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「店、何て名前だっけ」

「えー、確かねムギローブ、だったかしら」

「ムギローブ?」

「ムギとグローブじゃない?」

 麦芽酒とグローブを組み合わせたのか?

 そのままミケと本当にどうでもいい話をしながら歩いていくと、木製のビールケースを材料にしてパッチワークのように貼り巡らせてある店に着いた。店内の壁も全面木製の資材が使われている。

「こんばんは」

「いらっしゃいませ」

 オープンな店内にはまだ誰も客が居らず、俺達二人が一番乗りだったようだ。席へ案内してくれたのは若い女の子でバイトのようだった。

 メニューには看板に掲げてあるようにいろんな国のビールが書いてある。それから全国の地ビールまで。予想以上にビール専門店で胸が躍った。色んなビールを飲んでお気に入りを見つけたい。

「はなちゃんどれにする?」

「そうだなぁ」

 メニューの隣には一言そのビールの特徴が書いてあってオーダーの参考になる。が、やはり新しい店へ来たら

「とりあえず今日のおススメにしようかな」

 その店が一番自信を持っている奴を頼まなければ。

「はーい、あたしもそれにする」

 つまみは適当にがっつりしたもの(ビールと言えばね)を頼む。いったんバイトちゃんが下がってから訊いてみた。

「で、ミケのお気に入りはどの子なんだよ」

「んーまだいないみたい」

「バイトの子?」

「多分ね。若い感じがしたし」

「若いってお前、三十路だぞ? 学生だと犯罪じゃね?」

「愛に年齢は関係ないわよ」

 でももし高校生バイトだったら本気で引き留めようと、そう思った。それが悪友としての最低限の優しさじゃん?

「どんな子なんだよ?」

「黒髪で、白くて、ちょっと細くて、メガネの子」

「へー」

 恥ずかしそうにしてそう言うミケを後目にお通しで来た砂肝のガーリック炒めを頬張る。うまし。

「本当に可愛い子でね。はなちゃんには譲らないわよ」

「悪いけど俺、女の子しか無理なタイプで」

「損してるわね」

「十分です」

 いつもの会話に適当に返事を返す。厨房辺りで「おつかれさまでーす」と声が聞こえた。何人くらいバイト雇ってるんだろ、なんて思いながらそっちを見ると、華奢な体型のメガネの子が見えた。明らかに若い。肌のハリが違い過ぎる。

 もしかして、あの子か? だとしたらリアルの高校生くらいに見えるけど・・・

「あれ?」

「なに、どうしたのよ」

「いや、あのさ、今更なんだけど」

「ん?」

「ミケって男だけだっけ?」

「え? 恋愛対象? そうだけど」

「へー、やっぱりか・・・」

「なによ」

「何でもない」

 やっぱりこの恋はそうそうに諦めさせた方がいいのだろうか・・・?

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