第11話:主人公は俺でした・・・!?
お断り屋業界を一言で言い表すならば、ネトゲで言う所の冒険者ギルドのようなものだと言えば分かるだろうか。
どこの店に所属するのかとは別に、個人個人がお断り屋協会へプレイヤー登録をする必要がある。
大抵の場合は店経由で協会へとプレイヤー登録する為、店との契約とプレイヤー登録は同時である場合が多いそうだ。
そして衝撃の事実、そのお断り屋協会の創始者は
何でも、牡丹さんが瑠璃さんのご両親に引き取られる事となった事件、無理心中は牡丹さんの実のお姉さんによる犯行だったそうで、美人だった牡丹さんのお姉さんはいつでもモテモテ、常に男を
そんな美人の姉が、1人の男に惚れ込んでしまう。何とか自分のモノにしようとあの手この手を使うも、意中の彼には通用しない。彼曰く、君のように全てを自分の意のままに出来ると思っているような高慢な人といても疲れるだけ、自分には付き合い切れないとバッサリ振られてしまう。
初めての経験、失恋。今まで私が好きだとどれだけの男が言い寄って来たか、私が好きだと言えばどれだけの男が答えてくれたか。失意の彼女はしばらく自分の部屋に閉じ籠り、塞ぎ込んでしまう。
牡丹さんとご両親は、何とか彼女の心の傷を癒そうとするも全て上手く行かず、ある日彼女は一家を巻き込んでの無理心中を決行してしまったのだ。
家族の中で牡丹さんだけが生き残ったのは、本当に偶然だったそうだ。刺された場所がほんの数ミリ違えば致命傷になっていただろうと医者が言っていたらしい。
姉が意中の彼に振られて変わってしまったのは、みんな誰もが自分の事が好きだという美人ながらの慢心が直接の原因ではなく、単純に死ぬ程までに好きな相手から振られたというショックが最大の原因なのではないかと考えた。
美人なら、美少女なら、振られる事など経験していない。ならば、絶対に振ってくれる相手を用意して、あらかじめ振られる経験をしておけばいいのよ!
一見何を言っているんだと問い詰められそうな発想だが、牡丹さんには瑠璃さんという力強い家族がいた。
瑠璃さんは幼い頃から中高生向けのラノベを愛読しており、特に男の主人公が本人の意向に関わらずハーレムを形成していくような内容のストーリーが大好物だったそうだ。
そして大抵の主人公は、女性の好意の断り方を心得ていた。付き纏うな、俺に構うなと言うのだが、どこか脇が甘くてそこに女性キャラの居場所が存在する。いつの間にか主人公が心を許し、共に支え合い冒険の旅を続けるのだ。
そしてハーレム要員が少しずつ増えて行く。そんな世界に、沼のように浸かり込んでしまった。
男子中高生ならば主人公に憧れるのだが、瑠璃さんの場合は主人公を囲むハーレムの一員になりたいという、やや屈折した願望を持つようになった。屈折しているという自覚はあるらしい。
女性からの告白を絶対に断るサービス、お断り屋はこの2人の経験と妄想から誕生した。
「最初は結構大変だったけどね、軌道に乗ったらあっと言う間にお客様が増えたわ。プレイヤーデータベースを作ってランク制度を導入したの。お客様の評価を得る事でランクが上がって行くのよ。もちろんお客様にも別にランク制度を導入してね。ある程度のランクに上がれば、異世界を舞台としたシチュエーションでプレイが出来るだとか、オーディエンスありでのプレイが出来るだとか。プレイすればするほどランクが上がり、特典が増えて行くわけよね。で、他の経営者に真似される前に協会を立ち上げたわけ。協会に所属さえすれば、プレイヤーデータベースもランク制度のシステムも共有出来る。ただし、システム使用費として協会に店の売り上げの5%を納めなさいという契約を結ぶ。これで私達は莫大な収益を得る事となった」
こうして瑠璃さんは己の願望の実現、牡丹さんは自身の姉のような悲劇を生み出さない為に協力し合い、自分達の店と協会の発展の為に働いているそうだ。
「今の瑠璃ちゃんの説明で大体は分かってもらえたでしょうか?うちの店との契約と、スマホアプリを通してのプレイヤー登録を今してもらいたいんですけど、いいでしょうか?」
「イメージ的には、このスマホアプリがギルドカードの代わりってところよ。お客様の評価を元に、段々とプレイヤーランクが上がって行くのよ」
へぇ~、結構作り込んであるなぁ。
「スマホはありますが、さすがに印鑑は持ち歩いていません。ので、やはり後日改めてと言う事で…」
「旦那様、こちらをどうぞ」
すかさず
「こちらで用意させてもらったわ、それを使ってもらえるかしら」
「着替えといい、印鑑といい、一体いつの間に…」
思わずため息をつく。何度も言うが、ここまで異常なほどの好待遇を受ければ受けるほどに警戒心が高まっていく。そしてハンコの用意があると言われたのだ。もうこれは危険と言って差し支えないだろう。
「ホテル、着替え、そして印鑑ですか。はっきり言って怖いですよ。初めて聞いた女性向けの風俗みたいな仕事にスカウトされて、美人と美少女に誘惑されて、高収入を約束されて。一体僕の何がそんなに良いのか、自分自身すんなり受け入れられないですよ」
美少女、という時に後ろに控えていた紗雪さんの身体がびくっと反応したのはこの際置いておこう。
「そうね、そうだと思うわ。でもね、私は絶対にあなたを頷かせたいのよ。牡丹は自身に降りかかった悲劇が起こらないように、そして私は自分の願望実現の為に。あなたがどうしても必要なの」
瑠璃さんの願望実現の為…?え~っと何だったっけ?瑠璃さんがギルドマスターみたいな立ち位置をキープする事?それとも莫大な収益をさらに拡大させる事?それとも単純に名誉?
「その思案顔はプレイヤーとしての演技なのかしら?それとも私があなたに声を掛けた本当の意図に気付いていないからなのかしら?」
本当の意図?
「私の願望はハーレムを構成する一員になる事。私は主人公の正妻になりたいのよ。そして愛人の牡丹と、メイドの紗雪。私達はまだまだ増えても構わない。ここまで言えば分かるかしら?」
つまり、どう言う事でしょうか?
「「「私達3人
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