第10話:大型新人デビューの噂
外から聞こえる変態美人ズの声を気にしつつも、美少女メイドこと
「あ、あの、すみません、言い過ぎました。何分こういう事に慣れてないもんで、すみません」
土下座をし続ける紗雪さんの肩に手を置き、頭を上げるよう言おうとすると、その手を両手で掴まれた。
涙目で見上げ、紗雪さんはその可愛らしい顔を歪ませて、俺に謝罪する。ちょっとゾクゾクする。
「いえいえいえ、旦那様には何の非もございません!悪いのは身の程知らずの私でございます、何とぞ罰をお与え下さいませ!」
これも事前面接の試験に入るのだろうかとも思うが、如何せん俺は今全裸だ。
全裸でこの状況では、どっちが客でどっちがプレイヤーなのか分からん。しかも脱衣所の外では変態美人ズのキャッキャキャッキャする声が聞こえる。
とにかく俺は何よりもまず服を着たい。そして罰を与えろと懇願するメイド。素で服を下さいと言うよりも役柄として命令した方がスムーズだろう。
「罰を与えるほどの価値もない、とっとと俺の着替えを用意して出て行け」
「はぁっ…!」
紗雪さんが
とりあえずそろそろ反応して来てしまっているナニを見られないよう、背中を向けて身体を拭いていく。
「申し訳ございませんでした、お召し物はこちらへと置かせて頂きます。もしも着心地が悪うございましたら、別の物と替えさせて頂きますので、お申し付け下さいませ」
どうやら我に返ったらしい、紗雪さんは一礼して脱衣所を出て行った。
さて、用意された服を見てみよう。シャツ・ズボン・肌着から下着まで全て高級ブランドだった。しかもサイズぴったり。いつの間に測ったんだよ、逆に怖いってば。
用意された服を着て、ドライヤーで髪を乾かす。俺の髪の毛はかなりの癖っ毛で、しっかりとブローしないとくちゃくちゃになってしまう。
トントントン、ノックの音が聞こえたが、反射的に「いらん」と答えてしまった。
「も、申し訳ございません…」
それはメイドの仕事にございます!とか言って入って来たそうな気はしたが、本当に入ろうとするとは。
しかしあんな美少女に対してこんな辛辣な仕打ちをするとか、俺って何様なんだろう。
自分を見失いそうで怖いです、すごい背徳感と快感。
髪を乾かし終え、脱衣所の扉を開けると紗雪さんが待機していた。
「紗雪さん、俺の脱いだ服ってどこにあります?」
「ホテルにお願いして、クリーニング中でございます。明日の朝にはこの部屋へ届く手配となっております」
ふ~ん、そんな事までしてくれんだ、ホテルって。そんな事を思っていると、また紗雪さんが可愛い顔を歪ませて涙目になっている。あ、あれだ、主の意向を確認せず独断でやったから、また怒られると思ってるんだろう。また土下座されては敵わん、お礼を言わねば。
「そうですか、ありがとうございます」
ほら、怒ってないですよ、ニコッとした顔してるでしょ?
途端、紗雪さんが口を半開きにしたまま硬直してしまった。心なしか顔が上気している。怒ってもダメ、お礼を言ってもダメとかどうすればいいんですか?
「ちょっといつまでそこにいるの?早くこっちへおいでよ」
「何でいるのかって顔をしているわよ?とりあえず座ってゆっくり説明させてもらうから」
そう言って俺の手を引いてソファーへと座らせる。向かい側には
紗雪さんは俺の斜め後ろで立ったまま控えているようだ。
「さて、説明や面接は明日にしようと思ってたんだけど、緊急事態なのよ」
瑠璃さんの話を要約すると、どうやら俺が友達の彼女を振った場に、変態美人ズと同じく聞き耳を立てていた人がいたらしい。そして、その後の変態美人ズのスカウトの場面もしっかりと見られた上、瑠璃さんの店から大型新人がデビューするぞと一部ネットで大騒ぎになっている、らしい。
何でも俺が知らないだけで、お断り屋業界は現在急成長中の商売らしく、ネットでも非常に注目されているとの事。すでに例の新人はいつデビューするのかと店に問い合わせが入っているのだとか。どうやら瑠璃さんはこの業界の大物らしい。
何かすごい大事になっているんですけれども…、俺やるって言ってないよ?
「別に本腰を入れてやれとは言わないわ。あなたも別でバイトをしているようだし、そこを辞めろとも言わない。でもここまで事が大きくなってしまったの。申し訳ないけど、うちの店と契約してくれないかしら?あなたがお金に困っていない事は知っているわ、でもそのお金で死ぬまで暮らしていけるわけではないでしょう?あなたならたった数年で莫大な金額を稼げると私達は確信しているわ。何もずっと続けろとは言わない。数年が長いなら数ヶ月でもいいわ。だから、とりあえずプレイヤー登録をこの場でしてほしいのよ」
プレイヤー登録ねぇ、確かに家族と引き換えに転がり込んだ遺産は、俺が死ぬまで暮らせると言うほどの金額ではない。フリーターではなく、どこかでしっかりと働かなくてはならない時期が来るだろう。
その事を思うと、今荒稼ぎをして死ぬまで遊んで暮らすと言うのも悪くないのかも知れない。
「本当にそのプレイヤーとやらの素質が、僕なんかにあるんでしょうか?」
「何を言っているの?私や牡丹をあそこまで感じ入らせて、紗雪までも手玉に取ってしまう。そんなプレイヤーがゴロゴロといると思っているの!?」
逆に聞き返されてしまった。いやだから俺、その業界に詳しくないんだってば。
そのやり取りを皮切りに、瑠璃さん牡丹さん紗雪さんによる変態美人ズwith変態美少女の俺のどこがいいか議論に突入してしまった。
「よく喋る家具だな」
「はぁうっ…」
「だから、そういう所よ」
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