第12話:そして大人になりました

 何言ってんのこの3人、初めて会った俺に対してプロポーズ?俺が主人公って?何じゃそれそれ訳分からん。


 たまたまカフェで女の子を振った場に居合わせただけで、自分達のハーレムの主になれと?この人達ぶっ飛んでるよ。

 男としてはこんな機会逃すなどあり得ないと人は言うかも知れない。しかし、しかし!残念な事に俺はまだ童貞で、据え膳だろうが何だろうが飛び付くような肉食系ではないんだ。


 俺にどうしろって言うんだ……?


「すぐに返事がもらえるとは思ってないのよ、だから今は私達に身を委ねてもらえないかしら?」


 何が起こったかは分からなかった。いやもちろん瑠璃るりさんが俺の首に手を回して抱き着き、舌を絡ませているのは分かる。これはアレだ、世に言うディープキスってやつだ。でも頭では理解出来ないよ、そんな突然唇を奪われるなんて思ってないもの。

 何で?何がそんなにあなた達を焚き付けるんですか?そんなに俺いい男じゃないよ?

 瑠璃さんが離れたと思ったら次は牡丹ぼたんさんが俺の頭を抱え、舌を絡ませて来る。いつの間に眼鏡取ったんですか?左には瑠璃さん、右には牡丹さん、そして最後に正面から紗雪さゆきさん。チュッチュッと小鳥がついばむようなキスから、むさぼるような激しいディープキス。

 もう頭真っ白、パニック。とりあえず俺の歯でみんなの舌が傷付かないように大きく口を開けるだけで精一杯。頭真っ白でどうしていいのか分かんない。代わる代わるキスを仕掛ける3人、息をするタイミングが掴めず呼吸が荒くなる…。


 どこかでカチリと、スイッチが入るような音がした。







「何てこった…」


 我に返った俺が見た光景、ソファーに沈み込むように座る瑠璃さん。寝室に横たわる牡丹さんと紗雪さん。シーツに残るアレな形跡の数々…。


「やっちまった…」


 色んな意味で。





「さて、ご堪能頂けたかしら?残念ながら私は初めてではなかったけど、あの2人は自ら進んであなたにその身を捧げたわ。私達の想い、伝わったかしら?」


 いち早く現実に復帰したらしい瑠璃さんから衝撃の告白。牡丹さんと紗雪さんの初めてを散らしてしまった。何も言えねぇ……。


「旦那様がお気になさる事は何もございません。私は幸せにございます」


 メイド服を着た状態で紗雪さんが告げる。髪の毛が乱れているのが何ともエロい。


「私も幸せですよ。願わくば、こんな日がこれからも続く幸せな日々の一日目であってほしいものです」


 バスローブを羽織った牡丹さんが続く。若干内股を気にするような姿勢で立っているように見える。


『ははは、これでお断りしますだとか、考えさせてくれなんて言ったら俺、サイテーな男じゃないですか。分かりました、こんな俺で良ければ、よろしくお願いします』


 そう言うセリフがこう言った物語のセオリーなのかも知れないが、俺はどうやら未だ現実に復帰出来ていないようだ。行くならとことん欲望のまま突き進んでみたい。ありのままの姿でソファーに座り、長く綺麗な脚を組んでいる瑠璃の前へと行く。


「紗雪、部屋の掃除を頼む。牡丹、俺は余裕ぶった瑠璃の顔が気に入らない。もう少し寝室でこの身体を味わおうと思う。返事はそれからでもいいか?」


 はっ、と息を飲む音が聞こえる。一瞬の間を置き、紗雪が一礼する。牡丹が頷く。瑠璃は呆気に取られたような顔をしているが、構わず腕を掴み寝室へと連れ込む。バタンと乱暴にドアを閉める。


「2人っきりではどんな顔を見せてくれるのか、楽しみだな」


 そう言って俺は、乱れたままのベッドへ瑠璃を押し倒した。






「またやっちまった…」




 何が余裕ぶった顔が気に入らないだよ、身体を味わうだよ!初体験からこんな特殊な状況とか有り得ないから!この短時間で何回致したんだ?覚えてねぇよ!!


「もう無理!本当にもう無理だから!お願い、少しでいいから休ませて!!」


 経験者相手にしてどこまで追いつめてんだよ俺は!?

 豹変する自分が怖いです…。




  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る