アルタ群島(45)「温泉回・Ⅴ」

~これまでのおはなし~


 遡ること十九年前、俺、佐藤翔(7)は家でおとなしく留守番をしていた。当時の俺は、自分で言うのもなんだが、とても愛らしい顔立ちのお子ちゃまで(ルックスの全盛期が早く来すぎた模様)、髪が長めだったこともあり、女の子に間違われることもしばしばだった。ピンポーン。チャイムが鳴った。誰だろう。インターホンに向かい、玄関カメラの映像をモニターで覗くと、スーツの男性が立っている。歳は、五十歳くらいだろうか。「はい」とそのままマイクに告げると、「こんにちは」と、男の人が言った。「お母さんはいるかな?」「今いません」「おや、そうなのかい? それはすまなかったね。お母さんに会いに来たんだ。出直して来るね」男性はそのまま帰って行ったが、幼い俺はモニターに映った姿を、奇妙に反芻していた。あまり見かけない風貌だった。彫りの深い顔。父よりもずっと高い身長。ゲルマン系を思わせる、白人の男性だった。





「どうですか、サトウさん? お味の方は」

「……」

「ショウくん、目、しろくろしてる」

「でも、親指を立てていますよ。美味しかったのかもしれません。何か感想言って下さい。サトウさん」

「くそまず」


 温泉の岸辺に、ずらりと瓶が並んでいた。


 サイズ的には片手に収まるコップ大。

 形状が一番近いのは、ワンカップ系の日本酒だろうか。


 しかし中には、赤、青、緑と色とりどりの液体が注がれていて、日本酒というより、さながら怪しいカクテルのフルコースといった具合である。

 海の家のかき氷並に原色。


(すげえ体に悪そう……)


 露天風呂を舞台に、マリーの用意した謎ドリンクの試飲会が行われていた。

 挑戦者は俺一人。

 残りの面々は、ゲフゲフとゲップを量産する俺を横目に見ながら、大自然の秘湯を楽しんでいる。


「今度も駄目でしたか。なかなかうまくいかないものですね」

「ショウくん、だいじょぶ?」

「端的に言って、吐きそう」

「不思議ですね。元のフルーツジュースはこんなに美味しいのに……ごくごく」

「俺にもそっちを飲ませてくれよ……」


 抗議の言葉にも、マリーはそしらぬ顔だった。

 立ち上る湯気の向こう、腰に手を当てると胸を張って、湯上がりフルーツ牛乳飲みポーズ。

 幸せそうに喉を鳴らしている。


(ああ……)


 こんな時ですら、素敵なおっぱいの角度だよ……。


 大変艶めかしゅうございます。

 何しろ一度温泉に浸かった後である。

 彼女の女性的パーツを隠す為、体に巻かれているはずのタオルが役に立っていない。

 むしろ、濡れた肌に貼り付き、ボディラインを強調させる小道具となり果てていた。


 すごくいい。

 とてもいい。

 エロスの殿堂。

 眼福の国。


 ……なのだが、それは平時の話である。

 さっきから石鹸水をガブ飲みし続けているような状態で、ひたすら気分が悪い。

 せっかくのラッキーおスケベタイムも台無し。

 視姦カメラをガンガン回して、マリーちゃんのイメージビデオを脳内編集したいところなのに、現状その余裕が全く無い。


(もう、七、八杯は飲んでるんですけど……)


 謎ドリンクの入ったグラス群を忌まわしげに眺める。


 これ、一人はやっぱきついよ。

 誰か手助けしてくれないかなあ……。


「ハサーシャさん、と言いましたか。その本、もしかして『剣術回廊』ではないですか?」

「え? ……知ってるの?」


 加勢を求めてちらちらと周囲を見やれば、湯船では、人見知りのハサーシャとカリオテが、不思議と仲良さげに話していた。


「当然です。私はこう見えても、冥明流剣士の端くれなのです。『剣術回廊』といえば、流派の伝承をまとめた書も同然です。知らないわけがありません」

「そうなんだ」


 ハサーシャが温泉に持ち込んでいた本を題材に話し込んでいる模様。

 俺のすがるような視線に気付いた様子は、皆無である。


「序文をそらんじることもできますよ。


 ――半人半霊の森の民。

 ――憤怒に因りて身を成し、大望に拠りて武を為す。

 ――往くは険しく、戻るは易し。

 ――然れど、留まること能わず。

 ――此よりは、剣術回廊也。


 ……ですよね?」


「驚いた。あたしでも、文章覚えたりなんてしてないのに」

「ふふふ。実はもともと私の好きなタイプの本ですので、子供の頃より愛読していたのです。荒事には向かぬハーフエルフの細腕で、当代一の剣客にまで上り詰める『自由人レノス』の冒険譚。くぅ~~っ……格好よすぎです。あれを読んで心躍らぬ者がいたとしたら、それは精神の不具者に相違ありません」

「ん。わかる」


 会話が弾んでいるご様子。

 ぶっきらぼうな読書少女の声が、いつになく嬉しげである。


 一方の栗色髪剣士も、時折見せるオタク気質……自分の好きなものに対して異常に饒舌になる姿を露わにしている。


「私は古今東西の英雄物語、どれも好きですが、戦士を主役としたものですと自由人レノスのものが一番かもしれません」

「アンバー公はどうなの? 冥明流と言えば、レノスよりアンバーだけど」

「え? 開祖様ですか? いえ……勿論大好きですが、そちらはちょっと、なんというか、好きというよりは崇拝しているという方が近いですね。人間離れしすぎていますからね」


 どんどん前のめりになるカリオテ。

 早口でまくしたてはじめていた。


「その点、レノスは元々落ちこぼれです。努力に努力を重ねて上っていく姿は、親近感が湧きます。私は一応、アスター・ヨーのメダルコレクターなのですが、メダル化されている英雄の中で好きな人達は、意外とシルバーメダルに多いかもしれません。そちらの方が感情移入できるのですよ。正直なところ、英雄の頂点たる<偉大なる十>となると、同じ人間とは思えないですね。


 ナンバー1、『魔導皇帝ポリディウス』。

 ナンバー2、『竜殺しアンバー』。

 ナンバー3、『七百武器のディアダロス』。

 ナンバー4、『琥珀術士グザヴィエ』。

 ナンバー5、『淵森の射手ウォード』。

 ナンバー6、『敬虔なるアシャン』。

 ナンバー7、『空詠みイルナーク』。

 ナンバー8、『車輪使いアゼルロイ』。

 ナンバー9、『精霊盗賊メッシーナ』。

 ナンバー10、『受肉者マドゥカ』。


 いずれ劣らぬ伝説上の人物ですが、正直私が思い入れを持っているのは冥明流開祖たるアンバー公くらいでしょうか。他の方々は、そうでもありません。例えば、スラッジ・ウォーの英雄であれば、ナンバー4『琥珀術士グザヴィエ』や、ナンバー10『受肉者マドゥカ』よりも、シルバーメダルのナンバー36『永劫紋のヨル』の方がずっと好きですね。失礼ですが、彼女を主人公とした物語に触れられたことは? 我が母国では、吟遊詩人が炉端で歌う定番の一曲として愛されているのですが。ええそうです、ロー=ティリア攻防戦を舞台としたものです。ご存知でしたか! いやあ、嬉しいものですね。このような異邦の地で、同好の士と話せるとは。ヨル様は、かの永劫紋の名の通り、確かまだ存命である筈ですし、一度お会いしてみたいです。きっと後光が射して見えるでしょうね。噂通りの美貌なのでしょうか。はぁー。溜息しか出ないです」


 話が長い。

 くどい。

 めんどくさい。

 夏冬に有明で見かける人。


 ほんと無邪気だよなあ、カリオテは。

 英雄譚(?)に夢中になってる姿は、休み時間教室でジャンプ片手にはしゃいでる男子中学生と大して変わらないよ。

 でも……。


「……」


 さっき目撃してしまった鮮烈な光景。


(いかんですぞ……)


 なんか色々アレなので、こいつはただのショタイケメンと思い込もうとしていたのだが、拝見してしまった物が物だけに、無理が来ている。


 まさか、思わないもんな……無毛地帯だなんて。


(なんでよりにもよって、人の鼻先で全裸尻餅大股開きしてんだよ、こいつは……)


 俺は、楽しげなカリオテを横目に、小さく嘆息する。


 嬉しい嬉しくないの前に、困惑するわ。

 これからどんな風に接したらいいんだよ……。


 ていうか、こうなると、単にショートカットのボーイッシュ美少女だよねこれ。

 鎧兜身につけてるわけでもないから、男らしさゼロだもん。

 それが俺の長衣着て風呂入っとる。

 なにこれ。

 どーすんだ。


 つか、あれだね。

 今の状況は、考えたらすごいね。

 エロ目線で見始めたら、大変なことになるね。

 なんでこんな沢山の全裸美少女と混浴してるんです?

 男が俺しかいねえじゃん……。

 俺の人生のクライマックスもしかしてここ?


「サトウさん。手が止まっていますよ。次こちらをどうぞ」

「うっ……」


 マリーの声に、急に現実に引き戻される。

 目の前に、新たな試飲ドリンクが差し出されていた。


 くそ……これさえなければ本当に桃源郷なのに。


「って、今までで一番やべえ色だな」


 虹色に煌めく液体の中、緑と茶のヘドロじみた塊が揺らめいていた。

 こんなんドブですやん。

 ドブ水ですやん。

 濃厚な。


「マリー、俺の息の根止めようとしてない?」

「意外とおいしいかもしれませんよ」

「そんな顔しかめて言われても説得力が無いぞ……」


 コップ突き出す手つき、完全に汚物を扱うそれですよね?

 空いた手で、鼻摘んで匂い嗅がないようにしてるし……。


「くちゃい」


 メムまで……。


「これを飲むのか? 俺が? 本当に?」

「あまり観察しないで、一気に行った方が良いと思いますよ。一気に。時間をかければかけるほど、飲む気無くなりそうな色ですし」

「調合した本人がよくそこまで他人事めかして言えるな……。何をどうかけ合わせたらこんな危険な色になるんだよ……」


 スタミナポーションの面影完全に消えてるぞ。

 今入ってる温泉の水飲んだ方がマシなレベルだろ、これ。

 ここのお湯、澄んでて綺麗だし。


「ジュースとポーションだけだと匂いがとてつもなく臭かったので、お風呂のお湯を足してみたんです。ここのお湯、『高濃度マナ水』ですし、体にいいかなって」


 本当に風呂水を飲まされていた。

 もうめちゃくちゃ。

 まあ、いい美少女のダシが取れてるから気にする必要ないか……ってそんなわけないよ!


「さっ。早く早く。一気一気」

「おっ! おいっ! 待て待て!」

「いっき、いっき。ショウくん、ふぁいと」

「いっき、いっき」

「いっきっろ、いっきっろ」

「生きろ!? コール変わってる!? どういう意味!? 飲んだら死ぬってこと!? おぶっ……!」


 躊躇してたら、無理矢理口に流し込まれた。


「……ごぶごぶごくり……」

「うわあ……本当に飲んでますよ。よくこんなもの飲みますね」

「おなかいたくなるよ……?」


『うまっ!』


「でしょうね、世の中おいしくないドリンクは数あれど、おいしい話はそうそう無いものですね……って、えっ!?」

「なにこれ。めちゃくちゃ旨いんだけど……ゴクゴク」

「うそ……」

「サトウさん、無理しなくてもいいですよ?」

「いや、無理とかじゃなくて本当だぞ。匂いは最悪だが、味は、甘くて、爽やかで、さっぱりしてる」


 なんというか、フルーツ系のチューハイみたいな味だ。


「本当ですかぁ……?」

「嘘じゃない。冗談抜きに、凄く旨い」


 俺がそう言って完飲してみせると、怪訝そうな顔をしていたマリーも、再調合に入った。


「お……美味しいです……」


 口にするや、愕然とした様子で言った。


「熟した桃みたいな濃厚さがあるのに、飲んだ後、全然しつこくないです。しかも、スタミナポーションを飲んだ時と一緒で、体がどんどん熱くなってきます」

「ああ。力がみなぎってくるよ」


 精力剤効果もあるよこれ。

 既に湯船の下で、俺、体感してるもん。


「メムも、のんでみたい」

「どうしたのですか? まさか実験、成功したのですか?」

「マリー。あたしにも頂戴」


 俺達の興奮する様を見て、他の面々も興味を持ったようだった。

 怪しすぎる新ドリンクに群がってくる。


「へぇー。本当に匂いからは想像もできない味がしますね。初めてですこんなのは」

「あまい。メム、これすき」

「不思議な味。でも、確かに美味しい」


 一様に高評価。


「マリー。どうやって作ったの、これ? 何のフルーツジュースと混ぜたの?」

「ふふふ。そこは企業秘密です」

「もしちゃんとポーションの効果も残ってるとしたら、凄い人気商品になるかも。エルスラッドでも普通に売れそう」


 ハサーシャの言葉に、マリーが湯あたりとも思えない様子で顔を赤らめる。


「は、ハサーシャもそう思いますか? 私、お金持ちになれますかね? すごいです。マリー謹製『スタミナフルーツ』……こんなにも簡単に完成してしまうなんて……なんだか興奮してきました!」


 テンション上がってきたようである。

 薔薇色の未来を夢見ているのか、笑顔で腕をぶんぶん振っていた。


「あのう、マリーさん、もう一杯頂いてもいいですか?」

「メムもほしい」

「どうぞどうぞ。その代わり、このドリンクを売り出したら必ず宣伝をお願いしますね」

「じゃ、あたしもおかわり」


 すっかり飲み会と化していた。


「なんだか癖になる味。体がカーッとなってくる。でもそれが、嫌じゃない」

「ごくん……うまうま……」

「これ程に美味なるドリンクで代用できるなら、スタミナポーションはもう用済みですね。革命的飲料ですよこれは。祖国の父上に飲ませてあげたい味です。マリーさんは天才的センスの持ち主ですね」

「あははー。そんな褒めないで下さい。照れますよー。なんだか楽しくなってきましたー……わーい」


 なんだこりゃ。


「お前ら……飲むペース早すぎね?」


 おいしいおいしいと盛り上がる面々に、一応釘を刺しておく。


「仮にもポーションが原料なんだから、ガブガブ飲んでいいものじゃないと思うんだが……」

「サィトウ、うっさい」


 近寄ってきたハサーシャにぺち、とはたかれる。


「つまんないこと言うな」


 人見知りのインドア系美少女とは思えない、突然の近距離接近。


「サィトウも、もっと飲め」

「ええ……」


 なんか、目、座ってない?

 ていうか、さっきまで裸を恥ずかしがってたのに、いきなりどうしたんだよ。

 そんな無防備に近寄られると、色々と、落ち着かないよ……。


「そうですよぉ。前から思ってたんですけど、サトウさんは、男の癖に細かいことにこだわりすぎです。さっ。もう一杯」

「い、いや、俺はもういいよ。ずっと試飲してたからお腹がタプタプなんだ」

「はぁ? 何ですか? 私のポーションが飲めないって言うんですか?」


 マリーが睨み付けてくる。

 うわあ、絡みポーションだ。


「えへー。ショウくん……」


 かと思えば、背後から幼女が抱きついてきた。


「すりすり……」


 えっ。

 いや待て。

 お前今、裸だろ。

 そんなことしたらいけないよ。

 だってほら、見事にいけない感触が背中に当たって、これはいけない。

 いけない未来が待っている。


「……あれ?」


 と、メムが何かに気付いた様子で俺を見つめてくる。

 若干目つきがトロンとしているように見えるのは気のせいか。


「ショウくん、くびのとこ、どしたの」

「え? 首の所?」

「なんか、へんなしるしがある」

「あ、ああ……それか」


 そういえば、以前リムさんに「首の後ろに妙な印紋がある」って言われたんだよな。

 ネアに見てもらおうと思ってたんだけど、彼女が週一でしか起きない関係上、まだ聞けてないな。


「あんまり気にしないでいいぞ。それより、ちょっと離れなさい」

「どして?」


 密着部分が色々と気持ち良すぎるからだよ!

 そろそろ、充血のし過ぎで壊死がはじまってもおかしくないというか、アイツがぽろりともげても知らないよ!


「あれれ?」


 と、メムがまたしても何かに気付いた様子で俺を見つめてくる。


「ショウくん……」

「なんだよ」

「にんにん」

「おやめなさい」


 危険を察して、牽制する。


「にんにん見せてみて」


 直球で打ち返してきた。


「駄目に決まってるだろ……」

「ぶー。見せて」

「な、なんでだよ」

「見たいから」

「単に見たいだけになっとる」


 どういうことだよ……。


「それはいいですね」


 マリーが珍しく悪そうな顔をして言った。

 熱に浮かされたような目をしている。


「私もサトウさんに見られてしまった身ですし、見せてもらう権利があると思います」

「え? サィトウ、こんな沢山に囲まれた状況でも、まだおっきくしてんの……? ヘンタイ……?」

「サトウさん……少し自重して下さい」


 見れば、ハサーシャとカリオテも、どことなく胡乱うろんな目で俺を見ていた。


 なんだ? この桃色の雰囲気は?

 どういうことなんだ……?


 もしかして酔ってる……?

 みんなシラフじゃない?

 このドリンク、大丈夫なの?

 エナジードリンク作ろうとして、ヤバいの完成したなんてこと無い?



【銅】『逆レイプ』

(実績:誰かの脳内で100回犯される)

(報酬:0XP)



 えっ!?

 なんか変なトロフィー獲得したぞ!?

 突然どういうこと!?

 つか、実績の内容!


「……」


 俺が、犯されたの……?

 犯す側じゃなくて……?

 この中の誰かに、俺、性的な目で見られてた、ってこと……?

 嘘……。


 銀髪褐色ロリータ。

 正統派赤髪巨乳美少女。

 栗色髪ボーイッシュ。

 ふわふわ猫系無愛想ガール。


 思わず周囲の面々の顔を、順に眺める。


 誰なの?

 この中に一人、好感度上昇したヒロインがいるんでしょ?

 いつの間にこの四人を攻略ヒロインにした、ギャルゲーはじまってたの?

 どうせならエロゲーがいいぞ。

 断然そっちがいい。


 って、どんなゲームだよ。

 うん。多分こんなゲームだな。



↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓


https://kakuyomu.jp/works/1177354054885069702/episodes/1177354054885069716


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「ぎゅあああああ!」


 突如として、俺の口から悲鳴が漏れる。


『!?』


 周囲の四人が同時にビクッと体を強張らせた。


「い、いきなりどうしたんですか、サトウさん」

「ショウくん、どこからこえだしてるの……」


 自分の思い描く妄想が、とてつもないクソゲーだった場合、こんな声が出てしまうらしい。


 その衝撃は俺を打ちのめすに十分で、ばしゃん、水飛沫の音を俺は耳元で聞く。

 顔面が、湯に浸かっている。


「あっ! ショウくんがまたしんだ!」

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