。防御力を犠牲にした攻撃的な持ち方になります。自分が有利になる様に立ち回らなければならないし、防御し辛いしで大変ですが、鍔の無い短棒と思えばいける?


 次はその更に指をかける持ち方の変形もよくアメコミでは見られます。


ツッコミその3{人差し指と中指をそれぞれ両翼にかける}


 かなり変わった持ち方です。アメコミではこれで突いたりしてるのですが、間違いなく突きには向かないでしょう(ものは試しとやってみたら薬指に激痛が・・・、安定感も無いし)、プッシュダガーというナイフからの勝手なイメージで突いてるのだと思います。


 ですが突きに適さないだけで全くのデタラメではありません。ぼう動画サイトで海外の方が、この持ち方でクルクルと釵を回している動画があったりしますが、アレはインドネシアの使い方です。


 この持ち方も琉球古武術には無い・・・・と思っていたのですがあった様です。古本屋で買ったヌンチャク・サイについて書かれた本( 愛隆堂の物で、他の武器術とまとめた新装版が今でも売られています)で、浜比嘉の釵の写真でこの持ち方を一回だけしてました。


 その本の中では逆手(釵の独特の持ち方で、親指と人差し指の間に翼を挟んで握り、物打ちを前腕に沿う様に持つ)からの振り出して打って本手持ちになり、そこからさらに例の持ち方をして一回転させ更に打ち込む技でした。突きではなく打つ技だったみたいです。


 ですが他で浜比嘉の釵を調べても、この持ち方をする部分が他の動きに置き換えられていてやっていないみたいなんですよ。一部の流派しかやっていないのか(本で演舞している方は剛柔流でした)、失伝してしまったのか分かりませんが、どうなっているのか・・・・


 と、まあ、琉球古武術基準のツッコミにツッコミを入れるとこんな感じです。


アナタは釵をどう書きますか? ・・・・というか書きたいと思ってる人が読んでいるのだろうか…。


 流行ってくれ、釵。楽しいよ

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