第16話:宮坂三姉妹の真の姿
「ふぅ、お腹も落ち着いてきたことだし、そろそろ出ましょうか」
「もしかしてそれ、噂のブラックカードってやつですか?」
「ええそうよ、ちなみに私だけでなくこの2人も個人的に持ってるから。ちょっと前ならいざ知らず、今となってはそんなに珍しいモノでもないわよ」
いくらですか、僕も出しますよとは言い出せないような高級なレストランで4人分のお会計、一体どれくらいの金額が書いてあったのかすら想像がつかない。
店長さんがカードと控えの伝票を持って戻って来た。
「本日はご来店、誠にありがとうございます。ご両親にもよろしくお伝え下さい」
そう言って丁寧に一礼する店長さん。
「へぇ、ご両親をここに連れて来てあげるなんて、瑠璃さんて親孝行なんですね」
ポロリと独り言のように呟いた俺の発言に、店長さんが目を丸くしておられる。おや、どうしましたか?
その様子を見ていた瑠璃さんが、店長さんにニコリと笑いかける。何かを感じ取ったらしい店長さんが、にこやかに頷く。何このアイコンタクトは。目と目で通じ合う~な感じ?
「ご馳走様でした、また近いうちに来る事になるわ。その時を楽しみにしててね」
ひらひらと手を振る瑠璃さんを先頭に、俺達はレストランを出た。
「お
「そうね、そのつもりよ。さぁ、こっちよ
姉妹に両手を引かれ、次の場所へと向かう。どうやら夜景が見えるバーらしい。
なるほどこれは…、とても言葉では言い表せない。キラキラしててとても綺麗です、はい。この光景を描写するだけの表現力なくて、ごめんなさい。
「おや、君は昼間の新人君じゃないか。そんなに美女達を
カウンターに座っている人物、確か
「何者も何も、僕はただのフリーt「亀西君、こんばんわ。この子は私が今日スカウトした
瑠璃さんに
「そうですか、じゃぁお邪魔したら悪いですかね。でも自己紹介だけいいですか?桐生君、僕は
「ご丁寧にありがとうございます、信弥さん。僕も優希と呼び捨てにしてもらえれば」
「うん、よろしく優希。じゃ、僕達はこれで失礼するよ。皆様、失礼致します」
宮坂三姉妹に対し深々と一礼し、去って行く信弥さんとお連れの女性。それにしてもスペックスって何だ?
「お義兄ちゃん、スペックスっていうのは『
スペックスねぇ~、言い間違えないように気を付けないとな。セックススペックス。瑠璃さんならそこまで狙って名前を決めたんじゃないかと疑ってしまう。
夜景が見やすいテーブル席に陣取り、それぞれ飲み物を注文する。瑠璃さんはシャンパン、牡丹さんはレモンモヒート、俺と
「「「「乾杯」」」」
もちろんこの辛めのジンジャエールも、俺が普段飲む物よりも数段ランクの高い物なのだろうが、宮坂三姉妹とこの夜景を見ながら飲んでいるという事で、こうもおいしく感じるのだな…。
「牡丹ちゃんはさ、あたしと一緒で初めてだったわけでしょ?その、じんじんしない?」
「ええ、とっても。でも、もうちょっとで何かを掴める気がするわ」
雰囲気をぶち壊してくれるなよ、俺すげぇ居心地悪くなったわ。周りが気になるからもうちょっと音量低めでお願いします。ほら、バーのマスターっぽい人がニヤニヤしながら近付いてくるじゃん。
「いらっしゃい、お嬢様方。どこぞの御曹司を取り合いしているんですか?」
「いいえマスター、仲良く分け合いしているのよ?」
上手い事言ったつもりかも知れないが、ホントの事を冗談っぽくさらりと言うの止めて下さい、心臓に悪いです。ほら、冗談に取られてなさそうですよ?マスターがまじまじと俺の顔を見てくるじゃん。
「お客様、とんでもないお三方に選ばれましたな。どうやったらこのご令嬢達のハートを射止められるのか、私にも教えてほしいものですわ」
「ふふ、マスターも相変わらずお若いですね」
ほらまた来たぞこの
「え~っと間違ってたらゴメンなさい、宮坂三姉妹さんはもしかして宮坂商事や宮坂重工やらにご縁があったりしますか?」
突如マスターが両手を叩いて大爆笑し、三姉妹もニヤニヤし出す。
「お客様!知らないでお近付きになったんですか?アンタはとんでもない幸運の持ち主ですな‼ご縁も何も、宮坂グループ本家直系のお嬢様方ですよ。瑠璃お嬢さんは何か自分で起業されたそうですが、本来全く働かなくても生きて行ける人達なんですよ?」
マジで?こんな偶然あるの本当に。俺明日死ぬんじゃない?
「お義兄ちゃん、いいよそんなの気にしなくて。あたしらどころかうちの両親にも祖父母にも、経営権はないんだから」
「そうなんですよ、姉が起こした事件がきっかけでね、お爺様にも伯父様にも引責辞任させてしまったのです」
「だから今はただの株主なのよ、私達はその株主の娘ってだけ。ほら、株主も株主の娘も世の中には一杯いるものよ?」
「宮坂グループの筆頭株主がそんなに一杯いて堪りますかって。これ以上はお邪魔ですな、また御用があればお呼び付け下さいまし」
マスターは来た時同様、ニヤニヤしながら去って行った。
「だからレストランの店長さんは僕をあんな目で見てたわけですか…」
頭を抱える。もうあの店行けないよ。いやそんな頻繁に通えるような店じゃないのだが、あぁ恥ずかしい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます