第15話:宮坂三姉妹

「セーフセーフセフセフセフセフセーーーーーーフォーーー!!!!!」


「ちょっとさすがにうるさいわ、そろそろ落ち着いてくれるかしら?」


 落ち着いてられるか!前科持ちにならずに済んだ!これが叫ばずにいられるか!!


優希ゆうきさんは何をそんなに喜んでらっしゃるんですか?」


「ハイ!もしかして紗雪さゆきさんが高校生なのではないかと不安に思っていたんですが、どうやら同い年だったと分かって安心しているところです!!ですよね、だって車運転してたやん!でも万が一春生まれで学校に隠れて免許取ったんかも知れんしさ、ハッキリ大学生やて聞いてめっちゃ安心してたとこ。はぁ…、良かった。生きた心地せんかったわホンマ」


「優希君の地はそんな感じなのね、また新たな一面を知った気がするわ」


 おっと取り乱し過ぎた、思考する際でも関西弁が出ないよう気を付けていたというのに、口に出して昔の喋り方に戻ってしまっていたようだ。

 気を付けねば、もう地元にいた時の俺から抜け出したんだ。こっちで気楽に生きて行こうと決めたんだ。


 さて、懸念事項が一つ解消された事だ、俺が契約に縛られる必要はもうない。


「と言う事で牡丹ぼたんさん、さっきの契約書6枚とも全部、返してくれませんか?」


「お断りします」


 お断られましたー。

 ですよね~、早まった……。


「さて、将来有望なプレイヤーが誕生した事だし、みんなで夕食に行きましょうか。紗雪、メイド服は脱いで私服に着替えなさい。牡丹、予約は出来てる?」


「分かった~」


「出来ています、いつ行っても受け入れオッケーだそうですよ」


 ん?あの美少女メイド、分かった~って言った?プライベートは瑠璃お嬢様ではなく瑠璃お姉ちゃんて呼ぶ的な?もしそうなら私服姿の紗雪さんが俺の事をどう呼ぶんだろうか。





「お義兄にーちゃん♪」


 そう言って俺の腕に絡み付く、白いブラウスにピンクのロングスカートという私服姿の紗雪さん。よりにもよってお義兄ちゃんだと?美少女メイドの時よりも1オクターブほど高く甘ったるい声。

 そうか、ここで瑠璃さんが言っていた「私は正妻」宣言が生きて来るのか、自分の実の姉の夫であるから俺は義兄であり、メイドモードの時は正妻を持つ主人だから旦那様であると。何で旦那様って呼ぶのだろうと思ってはいたが、やっと理由が分かったわ。分かりづれぇ~わ。


「ささ、行きましょうか」


 瑠璃さんは青と言うか紺と表現するべきか、瑠璃色そんな色のパーティードレスっぽい雰囲気の出で立ち。

 耳にイヤリングをしたり、ネックレスをしたりとかなり大人な雰囲気だ。もしかしてこれから行くレストランにはドレスコードとかあったりするのだろうか?その割には紗雪さんはラフっちゃラフだが。牡丹さんもさっきと同じ緑色のワンピースのままだ。かく言う俺も紗雪さんが上から下まで用意してくれた服だしな、大丈夫なのだろう。


「これから行くレストランは個室だからね、ちょっとくらいえっちぃ事しても、大丈夫だよ?」


 上目遣いで何を言う変態美少女。さっきのさっきまで処女だったくせに。俺も童貞だったが。




 ホテル内の別棟にあるレストランへと到着。宮坂三姉妹の入店を確認すると同時に、店長っぽい人が個室へと案内してくれた。やっぱりお断り屋の経営って儲かるんだろうな、こんな高級レストランで食事が出来るんだから。


「あたしお義兄ちゃんの隣に座りたい!」


 メイドの心はどこに置いて来た……。




 フランス料理のフルコースをゆっくりと頂いた。隣から前から斜め前からとあ~んの波状攻撃を受け、とてつもなくお腹一杯になった。この3人と一緒では、どんなおいしい料理であろうが味が分からないんじゃなかろうか。デザートを食べている時に来てくれた料理長さんに対して、非常に申し訳ない気持ちになってしまった。


「この通り、うちの妹は変わってるでしょ?まぁ半分くらい私の趣味嗜好が伝染うつったせいってのもあるのだけどね」


「昼は大学生で、朝晩はメイド、休日はプライベートモードですか。紗雪さんはよく多重人格になりませんね?」


「もぅお義兄ちゃん、さっきみたいに紗雪!って呼んでよ。同い年なんだからさん付けなんていらないよ」


「ん~、お断りしまーす」


 何かちょっとめんどくさいこの子。こっちが適応障害になりそうだわ。


「紗雪がメイドと義妹でしょ、牡丹が愛人で秘書でしょ、で私が正妻で女社長。どう?それぞれ2キャラずつ計6キャラが揃ってるわよ?なかなか優秀なハーレムだと思うけど。足りないなら連れて来てくれてもいいし。私達3人がOKを出せば、だけど」


「他に考えられる職業ジョブっていうと、女医とか顧問弁護士とか?」


「未亡人というダークホースもありですね、人妻はダメですよ?」


 この3人の会話には付いて行けそうにないな。


「何にしても、よろしくね?4人で楽しくイキましょう?」


 行きましょうの発音おかしくないですか? 

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