第14話

              十四


「ねえ、君はさ」

 ふと気になったように、彼女に尋ねられた。

「なんで知らない他人に、そこまでのことが出来るんだい?」

聞かれてオレは少し考える。

「それは……」


 オレは中二の時、陣内先輩に尋ねられたことを思い出す。

 オレはこう答えたんだ。

「それは、オレの憧れの人みたいになりたいからです。そいつは口が悪くて、無表情で、キレると竹刀振り回す凶暴な奴なんですけど――すげー、優しいんですよ」

 幼稚園の頃、ガキ大将からいじめられていたオレを助けてくれたのも、小学生の頃ペットの犬のシシタローが亡くなってショックで号泣したオレと一緒に泣いてくれたのも、千寿だった。

 悩みを気軽に相談できた。

 オレの一番のコンプレックス――下――を笑わないで励ましてくれたのも、千寿だ。

 見知らぬ人に傘を貸したり、自転車に乗せたりしたのは、全てオレが千寿のようになりたかったからだった。

 強くて優しい。オレにとって千寿は最高の女の子だった。

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