キューピット出陣

カゲトモ

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「ごめーんはなちゃん、お待たせ」

「おつかれ」

「おつかれ、ごめんね、待った?」

「いんや、今来たとこ。大体まだ五時になってねーし」

 高級とは言い難いカジュアルな腕時計で時間を確認する。時計の針は四時五十分だ。

「はなちゃんいっつも待ち合わせより早く来るわよね。時間を守れるのは良い男の一つのポイントよ」

「ならミケもそうだろ」

「あたしは女子のたしなみよ」

「はいはい」

 待ち合わせはいつも通り、駅の南口だ。平日の夕方とあってスーツ姿や制服姿が目立つ。このままゆっくりと歩けば、丁度店が開く頃に着くだろう。

「まぁその格好で女子って言われてもな」

「えー、なんか変?」

「いや、本当にファッションセンスだけはあるよなぁ」

「だけって何よだけって」

 俺はどちらかと言うとモノトーンや無地のシンプルなファッションが好きなのだが、ミケは違う。ザ・おしゃれみたいな感じで、無地も着れば柄と柄を組み合わせたり、小物使いが上手かったり。テレビや雑誌で見るようなモデルのような格好をしている。もちろんオネェスナックでは違うけど。猫ミミ付けたドぎついドレス着てるけど。

「ギャップが凄いわ」

「あ、ギャップ萌えってやつね! ここに来てやっとあたしの魅力に気づいたのね。でも残念、あたしはなちゃん見たいな無気力系無口野郎はタイプじゃないの」

「ひでぇな。てかなんで俺が振られたみたいになってんだよ。しばくぞ」

「あ、違った。無気力系罵倒野郎だったわ」

「うるせぇ」

 外見が良いだけに喋ると勿体ないとつい思ってしまう。オネェ言葉のギャップが残念に思えてしまうから。普通に振る舞っていたら女の子にモテるだろうな、とか。まぁ別に俺には関係ないけど。罵倒系だし。

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