第4話 セキュリティー・ゴーレム戦
三体の丸い胴体に細い六本の足を生やしたもの達が俺たちを見据えるように対峙している。
――――セキュリティー・ゴーレム―――
こういう先史文明の遺跡に踏み込んだ時に稀に遭遇する機械仕掛けのガーゴイルとかゴーレムみたいなやつだ。大概、俺たちにとってお宝となるような先史文明の何かを守っている。
ゴーレムと言ってはいるが額に文字はないし(そもそも額がないし)これを止めるには力ずくで壊すしかない。先史文明人が作っただけあって強い。装甲はさほどではないが、何より図ったような連携をするのが厄介なところだ。俺たちもうまく連携しないと倒せない。
「くそっ」
誤解されたまま、紫苑と名乗ったヒューマンは小部屋から出て行ってしまった。追いかけようにもこいつらに足止めされた格好だ。
「兄貴、あいつら来るよ」
三体が数珠つなぎの様に連なってまっすぐこちらに向かってくる。
「俺に任せろ」
ブルータスが前に出て大きな盾を構える。敵に三体がかりで体当たりされれば、さすがにブルータスだけでは支えきれない。俺もブルータスの後ろに回り彼を支える。
フェンサーの鈴香はブルータスのやや斜め後ろ、で片手を添える程度。後衛の翔太は魔法を唱えるべく集中に入る。
最前列の一体が飛び上がって串か槍かという様な尖った足を延ばしてブルータスに襲い掛かる。
ガキン
と、金属同士がぶつかる音。そいつの攻撃はブルータスの盾で難なく阻まれる。しかし持ち上げた盾の下、続く二体目がブルータスの足元を狙っていた。
「させないよ」
羽も使った立体起動で素早く左側面に回り込んだ鈴香が二本の曲刀を使って伸ばしてきたそいつの足を叩き落とした。逸らされた足先が床に突き刺さり、そいつはつんのめった。
「うおらよっと」
ブルータスは盾の上に乗りかかってきた一体目のゴーレムを盾を押し返すようにして下に叩き落す。丁度ブレーキがかかってつんのめっていた二体目にぶつける形になった。ゴーレム達に大きな隙ができる。
「とどめっ」
腹を晒す格好になった一体目を狙って鈴香が連撃を放つべく体をねじりこんだ。しかし、いつの間にか最後列の一体が左側面後方に回り込み、そんな鈴香を攻撃しようとしていた。
――――――ジャッ
閃光がそいつを貫いた。
「あ、ありがとう。兄貴」
「調子に乗りすぎだ」
俺が撃った光線銃が間に合った。
ドムゥっと小さな爆発音を立てて最後列にいた三体目が沈み込んだ。
まずは一匹。
しかし一方で一体目と二体目はとっさに回避行動をとろうとした鈴香の隙をついて体勢を取り戻していた。
「水よ、氷結せよ」
翔太の凍結魔法が発現し始める。俺達を無数の小さな氷の結晶が取り囲んだ。
一体目が再び突進してくる。狙いは後衛の俺だ。
あぁ、目をつけられちゃったみたいだな。
一方でさっきの鈴香の攻撃で前足二本を損傷した二体目は斜め後方へと下がった。
「来い!」
ブルータスが筋肉を盛り上げて俺と一体目の間で盾を身構えた。実に頼もしい肉壁だ。
ギャン、ギャンとブルータスの鉄斧と盾が音を立てる。今度は無謀な飛び込み攻撃はしてこず、正面からブルータスとの削りあいになった。四本足で体を支えて、残りの二本で攻撃をしてくる。二刀流を相手にしているようなもので、攻撃の回転が速くどうしても防御がちになってしまう。俺が助太刀に入れば攻防の均衡が崩れるだろうが、俺が前に出れば、今度は二体目が遠距離攻撃で俺を狙うはずだ。
しかし、ぼさぼさして居たら、回り込もうとしている二体目がブルータスを狙って加勢する形にされてしまうだろう。
俺はブルータスの後ろから急に前に出てブルータスに向かって突いていたゴーレムの左前足を跳ね上げた。
攻防の均衡が崩れる。
ブルータスは右前脚を盾で防ぎながら、左前足の根元に鉄斧をたたきつけ、左足を折り飛ばした。
「ブレイク」
翔太が魔法を変遷させると氷の結晶が瞬時に霧散し、霧へと変わった。
――――――ジャッ
その瞬間、霧が強い光を放って輝いた。
敵の放った光線が霧で拡散したのだ。
「とっさの判断が弱いのが弱点よね、あんた達」
足を止めて光線を放った二体目の真上に鈴香の姿があった。
霧に紛れ、ついでに閃光も利用して文字通り飛んだ鈴香は背中の羽ばたきを止めて急降下する。
「今度こそとどめよ」
真上から突き刺した曲刀が深々とめり込んだ
これで二匹目
こうなってしまえば後は一方的だった。主攻撃手段の前足を一本失った残る一体は、あっという間によってたかってタコ殴りしてやったらたちまちダルマになった。こうなってしまうと光線を放とうにも砲台の発射軸が固定できない。
深々とブルータスの鉄斧がそいつを切り裂いた。
「急ごう。追いかけるぞ」
こいつらはただの足止めだ。
誤解して逃げ出してしまった彼女を救うなら、この遺跡を出る前に追い付かなきゃいけない。
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