女神と少年の出会い

時は過ぎて私の生きていたころとは景色が変わってしまった。鉄筋コンクリート造りばかりの灰色の街並みとなってしまった。それでも私は人間のことが愛おしいとさえ思えてくる。そんな時だった。障壁に何かが当たったのは。人間や動物、車なんかはするりと障壁を抜けていくのだ。でも、異物である魔獣は当たったという感触がしたのだ。最初のうちは耐えていたけれど、四方八方から来るのだから修復が追い付くわけがなかった。しまった。そう思った時には、既に時すでに遅し。この町に甚大な被害をもたらしてしまった。悔しくて涙が出た。人々が残虐に殺されるのを見ていることしか私にはできなかった。一人や二人なら助けられたのに。最初こそ人間を恨み、憎んでいたけれど今となっては愛すべき存在である我が子のような存在の人間がこのように殺されていくのをもう見ていられない。

「やめて!私の人間に触らないで!」そう叫んだ。神である私の言葉なんて聞こえてるわけないのに、魔獣たちは私の方を見た。すぐ明らかにここにいてはいけない存在だと分かった。吐き気がした。私は家の中で泣くことしかできなかった。

しかし、いつまでもメソメソなんてできない。そう思って私は町をフラフラ歩いた。大きな病院に入った。そこのは魔獣の襲撃で怪我をしたたくさんの人がベッドに横たわっていた。そんな中私は一つの病室が目に留まった。何故かは分からないけれど、入らなければならないと思った。そこにはかつて私が愛した惣兵衛さんにそっくりな少年がいた。見た目だけでなく魂までそっくりだった。私は彼のベッドに軽く腰かけた。見えてないはずなのに少年はニコッと笑いかけた。ここで私は気づいた。そっくりなんかじゃない。生まれ変わり、つまり魂は同じものだ。私の頭の中にあったのは、

(連れ去りたい。また家族になりたい。私の叶えられなかった願いを叶えたい。)でも、神様が人間を連れ去るなんてあってはならない。でも、契約ならきっと大丈夫。でも、彼と契約して彼の魂を汚すことなんてできない。そこへガラッと病室の扉を開けて入ってきたのは幼い少女だった。彼のことをお兄ちゃんと慕っているようだった。彼女の兄のことが大好きという気持ちを利用しよう。そう思った。そこで彼女についていくことにした。彼女が帰るのは誰もいない真っ暗なボロアパートの一室だった。冷凍庫から冷凍食品を取り出してレンジに入れてそれを皿に盛りつけて一人で食べていた。寂しい。私はそう思った。生け贄として海に落とされた私のように寂しい。これならいける、確信した。あとは彼女に契約を持ち掛けるだけだ。

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魔法少女のとなりには 【本編完結】 桜森 ナナ @nana_00

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