校庭にゴキブリが出たので魔法少女になって退治します
どうしよう。校庭にゴキブリが出た。
放課後になった途端、のそのそと現れて……クラスの皆は今も大騒ぎ。
校庭から一匹の虫が何で見えたかと言うと、あのゴキブリの背中、大型トラックが余裕で乗せられるくらい大きい。
「俺がこの虫よけスプレーで退治してやるぜ!」
そう意気込んで教室を出たクラスの男子は今、ゴキブリの口の中でバリバリという音と共に食べられてる……あぁ、命が砕ける音。
「ゴキブリが一匹出たら三十匹はいるっていうよね……まさか」
そんなクラスの女子の発言を、いやいやいやと頭の中でわたしは否定する。
あんなでっかいゴキブリがわんさかいるのは嫌過ぎる。
あれこれ言うクラスの皆の喧騒から逃れるかのように、わたしは校舎の屋上を目指す事にした。
見れば見るほどゴキブリだなぁ……。
そう頭の中に浮かべ、見なかった事にして帰るか考え始めたけど……この状況がどうにかなって欲しいって気持ちの方が大きかった。
「誰か退治してくれないかなぁ」
「キミがなればいいよ。あの大きな虫を倒す存在に!」
子供っぽい声が聞こえて来たので辺りを見渡す……そして発見。
バスケットボールくらいのサイズの紫色の毛玉の両端に垂れ耳が生えてて、そのボディの大部分を占める縦長瞳孔の大きな赤銅色の目玉。
垂れ耳がなかなか大きくて翼も兼ねてるのか宙に浮かんでる……意外にも叫び声を上げずにちゃんと返事出来た。
「化物がもう一匹増えたような気もするけど……話だけなら」
「さぁ、この魔法陣を踏んで。そうすればキミは魔法少女の力を得る」
唐突にわたしのすぐ近くの足元で如何にも魔法陣って感じの金色の模様が広がる……何だろう、この急展開……でも好奇心には逆らえない。
わたしが魔法陣の中に入って中央まで立つと、魔法陣から虹色の光が湧き出て上方向に
謎の垂れ耳目玉さんが何処からか大きな鏡を出してたから、わたしの身に何が起きたかが説明出来る。
具体的には、わたしの全身が虹色の光で包まれ、それが終わる頃には着てた服も髪と目の色も様変わりして、普段は地味な外見の女子だった、わたしも結構華やかな事に。
クラスの中では背はともかく胸は結構あった方だったけど、その辺の体型が強調される服装じゃ無くて可愛さ重視のデザイン……スカートの方は動きやすい長さで上下共に同じようなデザイン。
おへそは出てるけどこれくらいなら子供向け番組でも大丈夫な格好。
個人的に不満があるとするなら、全体的に銀色のメタリックカラーで所々に水色と青緑が施されてるから……戦隊もので言えば何色になるのか判らない点。
適当に伸ばしてた後ろだけじゃ無く前も長かった髪はオレンジのポニーテールに瞳はストロベリーな雰囲気がしなくもないピンク色。
「その魔法のステッキを振れば斬撃が飛ばせるよ! 早速やってごらん!」
耳目玉さんの声は何とか聞き取れた。
変身してからは辺りがうるさくて……校庭のゴキブリが光に釣られたのか近くまで来てる。そういえばゴキブリって空を飛べるんだった。
でも位置関係だけ考えれば都合がいいのかな? ほどよい距離を空けた目の前まで来てるから……それにしても羽音が酷い。
さっき出現したから、わたしは白いプラスチックのような質感の持ち手部分の先にある宝石部分にピンクゴールドの装飾が纏わり付いたステッキを手にしてるけど……宝石部分は無職透明でダイヤモンドと言えば話が早い。
「じゃあ、物は試しに……」
そう呟いてステッキを掲げれば何だか凄い力が宝石に流れ込んでる気がして……実際何か銀色の光がどんどん集まってる。
「必殺技が撃てそうだね! マジカルスラッシュなんてどうかな?」
耳目玉さんの言う通り、咄嗟に案が出て来ないから、そうするかな。
「まじかるすらーっしゅ!」
掲げたステッキを真っ直ぐ振り下ろす……描いた軌道がそのまま銀色の斬撃になってゴキブリ目掛けて飛んで行く。
それにしても大きな斬撃……そう思ってる間に真正面にいたゴキブリがそれこそ垂直に両断された。
大型トラックよりも大きなゴキブリが真っ二つに開いて、中身を直視しないように目を逸らそうとしてる間に落下……下にいた皆の悲鳴は聞こえたけど、死者が出た気配は無いし実際に覗いてみても大丈夫みたいだった。
「再生能力も無ければバリアを張るわけでも無い……とんだ下っ端だったね」
耳目玉さんの言いようだと、こんなのがまだまだいるって事だね……これに触れとこうかな。
「あ、やっぱりこれで終わりじゃないんだ」
「何を隠そう、少し離れた所に今のとは違う十本足のゴキブリみたいなのが出現してるよ……そっちも倒してくれると有難いけど」
それはもうゴキブリかどうか怪しいような。
「せっかくだし、行ってみる」
「助かるよ。魔法少女には名前を与える事になってるけど、どんなのがいい?」
そう言われると迷うなー。斬撃を放つ銀色の服を着た少女……んー。
メタリックシルバー。
もう少しどうにかしたいので、わたしはこう返す。
「……次のゴキブリを倒してからもう一度考えてみる」
「そうだね。場所はここから少し先にある交差点……今のキミなら空だって飛べるから、直行しよう」
そう言われたのでじゃあ飛んでみようと思った瞬間、背中から何か生えた。
耳毛玉さんにあの大鏡を出してもらって確認したら、ロボットアニメやパワードスーツとかでありそうな感じのメカ要素のある光るウィングで……青緑と水色の間を行き来するように変化してた。
まぁ、しばらくは退屈しなそうだし……これはこれで。
もう少し考える事がありそうな気もするけど、光る翼を展開した、わたしは屋上から飛び立った。
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