第8話:この好待遇が怖いのですが・・・
「………………」
「………………」
会話のない車内、座り心地の良いはずの後部座席で1人、居心地悪く外を眺める。
明日改めてお断り屋とは何ぞやという説明を聞く約束をし、美少女メイドの
見た目は俺と同い年くらいなのに、こんなにデカい車でも難なく運転している。
美少女がメイド姿で現れれば、まず最初にコスプレだろうと思うのではないだろうか。
しかし彼女はメイドの恰好をしているだけではなく、職業メイドとして日々働いているのだろうと思わせる仕事振りである。
ハタから見れば俺はどう見えるのだろうか、こんなに可愛いくて若いメイド姿の女の子に運転をさせている。しかも真っ赤な高級国産ハイブリットセダンに乗っている若い男。どこのお坊ちゃまかと。
精神的に疲れたからとりあえず明日にしてくれとお願いしてホテルに向かっているわけであるが、その移動の車の中でも精神的に疲れるとは思ってもみなかった。
何て事を考えていると、用意してもらったホテルに着いたようだ。
ホテルの入り口に車が停車すると、ドアマンが歩み寄りドアを開けてくれる。
「いらっしゃいませ」
うへぇ~、ホテルを取ったってここを取ったのかよ、一泊いくらだよここ。この待遇がすげぇ怖いよ。
美少女メイドこと紗雪さんがトランクを開けて、ベルボーイ(?)が荷物を取り出し、ドアマンが運転して駐車場へと移動して行った。
「本日はご予約頂きまして、誠にありがとうございます。ご案内致します」
「よろしくお願い致します」
さ、どうぞと紗雪さんに促され、ベルボーイと紗雪さんの後を付いて行く。
ってか紗雪さんがベルボーイに渡した荷物って誰の?結構大きいスーツケース。
そう言えば俺外泊する用意なんて一つも持ってないんだけど、どうしよう。
ホテルに着く前に家に寄ってもらえば良かったな。
どうしようかなぁなんて考えていたら、ロビーに座っていたビジネスマン風の男性が立ち上がり手を振って来た。誰だお前。
「紗雪ちゃん、こんなトコで何してんの?」
紗雪さんの知り合いらしい、なかなかのイケメン男性来たコレ。
肩幅が広く、背も高い為スーツがとても良く似合っている。俺もこんな男になりたかったわ。
「
綺麗に一礼をして、前を通り過ぎる。
俺も何となく頭を下げて紗雪さんの後を付いて行こうとすると。
「え、君ももしかしてプレイヤー?初めて見る顔だね」
にこやかに握手を求められた、これをお断りするのはさすがに忍びないので、一応軽く握手しておく。
「いえ、僕はまだ…」
「亀西様、急いでおりますのでご容赦下さいませ」
紗雪さんが俺の手を取ってちょうど来たエレベーターに連れ込まれてしまった。
何かマズい事でもあっただろうか?
亀西とやらはエレベーターのドアが閉まるまでこちらを見て、手を振っていた。
「差し出がましい事をしてしまい、申し訳ございませんでした」
紗雪さんが深々と頭を下げて来る、その様子を驚きの隠せない表情で見つめるベルボーイ。
居心地悪いの継続中。
「いやいやいや、別に僕は何も気にしてませんのでお構いなく!ホント、大丈夫ですから。それよりも良かったんですか?あの人紗雪さんのお知り合いなんじゃ?」
「ええ、
問題ないのであれば問題ない、そういう事にしておこう。
そうそう、俺の着替えやら何やらがないから取りに帰ってもいいか確認しておこう。
「そう言えば泊まる用意とか持って来てないんですが、取りに帰ってもいいでしょうか?」
「その必要はございません、私の方で替えのお召し物はご用意させて頂きました」
え、何どういう事……?もしかしてそのスーツケースの中身、俺の着替えが入ってるって事?
びっくりしているとどうやら目的の階に到着したようだ。
「こちらでございます」
ベルボーイが部屋の扉を開け、中へと案内してくれる。
時間はちょうど夕暮れ時、都会の夕焼けが窓一杯に映し出されるのを見て、呆然と立ち尽くしてしまった。
変態美人ズ、俺の何に対してそこまで期待してくれているというのだ……。俺に何させるつもりだよマジで。
気付けばベルボーイは退室してもう部屋にはおらず、どこからか水の流れる音が聞こえる。
ちょっと夕焼けに目を奪われ過ぎたな、でもこれは体験した事のない光景。
せっかくだから目に焼き付けておこうと窓へと近付く、お~すごい高いねココ。
何階なのか全く確認してないわ、宿泊費も高いんだろうな。
「旦那様、お風呂のご用意が出来ました、お背中をお流し致しますのでコチラへお願い致します」
旦那様!?背中を流す!?これ本当に
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